A 回答 (2件)
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No.2
- 回答日時:
こんにちは。
恐らく、現在出版されている全ての心理学の教科書には、「驚き」というのは「感情」の一種として分類されるものである書かれているはずです。ですが、この「驚きという身体反応」は、他の「情動反応」即ち一般に「感情」呼ばれるているものとはその発生のメカニズムが全く違います。といいますよりは、類似する点が何一つありません。従いまして、これまで長きに渡り「驚き」というものを単に「感情」の一種として扱ってきた従来の心理学では、そのメカニズムに関しては一切検討されていなかったいうことになると思います。
「感情」というのは大脳辺縁系に発生する「情動」が身体に表出された結果、認知・分類の可能な状態になったものをいいます。
「大脳辺縁系」には我々の感覚器官が獲得し得るあらゆる知覚情報が入力されており、身体内外の様々な環境の変化に対して価値判断を下し、「情動」を発生させています。
「価値判断」といいますのは、その知覚情報が自分にとって「有益か有害か」ということです。従いまして、ここに発生する情動は「快情動」か「不快情動」の二種類しかありません。ではこのようなものが、いったいどのようにして我々の持つ複雑にして多彩な感情に分岐・成長してゆくのかということに就きましては、現在の脳医学・神経生理学でも詳しいことはまだほとんど分かってはいませんが、これが何らかの処理経路を伝わることにより、様々な反応や行動として我々の身体に表出されるのであろうことに疑いの余地はありません。
大脳辺縁系に発生した情動が自律神経や運動神経などを介して出力されることによって我々の身体にもたらされる様々な生命活動の変化を「情動性身体反応」といいます。例えば、それが自律神経系であるならば「心拍・呼吸数の増加」「血管の拡大」「発汗」「内分泌ホルモン」などの生理的変化、運動神経系であるならば「咄嗟の竦み」や「回避行動」「顔の表情」などといったものとなって表れます。そして、我々哺乳類や鳥類など、情動機能というものを有する高等動物の場合、それが状況に対応した「特定の発生パターン」を形成します。このため、それを喜怒哀楽などといった様々な感情のタイプとして分類することができるわけです。従いまして、脳内に発生し、信号として流れているのは「情動」であり、それによって身体に表出された反応のパターンが認知・分類の可能になった状態を「感情」といいます。つまり、実際の身体反応を生み出しているのが「情動」であるのに対し、「感情」というのはその結果分類であるというとですね。
入力された知覚情報の価値判断に用いられているのは、大脳辺縁系に属する「扁桃体」という神経核に保持されている「情動記憶」というものです。
本来、記憶というのは大脳皮質にあるものですが、この情動記憶といいますのはそのように詳細で複雑なものではありません。ですが、大脳辺縁系は扁桃体に保持されたこの情動記憶によって「好き、嫌い」「YES/NO」といった判断を下しているのですから、情動というのは過去の体験に基づいて「再現」されるものであるということです。従いまして、情動が過去の体験に基づいて発生するものであるならば、それによって選択される「情動行動」は、全てが生後の体験によって獲得された「学習行動」であるということになります。
このように、情動といいますのは生後学習に基づく反応であり、そのほとんどは「何らかの記憶の再現」です。ですから、過去に同様の落胆体験をしたならばそれは「悲しみ」に、過去に憤りを学習しているならばそれは「怒り」という感情として分岐してゆくはずですし、先に触れました通り、そのような処理経路に就きましては未だ全く解明されてはいないのですが、情動というものが学習によって再現されるものであることは疑う必要のない事実だと思います。
では、幾ら過去に「驚き」を体験したからといって、ひとたび学習されたものにもう一度驚くひとはいるでしょうか。つまり、「驚き」という体験は二度と再現することはできません。これがどういうことかと言いますれば、他の全ての情動反応には生後学習に基づく記憶の再現が可能であるにも拘わらず、「驚きという学習行動」というものだけはこの世に存在しないということです。これひとつとってみましても、「驚き」という反応は他の情動反応とは全く異なる特有の性質を持っていることになります。
次ぎに、我々は大きな音や眩しい光などに対して驚きます。このような強い感覚刺激というのはあらゆる動物にとって「嫌悪刺激」であるのと同時に、それは「無条件刺激」に分類されます。そして、この無条件刺激に対して発生するものを「無条件反射」といい、これによって構成される行動を「本能行動」といいます。つまり、我々がそれに驚くというのは無条件反射であり、本能行動ということになります。そして、このような反応に情動は発生しません。仮に発生したとしましても、それは驚いたあとの話です。
多くのひとが経験をする「驚き」の身体反応には、心臓が飛び上がるとか、咄嗟に身を竦めるといったものがありますよね。先に申し上げました通り、感情というのは身体反応のパターン分類です。ですから、前述のような身体反応のパターンを「驚きの感情」として分類することは幾らでもきると思います。ですが、どうしてこのような本能行動の結果をわざわざ感情として分類しなければならないのでしょうか。私は、何故これまで心理学の分野ではこのような矛盾がほったらかしにされてきたのかが不思議でなりません。
「驚き」という反応のもうひとつのたいへん奇妙な特徴は、それは、他の情動反応と同様に与えられた知覚情報に対して発生するものであるにも拘わらず、その情報の「意味」というものは一切関係がないということです。
情動は、知覚情報の入力に対して大脳辺縁系の価値判断が下されることによって、「怒り」「悲しみ」「喜び」といった様々な感情に分岐してゆきます。つまり、情動というのは与えられた情報によって発生する反応が違うということですね。ですが、驚きというのは、それが怒るべき内容であれ喜ぶべき内容であれ、発生する反応は全て同じです。これがどういうことかと言いますならば、取りも直さず、入力された情報の「内容」に関しては何の判断も下されていないということです。
判断が下されないということは、それが予測不能の突然の事態であるためにその猶予が与えられないか、全く未知の体験であるために判断を下すことができないかのどちらかです。獲得した情報が不足しているというケースもありますが、通常、このようか場合は「驚き」ではなく、「不安状態」になります。
このように、「驚き」という反応に至る条件というのは、与えられた「情報の意味」ではなく、「予測不能の突然」や「未体験」とった「情報のタイプ」です。
先に述べましたが、既に学習された事柄に「驚き」の反応を示すひとはいません。我々は、誰かから意外な事実を聞かされたときにも驚きを抱きます。もし、その情報が意外な内容であるために「驚き」という反応が発生するのであれば、同じ内容の情報に対しては常に驚かなければならないということになります。ですが、全く同じ情報であったとしましても、さすがに二度目、三度目ともなれば驚くことはありません。ということは、我々は情報の内容に驚いたのではなく、予測不能の事態や未知の情報であることそのものに驚いたということになります。
「驚き」というのはたいへん強い反応です。ですが、このように考えますと、それは必ずしも情報に対して判断を下す余裕がなく、それがある一定の閾値を越えてしまうために判断という手続を飛び越えてしまったということではなく、「驚き」という反応には元より判断というものが必要ないという解釈が成り立つのではないかと思います。
何の判断も成されず、反応の結果が予め決まっているのですから、それは「条件反射」ではなく、本能行動を実現する「無条件反射」と全く同じ性質です。ですが、ひとたび情報に対して判断が下されるのであれば、それは驚き以外の情動反応にも発展してゆくわけですから、それが驚きかそうでないかを決定しているということにもならないわけです。ということは、この悩ましい疑問を解決するためには、「驚きの反応」と「情動反応」とは、全く別々な神経回路によって発生するものだ考えるのが最も合理的です。これならば、仮にそれが並列に処理されても何の不思議もありません。
現時点では、「驚き」の全てが無条件反射であり、それが情動反応とは別物であるという証拠を提示することは私にはできません。ですが、ひとつだけはっきりしているのは、それが情動の発生というものを司る大脳辺縁系を中継中枢に介する反応である必要は全くないということです。
このようなことから、「驚き」という反応はたいへん特異な性質を有する上にそのメカニズムが大幅に異なるために、私は、それは情動反応ではないとう考えを提案します。「驚き」というのは、感情として分類されるものではありません。
No.1
- 回答日時:
されているか/いないか、でいえば、されていないと思います。
心理学者の数だけ脳モデルが存在するような現在の現状では、精神的な活動を統計だてて理論を構築するのは無理でしょう。
まぁ、「強い脳内信号による現象」であることは確かなのでしょうけど。
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