No.3ベストアンサー
- 回答日時:
phy0 さんのご質問は2つあって
(1) 酸素濃度分布の測定法にはどのようなものがあるか
(2) 酸素濃度分布の理論式はあるのか
ということだと思います。(1) については、sanori さんのRBSやSIMS(2次イオン質量分析)など、かなり高額な設備を必要とする方法の他に、膜厚が厚ければ、一般的な薄膜の膜厚測定法(エリプソメトリなどの光学的方法)が使われます。
このSiO2の厚さは、加熱温度や時間に依存しますが、SiCを熱酸化させたときのSiO2の厚さの加熱時間依存と温度依存の実験結果が資料 [1] にあります。この依存性は拡散方程式 [4] に従い、この測定結果から、SiC中への酸素の拡散係数と活性化エネルギーを求めることができます。
この種の研究はSiで盛んに行われいているので(熱酸化はすでに過去の技術ですが)、Siの実験や理論を参考にされると良いと思います。例えば、Siの熱酸化では、資料 [2] に書かれているように、酸化反応は酸化時間に対して、初期成長領域と界面反応律速領域、拡散律速領域の3つの反応領域に分類されます。上の拡散方程式が成り立つのは3番目の領域で、酸化膜が比較的厚い場合です。資料 [2] がらの引用になりますが、時間 t に対する酸化膜厚 x の関係は
初期成長領域 x ≒ C0×κ/C1( t + τ )
拡散律速領域 x ≒ √[ 2×C0×D/C1(t + τ ) ]
C :酸化膜中の単位体積あたりの酸化物質の分子数
D :酸化物質の拡散係数
κ :表面反応速度係数
τ :初期状態を説明するための時間軸のずれ
で表わされます。Siのこのような熱酸化については、資料 [3] も参考になるかと思います。
ちなみに、論文で「1000℃でSiCに固溶する酸素はxxx である」というのは、固溶度( Solid Solubility atom/cm^3 )ことだと思います。これは固体中に入り込むことのできる不純物の最大濃度で、上で計算される濃度はこれを超えられません。
[1] 図3:酸化時間と膜厚 http://venturewatch.jp/nedo/20070214.html
[2] 熱酸化プロセス http://blog.goo.ne.jp/takekih/e/6609da95a6ce1287 …
[3] 新しい物理モデルに基づいたシリコン熱酸化のシミュレーション http://www-surface.phys.s.u-tokyo.ac.jp/sssj/Vol …
[4] ( 固体中への不純物の拡散 )
固体中の不純物原子の濃度分布を、表面からの深さ x と時間 t の関数として、C( x, t ) で表わされるとすれば、C( x, t ) は次の微分方程式を満たします。
∂C/∂t = D*∂^2C/∂x^2、 D は拡散係数
表面の不純物原子濃度が一定(濃度 C0 ) なら、この解は
C( x, t ) = C0*erfc [ x/{ 2*√( D*t ) } ]
erfc(x) = 1 - erf(x)
= 1 - 2/√( π ) *∫[ t = 0 → x ] exp( -t^2 )、erf( 0 ) = 0、erf( ∞ ) = 1
erf は Excel のエンジニアリング関数にある ERF という関数で ERF( 0,x) とすることで計算できます。
となります。拡散係数 D [m^2/s] には温度依存があり
D = D0*exp{ -Ea/( k*T ) }
D0 は定数、Ea は活性化エネルギー [eV]、k はボルツマン定数 = 1.38066×10^(-23) [J/K]、T は絶対温度 [K]
で表わされます。したがって、固体中の不純物原子の濃度分布は、表面からの深さ x と時間 t の他に、温度も加えて、C( T, x, t ) とすれば
C( T, x, t ) = C0*erfc【 x/[ 2*√[ D0*exp{ -Ea/( k*T ) } *t ] 】
となります。固体中での濃度が表面濃度の例えば 1/e となる距離 x0 を酸化膜厚と定義すれば
x0 = a*√( D*t ) (a = 0.1839397206 )
= a*√[ D0*exp{ -Ea/( k*T ) } *t ]
= a*√( D0*t )*exp{ -Ea/( 2*k*T ) }
で表わされるので、酸化膜厚 x0 の加熱時間依存と温度依存から、D0 と Ea を求めることができます。
この回答への補足
ありがとうございます。私の質問の仕方が悪かったようです。
>ちなみに、論文で「1000℃でSiCに固溶する酸素はxxx である」というの>は、固溶度( Solid Solubility atom/cm^3 )ことだと思います。これは>固体中に入り込むことのできる不純物の最大濃度で、上で計算される濃度>はこれを超えられません。
まさしくこの固溶度の温度依存性に関する式みたいなのがあるのか知りたかったのですが、あるのでしょうか。
拡散が進むとやがて濃度差がなくなり、固体表面と固体内部の濃度が同じになると思いますが、このときの固体中のガス量を固溶度といってよいのでしょうか。
No.6
- 回答日時:
ANo.1で、活性化エネルギーを eV 単位で、ボルツマン定数を J/K 単位で定義したことに気づいたので、ANo.2では Ea に q をかけました。
1 eV = 1.60218×10^(-19) J [1] なので、ANo.1のように q がないときは、ボルツマン定数 k の単位を eV/K にすべき [2] でしたが、k の単位は J/K が一般的なので、ANo.2では、 k の単位をそのままにして、Ea に q をかけて表記することにしました。[1] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%AD%90% …
[2] PDFファイル9ページ http://www.ncsd.necel.com/reliability/pdf/PQ1047 …
この回答への補足
皆様ご回答ありがとうございます。
ANo.3の補足に書きましたが、目立たないかもしれないのでもう一度記入いたします。
固溶度の温度依存性に関する式みたいなのがあるのか知りたかったのですが、あるのでしょうか。
拡散が進むとやがて濃度差がなくなり、固体表面と固体内部の濃度が同じになると思いますが、このときの固体中のガス量を固溶度といってよいのでしょうか。
No.5
- 回答日時:
inara様
訂正された式、次元があってないのでは?
D=DoExp(-qEa/kT)
kTはエネルギーの次元です。Eaはエネルギーの次元です。
qEaは不明。 次元があっていない。
すみません。内容をよくフォローしないでのコメントでした。
No.4
- 回答日時:
ANo.3 です。
[4] ( 固体中への不純物の拡散 ) に誤りがありましたので訂正します。
D = D0*exp{ -q*Ea/( k*T ) }
D0 は定数、q は電子の電荷 = 1.60218×10^(-19) [C]、Ea は活性化エネルギー [eV]、k はボルツマン定数 = 1.38066×10^(-23) [J/K]、T は絶対温度 [K]
で表わされます。したがって、固体中の不純物原子の濃度分布は、表面からの深さ x と時間 t の他に、温度も加えて、C( T, x, t ) とすれば
C( T, x, t ) = C0*erfc【 x/[ 2*√[ D0*exp{ -q*Ea/( k*T ) } *t ] 】
となります。固体中での濃度が表面濃度の例えば 1/e となる距離 x0 を酸化膜厚と定義すれば
x0 = a*√( D*t ) (a = 0.1839397206 )
= a*√[ D0*exp{ -q*Ea/( k*T ) } *t ]
= a*√( D0*t )*exp{ -q*Ea/( 2*k*T ) }
で表わされるので、酸化膜厚 x0 の加熱時間依存と温度依存から、D0 と Ea を求めることができます。
No.2
- 回答日時:
実験的に測定するとなると、
(もっと良いやり方があるような気はしますが)
私が思いつくアイディアとしては、RBS(Rutherford Backscattering Spectrometry)があります。
たとえば、Heイオンを材料に照射し、跳ね返ってくるHeイオンの運動エネルギーを測定します。
これにより、材料の組成が分かります。
http://www.mst.or.jp/010106.html
跳ね返ってくるHeイオンの速さは、衝突相手の原子核が重いほど速くなります。
つまり、Oが固溶したSiCの例ですと、
Si > O > C
の順番に速いです。
よって、スペクトルの形状は
──┐C
│
・・・・└──┐O
・・・・・・・・・・└───┐Si
│
│
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おおまかに言えば、段差の高さが組成比に相当します。
Siのスペクトルの上にOのスペクトルが乗っかっている格好なので、
精度良くOの組成比を求めるのは、やや難しいかもしれませんが・・・
話は変わって、下記はご参考。
水素の固溶限について、式が書いてあります。
(pdfファイルです)
http://www4.jnes.go.jp/katsudou/seika/2003/04_ki …
元のページ
http://www4.jnes.go.jp/katsudou/seika/2003/04_ki …
No.1
- 回答日時:
式などのようなもので説明できるような現象ではないと思います。
金属中のガス固溶は金属の状態,不純物,温度などの影響を受けますから理論的に定量化まではできていないと思います。
金属を分析することで,固溶しているガスの種類と量は求めることができます。
金属中のガスの固溶は金属の腐食,疲労,などに影響を与えますので,かなり研究が進んでいると思いますので,たいがいの金属とガスについてデータがあると思います。
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