甲が願書に最初に添付した明細書に独自にした発明イ、ロを記載した特許出願Aをしました。
その後、乙も独自にしたイと同一の発明のみについて特許出願Bをしました。
さらにその後、甲が、出願Aを基礎とする有効な優先権主張出願Cをし、やがてそのCが出願公開されました。
この出願Cの願書に添付した明細書には発明イ、ロ、ハが、クレームにはロ、ハのみが記載され、イがクレームアップされることは無いものとします。
さてこの場合、出願Bは出願Cをいわゆる拡大された先願として拒絶されるのでしょうか?
29条の2の趣旨を準公知ととらえるならば、41条3項の規定の適用をもって拒絶されると思うのですが、拡大先願を趣旨ととらえれば、41条2項により拒絶されない気もします。どうも考え方が整理できず、悩んでいます。どうか、どなたかご教授ください!
A 回答 (4件)
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No.4
- 回答日時:
質問文とANo.2の回答・お礼のやり取りだけでは閲覧してる人の中には理解できない人も少なくないでしょうから、簡単に解説しておきましょう。
質問は、「BはCのせいで拒絶されるのか?」ということなので、質問文中の
>拡大先願を趣旨ととらえれば、41条2項により拒絶されない気もします。
という部分は、「41条2項により(BはCのせいで)拒絶されない」と言ってることになりますけど、41条2項は、このケースに当て嵌めて言うと、「CがBのせいで拒絶されることはない」という話です。完全に主客転倒してますね。
なお、「クレーム」は「特許請求の範囲」、「クレームアップ」は「特許請求する(特許請求の範囲に記載する)」という意味であることはこの業界では常識なので、こんな部分を補足しなければならないのはお気の毒に思います。
さて、本題ですが、
>29条の2と41条2項、3項の趣旨の違いについて、どうやら混同していたようです。
それ以前に、質問文中の
>クレームにはロ、ハのみが記載され、イがクレームアップされることは無いものとします。
という部分は、29条の2を理解していれば全く無用の条件です。『国内優先権云々以前に、根本的に29条の2を理解していないのではないのか?』、『もしかするとs_kazさんは“クレームに記載されていない発明には29条の2の後願排除効がない”とでも勘違いされているんじゃないのか?』という気がしてきてしまいます。
しかも、出願Cについてはそんな無用の条件が書かれている、出願Aについては発明イがクレームに記載されていたことが条件とされていないのは、一体何故なんでしょうか? どうも設問の意図がよくわかりません。
仮に、
「出願Aについては発明イがクレームに記載されていて、出願Cで敢えてクレームから外された場合に、出願Bは拒絶されるのか?」
という質問だとしたら、設問の意図が明確であり、そして解答は、「発明イが出願Cのクレームに記載されているか否かは関係なく、出願Bは拒絶されます」ということになります。
でも、
「元々出願Aの明細書のみに記載されているだけの発明イが優先権主張出願Cの明細書のみに記載されている場合に出願Bが拒絶されるのか?」
という内容を含む設問だとしたら、これは一体何の理解を問うているのだろうか?と、何とも不自然な感が否めません。わざとややこしい条件を付けているだけで、問題文としての完成度は低いですね。
まあ、いずれにしても、「出願Aの当初クレームおよび/または明細書に記載されていた発明イが出願Cの当初クレームおよび/または明細書に記載されていてこの出願Cが公開されれば、出願Bは拒絶される」と理解しておけばいいでしょう。その部分さえしっかり押さえておけば、このケースは容易に正解を導き出せたはずです。
ついでに、41条2項、3項を大雑把に整理しておくと、
41条2項は、CがBのせいで拒絶されることはないという話、
41条3項は、CがBを拒絶する根拠となる(BがCのせいで拒絶される)という話 です。
ご指摘の通り、問題の完成度が低く混乱を招いてしまったようです。
にもかかわらず、いろいろと整理していただいてありがとうございました。他の皆様にも御礼申し上げます。
さて、この問題は、ご存知の方も多いと思いますが、弁理士試験の過去問(H5-20)です。(ただし、「イがクレームアップされることは無いものとします。」というのは、某予備校が後から付け加えた、”条件”です。)
この条件をつけた理由は、オリジナルの過去問に対する特許庁の回答が、「B(イ/イ)はC(ロハ/イロハ)により拒絶される場合はない。」というものだったので、この回答の妥当性を確保するために、この机上の空論的な条件を加えたのでしょう。
そこでわたしは、「どちらにしろ、おかしな問題だな・・・」と思い、自分の疑問を解消すべく、ここに質問をアップしたというわけでした。
皆様、いろいろと、ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
ANo.1の続きです。
ロハ/イロハは、"ロハ"が特許請求の範囲、"イロハ"が明細書又は図面の記載と言うことですね。
29条の2は、特許請求の範囲+明細書+図面に記載された発明が比較対象ですから、基礎出願の明細書に”イロ”が記載されているので、C出願(優先権主張)が公開された時点で先願の地位を得て、乙のB出願は拒絶される事になります。
蛇足ですが、29条の2は『・・当該特許出願の日前の・・』なので、同日であれば39条の適用になります。
でも、39条は特許請求の範囲が比較対象なので、"イ"のB出願は拒絶されません。
No.2
- 回答日時:
あまり難しく考えずに、なぜ29条の2があるのかを考えれば良いと思います。
29条の2の趣旨は、「後願が新しい技術を公開するものではなく、先願の請求範囲が確定しなくとも後願の処理ができるようになり(特39条と特29条の2のどちらを用いるかは審査官の裁量)、明細書記載事項で且つ個別権利化の必要がないものでも後願を拒絶できるので防衛出願が減るから」ですが、
実際は、「先願の請求範囲が確定しなくとも後願の処理ができるようになる」から、と理解するのが簡単です。つまり、補正によって先願のクレーム(特許請求の範囲)に記載された場合、後願が39条により拒絶されますが、先願の査定確定まで後願の審査を待つわけにはいかないので、査定確定前でも拒絶できるようにしようということです。
このような観点でご質問の内容をみると、設問上は「クレームアップしない」とありますが、拡大先願の制度上は、出願人のこのような意図は特許庁に対して明らかにならないのですから、審査官は全く無視することになります。
となると、将来的にクレームアップされる可能性のある発明イについては、特許出願Aの出願時点を基準に審査されるべきであり、後願は29条の2によって拒絶されます。
なお、仮に「クレームアップされることは無い」の意味が「明細書、図面、特許請求の範囲に記載されていない」との意味であれば、そもそも公開擬制されませんので、29条の2の適用はありません。
ちなみに、条文を読めば分かりますが、29条の2は、拡大先願といっても、先願の明細書などを含めた全てと、後願の特許請求の範囲とを比較するものです。つまり、先願のクレームに記載されているか否かは問題となりません。
また、41条2項は、後の出願について基礎出願時にしたものとみなされるものを列挙しています。つまり、質問の特許出願Cの中で特許出願Aの出願時に出願したとみなして扱われるものを列挙しているだけです。
毎度、的確なご回答ありがとうございます。
29条の2と41条2項、3項の趣旨の違いについて、どうやら混同していたようです。
すっきりしました。
ありがとうございました。
No.1
- 回答日時:
>41条3項の規定の適用をもって拒絶される・・
とありますが、同項をもっても拒絶されないと思います。
したがって、乙の発明イの特許出願Bは拒絶されません。
41条3項の「・・・当該特許出願について特許掲載公報の発行又は出願公開がされた時に当該先の出願について出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされたものとみなして、第二十九条の二本文又は・・・」は、この場合、優先権主張出願Cが公開された時点で、基礎出願Aが公開されたとみなして・・・なので、発明イ・ロうち優先権主張出願Cに記載された発明ロのみ、基礎出願Aの出願日で、29条の2の”他の出願”に該当させるという意味です。
基礎出願Aは42条の規定で取下げ擬制されて公開されませんから、発明イは公開もされず、29の2の他の出願には該当しないし、29条や39条にも該当しないのです。
P.S.
質問の「クレームには」と言う表現を、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)」と解釈して話を進めました。
この回答への補足
回答ありがとうございました。
「クレーム」という単語は、「特許請求の範囲」の意で用いました。
従って、質問を図解すると、
甲 A出願 乙 B出願 甲 C出願(優先権主張)
?/イロ イ/イ ロハ/イロハ
(イロハ/イロハなる補正は無い)
また、日本語による通常の出願であるとします。
このような場合でも、ご説明頂いた回答が有効でしょうか?
ご教授の程、よろしくお願いします。
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