No.7ベストアンサー
- 回答日時:
過去において、宇宙船の外板強度が、船内1気圧に耐えられるようにすると、外板の厚さが増し、必然的に総重量も増すので、船内圧力を下げることで、発射宇宙船の総重量を減らして、軌道打ち上げの実現にこぎ着けていたのだとされます。
そのとき、宇宙船内部の気圧は1/3気圧ほどで、酸素不足に陥らないため、純粋酸素で船内空気を調整していたのです。しかし、静電気の蓄積によるスパークや、摩擦や接触による火花の発生などで、一旦、可燃物に点火が起こると、爆発的燃焼になるため、1気圧の船内気圧でも、軌道打ち上げが可能となった後では、船内気圧を1気圧にし、酸素分圧を地上と同程度にし、残りを窒素で補って、地上と同じ空気組成にしたということです。
宇宙服の内部気圧が1/3気圧なのは、現在の宇宙服がソフトタイプで、1気圧にすると、風船のように膨らみ、自由な活動ができなくなるためです。しかし、ハードシェル・タイプの宇宙服が実用になれば、宇宙服内部も1気圧にすれば、船内と船外のあいだでの移動のための現在の手間は省けるということになります。
しかし、目下、そのような宇宙服は実用になっていないのです。
また、純粋酸素で、1/3気圧というのは、過剰酸素摂取の危険性があります。短時間の船外活動でなら、純粋酸素呼吸も障害を誘発しないのかも知れませんが、長期の宇宙船内生活を考えると、船内を、1/3気圧にして、純粋酸素とし、窒素を含まないようにするのは、果たして健康上問題がないのかという疑問もあります。
また、気圧を下げると、水の沸点は下がり、その他の物質についても、化学的・物理的性質に変化が出てきます。1/3気圧だと、皮膚からの水分の蒸発は加速されるでしょうし、船内空気における水蒸気分圧が飽和すれば、皮膚からの蒸発はなくなるとはいえ、こんな状態では、船内は、結露で満たされ、電子部品が短絡するリスクがあり、また、飛行士の不快感も大きいでしょう。
水蒸気は、空気を取り込んで、水蒸気だけ凝固させ除去するなどで、減らせても、身体からの水蒸気の蒸発は、気圧が低い限り、進行するということになります。
人間は肺呼吸で、二酸化炭素を排出しますが、食物を摂取し、消化する過程で、メタンガスや水素ガスも発生させます。また、もっと複雑な成分の有機ガスも発生させます。窒素分圧が70%以上ある場合、これらのガスは可燃性であっても、爆発的に燃焼とはいかなくとも、窒素がなく、酸素100%となると、これらのガス濃度の上昇は、爆発火災の原因になります。
これらのフィルタリングには、かなり手間がかかるはずです。船内体積は、現在はかなりな大きさになったとはいえ、それでも密閉状態で、複数の人が三ヶ月、半年と生活すると、有機ガスや水素ガスの蓄積は大きなものになるでしょう。また、酸素100%だと、腐食酸化が加速される可能性があります。
宇宙服内部は、純酸素で、1/3気圧とし、しかし、宇宙船内部は、構造的に強度が得られると、1気圧で、窒素と酸素を地上と同じように混合した成分としたことは、上に上げた健康や、水蒸気蒸発や、有機ガスの発生と純酸素との混合による爆発の危険性、酸化の加速や、物性の変化などによる何かのリスクがあるからだと考えられます。
宇宙船内部は、自由落下状態という条件も、これらに影響するのだと思えます。比重の違いによる気体の拡散のパターンが違ってきます。また風を起こそうとすると、変な具合になるでしょう。(つまり宇宙船内の空気を、フィルタリングする過程が、難しくなるということです)。
>それともあまり長時間低気圧(あるいは高酸素)にいると何か問題でもあるんでしょうか?
ティベット高原は、2/3気圧で、低濃度酸素のため、高山病が起こりますが、そこに人が日常的に生活していますし、順応すれば、高山病も多くの人は克服できるようですから、2/3気圧なら、生存には差し支えないのでしょうが、1/3気圧というのは、地上では例がないはずです。
何か起こると(例えば、過剰水分蒸発、純粋酸素呼吸による肺機能の異常、肺炎、生体ホメオスタシスの攪乱、部品の酸素腐食、結露による回路短絡、可燃性爆発性ガスの生成など)、宇宙船内だと取り返しの付かない大事故になる危険性があるので、予見不能な事故を回避するため、条件の分かっている地上と同じようにコンディショニングするのが安全だという発想かも知れません。
(宇宙船の内部パーツにとっても、また何よりも人間にとっても、1気圧で、酸素と窒素の混じった地上の空気を呼吸していれば、少なくとも、自由落下の問題はあっても、普通の生活が営めるし、予見不能な問題は少ないだろうということです)。
非常に丁寧かつ解りやすい説明ありがとうございました。
火災の問題をはじめ、人の心身に及ぼす影響が実に様々あるものですね。大変勉強になりました。
やはり出来得る限り地球に近い環境を宇宙に持ち込む方が安全かつ健全なのでしょう。いずれISSに遠心ブロック(大した重力は得られないでしょうが)を設ける計画なども出るかもしれませんね。
No.6
- 回答日時:
補足に対する回答ですが、今後、有効な回答の下敷きになることを期待して、まったく推論の域を出ないものとの断り付きで回答します。
最大の理由は、やはり火災防止だと思います。カプセル内は電気配線などが多数配線されており、いくら気圧が低いからといってやはり危険なのでしょう。純酸素中では鉄などの金属も容易に引火します。
ここから先はさらに自信がありませんが、気圧が低いということは肺胞におけるガス交換において血中の二酸化炭素が抜けやすいという事が言えると思います。過呼吸という症状がありますが、これは不安などによって呼吸が激しくなった結果、血中の二酸化炭素濃度が低くなることによって生じます。人間は血中の二酸化炭素濃度によって息苦しさを感じるようにできており、これが低くなることで呼吸をしなくなってしまうわけです。二酸化炭素が抜けやすいということは過呼吸が生じやすいということではないかと思います。
また気圧が低いということは、呼吸をするための筋力が少なくて済むということでしょう。ここで酸素も少なければかえって呼吸は荒くなりますが、純酸素ということでその必要もなくなります。長期間宇宙に滞在した宇宙飛行士が地上で立つことも出来ないという映像を見た事があると思いますが、帰還したら呼吸ができなくなっていたというのでは笑い事ではすみません。
いずれも十分な訓練を受けた強靭な体力をもつ軍人出身の宇宙飛行士が、短期間宇宙に滞在するというのなら問題にはならないのでしょうが、宇宙計画が長期滞在を目指すようになり、宇宙飛行の目的も広がって必ずしも強靭な体力の持ち主だけが宇宙に行くというわけにも行かなくなったことから、1気圧の空気の方が安心ということになるのだと推測します。
たしかに0.3気圧純酸素にもご指摘のとおり有利な点が沢山あります。船外作業用の宇宙服に1気圧の空気を入れたらダッコちゃん人形のようにパンパンに膨らんで動きがとれなくなってしまうでしょう。おそらく今後も使用目的によって使い分けるのでしょう。
ご丁寧な再回答ありがとうございます。
>純酸素中では鉄などの金属も容易に引火します。
そんなに危険な物だったんですか。呼吸できるんだから純酸素でいいじゃんって…う~ん、素人考えでした。
そういえば学生時代の実験で、スチールウールが酸素を入れたビンの中では激しく燃えていたことを思い出しました。
>帰還したら呼吸ができなくなっていたというのでは笑い事ではすみません。
まったくその通りですね。
宇宙環境が地球上のものと違うほど、いったん適応した生命体は地球に帰ることが困難になる。
長期滞在をしていたソ連のほうが米より先に1気圧にしていたのもうなずけます。
これから一般人が宇宙に行くことや長期滞在することを考えると、できうる限り地球上の環境を宇宙に持ち込むほうが良いんでしょうね。
No.5
- 回答日時:
かつて米国の打ち上げ機は力不足で、カプセルの重量軽減に苦労していたようで、外板の厚みを減じるために気圧を減じた純酸素を用いていたわけですが、現在は打ち上げ能力も向上したので1気圧で問題無くなったのでしょう。
この回答への補足
スミマセン、この場で補足させて頂きます。
皆さんのおかげで最初の疑問は解決しました。シャトルもソユーズもISSも1気圧なんですね。
ただ後半の疑問が解消できません。
なぜ1気圧なのか?私には宇宙では低気圧高酸素のほうが何かと都合がいいように思えるのです。
1)質問でも書いていますが、船外活動をする際13~20時間かけて気圧順化するのは大変無駄に思えます。
2)役に立たない窒素を宇宙にもって行くお金とスペース。
3)気圧順化の際血液中に溶け込んだ窒素をわざわざ時間をかけて抜くわけですが、最初から窒素のない空気を吸っていれば問題ないのでは。
4)内外気圧差は少ないほうが安全ではないのか?例えば宇宙塵の衝突時
宇宙服内は0,3気圧ですから、船内の人間が耐えられないとは思えません。
やはりsatoumasaruさんの言う様に火災の問題なのでしょうか?
No.4
- 回答日時:
#3です。
訂正します。アポロ当時は純酸素でしたが、現在は通常の空気を利用しているようで
すね。これは、おそらく純酸素ですと、ガス圧の調整がうまくいかず、
高濃度に成った場合、瞬時にして宇宙船が燃焼してしまうおそれがある
こと(下記のアポロの事故がまさにそうでした)、また、ソユーズが
ISSにドッキングするときの問題点が生じること等にもあるのかもわか
りません。
回答ありがとうございます。
アポロ1号の事故は聞いたことがあります。
酸素濃度が高いと火災になり易いから、窒素を増やして1気圧を保つ…
低気圧のほうが何かと便利のように思えるのですが、やはり火災事故の危険性は冒せないというところでしょうか。
No.3
- 回答日時:
> スペースシャトルや宇宙ステーション内部は1気圧なんでしょうか?
これは、国によって異なります。ロシアのソユーズは地上と同じ
空気構成ですが、アメリカは0.3気圧の純酸素です。もっとも、
離発着の時は窒素40%酸素60%の混合となります。(これは
1967年にアポロ宇宙船の事故があり純酸素のために宇宙飛行
士3名がなくなったということからです)
ですから、当時、ソユーズとアポロのドッキングのさいに技術的
問題になりました。
たぶん、現在もアメリカは純酸素を使用しているでしょう。
No.1
- 回答日時:
> 長時間低気圧(あるいは高酸素)にいると何か問題でもあるんでしょうか?
はっきり言って、ほとんど自信ないですが。
気圧が下がると分子が活動しやすくなり、水などの沸点が下がります。(沸騰しやすくなります。)
人間の身体の大部分は水分です。その水分が沸騰してしまうとしたら…。
それに、打ち上げるときは当然、地上と同じ1気圧でしょうから(この時点で気圧を下げるのも変でしょ?)、大気圏を脱出しても、それを保っていると考えるほうが自然ではないでしょうか。
回答ありがとうございます。
>それに、打ち上げるときは当然、地上と同じ1気圧でしょうから(この時点で気圧を下げるのも変でしょ?)、大気圏を脱出しても、それを保っていると考えるほうが自然ではないでしょうか。
なるほど。結局地球上の環境をそのまま宇宙に持ち込んだほうが簡単なのかもしれませんね。
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