A 回答 (3件)
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No.3
- 回答日時:
次の論文は私がある雑誌に掲載した、脳死と臓器移植についてのものです。
「・・・死の概念の変化と臓器移植
「脳死」について比較的若い年代の方は、医学的な説明を受ければ納得される方も多いと思います。しかし年をとった方のなかには「死」とは、呼吸が止まり、心臓が止まり、体が冷たくなった状態をいうものと思っておられる方が少なくはないと思います。つまり多くの人は、生命体がその生命活動をすべて停止した状態になることが「死」だと理解していると思います。
ところが近年医学が進み「死」の概念が変わってきました。それによると脳がその働きを停止した時点が生命体としての「死」すなわち「脳死」であるとの考えになってきたのです。そしてこの考えは「臓器移植」という医学の新しい分野に進んでいったのです。
しかし生命活動の証と思ってきた心臓がまだ動いているにもかかわらず、まだ体が温かいにもかかわらず、機械の力を借りているとはいえ呼吸もしている身体に「死」を宣告されるのです。自分の愛する人がこの状態になった時、本当に納得して「臓器」の提供を認めることができるでしょうか。
もちろん法医学的に「脳死」を体の「死」と認めて「臓器移植法」が成り立っているわけですから我々素人が口をはさむべきことではないかもしれません。
しかし「臓器移植法」は医学的論理を優先させて、倫理的感情論を後回しにしたと思えてなりません。
だからといって臓器移植が法に定められた条件を完全に満たした上で行われるならこれを否定するつもりはありません。 すなわちドナーが生前に自ら希望してドナーカードを作り、家族などの周りの人も承諾し、現代医学で考えられる限りの適切な処置が取られても、なおかつすべての機能の回復が不可能になることを確実に予測できた時を「脳死」とみなし、「臓器」の機能が完全に止まるまえに「臓器」の摘出に踏み切ることによって、「一つの死」が「複数の死」をすくう可能性がでてくるのならばむしろ「臓器移植」を積極的に進めるべきだという考え方もあります。なぜならば「臓器移植」が出来なかった時代には、「死」を待つしかすべのなかった患者に再び社会に復帰できるという『夢』や「希望」を実現することができるからです。
・・・「臓器移植」の問題点
しかし、「臓器移植」が頻繁に行われるようになると,想像されるのがドナー不足です。この場合一番恐れるのは、すでにA国に見られているように「臓器」を金と権力でやりとりするという事態になることです。
日本では考えられないことですがA国においては、死刑囚の「臓器」を奪いあったり、闇でせりにかけられるなどという倫理以前の事態がおきていると聞いています。こうなると、特定階級の人達の「命」を救うために、別の「命」の尊厳が否定されることになります。
利権の道具として人の「臓器」がターゲットになり、先進国を中心とした富裕者が発展途上国の貧困層から「臓器」を買うことを目的としたツアーさえあるといいます。 またB国で聞いた冗談半分の話しですが、ある意味本音ともいえる深刻な部分を含んでいるのでご紹介します。それは極端で慢性的なドナー不足におちいっているB国では、どうしたらドナーを増やせるかを問うたところ、道路のスピード制限を撤廃したらどうかという案や、飲酒運転を認めたらどうか等という案がまことしやかに出されたというのです。
医学的にみればドナーからの臓器摘出は早ければ早いほどいいに決まっています。言い方は悪いのですが、臓器が新鮮であればあるほど価値があるわけです。そのために国内においても本人の意思決定の確認に手間取った場合などは、医師が直接家族に強く選択をせまるケースが出てきたり、ドナーに対し本当に「あらゆる適切な処置」が施されたか疑問を抱かざるを得ないケースが多々起きているそうです。
・・・これからの「臓器移植」のあり方
今後「臓器移植」がますます増加する傾向にあるなか、医学的事情を優先して、人間本来の倫理をおろそかにすることは、決してあってはならないと考えます。なぜなら臓器の提供者の家族や愛する人の本当の気持ちは、摘出手術が行われる寸前まで、奇跡がおきることを心のどこかで祈っているのです。「万が一」という言葉を何度も何度も心で繰り返しているのです。
提供を受ける側にとっては、この「臓器」が、あきらめていた「命」に光をさし、移植しか助かるすべのない人たちに希望と喜びを与えることもまた確かです。同じように奇跡を祈っていた両者に与えられる運命が両極端にあい反するからこそ、この問題は医学的論理で押し切らずに、倫理的に煮つめる必要があるように思えてなりません。
参考にして下さい。
No.2
- 回答日時:
脳死判定は、なにも本人の生前の意思だけでは実施しません。
医師の判断で、回復不可能なダメージを脳が受けている場合は、家族への説明のため脳死判定を実施します。
臓器提供者として、生前に意思表示している人は「ドナーカード」を所持している場合が大半です。
また、所持なくとも、家族への意思表示がされていれば、御本人の意思と見なされます。
脳死判定とは
深昏睡、瞳孔散大、脳幹反射の消失、脳波の平坦化、自発呼吸停止を確認。
(6時間の経過を見て再確認)
[6歳未満は除外。
薬物中毒、低体温、代謝・内分泌障害は脳死類似状態になるので除外]
しかしこれだけで本当に脳幹機能の停止まで確認できているか?
関西医科大学で鼻腔誘導脳波分析法による脳幹機能の検査方法を確立
条件・本人の生前の文書での意思表示
・摘出時の家族の同意
・15歳以上に限定
・実施施設の限定:臓器摘出は92施設 (現在は329施設に増加)
心臓移植は阪大、国立循環器病センター、東京女子医大 (計3施設)
肝臓移植は京大、信州大 (現在は9施設に増加)
肺は4施設、膵臓は13施設、小腸は9施設、腎臓は176施設が指定
角膜及び腎臓の移植に関する法律はこれにより廃止
臓器移植との関連
酸素不足に強い腎臓:心停止から摘出までの時間は60分が限度。
酸素不足に弱い心臓、肝臓:脳死段階で摘出する必要あり。
次善策:生体肝移植 (平成元年11月、島根医科大学が日本初)
→健康者の肝の摘出は医療の範囲内か、違法行為かという問題も提起。
いずれにせよ生体から心移植は不可能。
なぜ、脳死判定に拘るかですが、上記の様に「酸素供給が断たれた」場合は破壊される臓器もあるため、健全な状態での摘出を目的としています。
そのために、移植コーディネーターといわれる職員がおり、脳死判定の1回目の時点で遺族に対して臓器提供を説明して、本人の意思表示が生前にあっても説明して承諾を得ます。
確かに、「それは脳死の患者、もしくはその家族が決めることではないのですか?」という意見は幾度となくでています。
しかし、そこには莫大な医療費が家族に掛かってきます。
植物状態では、回復する確率が0%に近い状態ですから、個室で生命維持装置で「生かされている」だけになりますから、生前の意思確認がされていた場合はその意思が優先されます。
その意思表示がなくとも、コーディネーターへの家族の承諾がされれば同じ効果を与えます。
No.1
- 回答日時:
倫理的ないし哲学的な意味についてはカテゴリー違いになりますので、
純粋に法的な意味について説明します。
脳死が人の死かどうかが問題になるのは、
「人の死」が、法律学的には人格の喪失、
つまり権利義務の主体となる資格を失わせるという極めて大きい意味を持つからです。
たとえば、人が死ぬと、所有権の主体となり得なくなるので、
相続という形で、生きている人に持っている財産を分けます。
所有権に限らず、人権も含めたあらゆる権利は、生きている人のみに与えられ、
死んだ人には与えられません。
ですから、「人の死」の時期は、脳死者やその家族が勝手に決められるようなものではなく、
法規等により、少なくともある程度一律に決せられる必要があります。
これまで、「人の死」の時期については、人間が確実に死んだかどうかを判定するため、
脈拍、自律呼吸、瞳孔反射の三兆候の喪失を基準とするという考え方が一般であり、
それで何も問題がなかったのですが、
その基準で死んだ人からは、健全な臓器の移植が行えないため、
移植医療の必要性の観点から、脳死を人の死と扱えないかが問題となってきました。
生きている人には当然生存する権利がありますから、
生命維持に必要な臓器を摘出することは絶対に許されませんが、
脳死が人の死であれば、脳死者は死んだ人ですから、その制約を免れるわけです。
ただ、脳死を人の死とすることについては、
現に息をしていて心臓も動いている人を死体と扱うわけですから、
特に家族にとって心情的に受け入れにくい面があります。
これ以外にも、「脳死」とは本当に完全な人の死なのかという疑問もありますし、
臓器移植のためだけに脳死を人の死と考えるのが妥当なのか、
妥当でないとして、脳死を全般的な人の死と扱うと、
現に入院中の脳死者の相続が開始したりして非常に面倒になる、などの様々な問題があり、
それゆえ脳死を人の死とできるかが議論されているわけです。
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