エンジンについて全くの超初心者なのですが、検索してもなかなか
しっくりくる答えが見つからなかったので、ここで2点ご質問させてください。
質問内容が理解できるか不安ですが、よろしくお願いします。
前から疑問に思っているのですが、
(1)タペット(もしくはクランクシャフト)の磨耗
エンジンからの動力が、クランクシャフトタイミングプーリーからタイミングベルト(チェーン等)を
介して伝わり、カムシャフトが回転、そのカムシャフトが回ってタペットを毎回押し上げる
と理解しています。
そこで、カムシャフトがタペットを押し上げる接触部分は、ものすごい高回転で長時間摩擦が
加わっているので、いくら高性能で冷却ができる潤滑油が循環してても、あんなに摩擦が繰り返し
されているのに、なぜすぐに磨耗しないものなのでしょうか?
(どんなに性能の良い耐磨耗性の高い合金でも持たないのではないか?というのが素人感覚なのですが・・)
(2)MT車 クラッチディスク・フライホールの摩擦と伝達
MT車の場合、高回転のフライホイールが、乾式のクラッチディスクと接し、動力が伝えられると
理解しています。フライホイールとクラッチディスクが摩擦する部分そのものが見られる、映像や
実演モデル(博物館、展示会など)などはありますでしょうか?
あの高回転の出力が摩擦により動力伝達する瞬間が、いまいち想像できません。
(ものすごい摩擦により、電磁波の熱放射で真っ赤になるものでしょうか?)
よろしくお願いいたします。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
なるほどこれはよい御質問ですね、などと言いつつ、ワタシ、内燃機関は専門ではない工学者なので、機械工学の一般論とそこから導き出される『想像』的な回答になってしまいます。
ホントはクルマではなく、工学カテの御質問とされた方が学問的回答が得られるのではないかと思われますが。
>(1)タペット(もしくはクランクシャフト)の磨耗
御指摘通り。
エンジン(内燃機関)の登場よりもずっと前、カムという機械要素が発明されたと同時に、カムは摩耗と戦う運命にありました。
※エンジン登場の最初期の頃、カム機構が使えなかった理由の一つにこのモーレツな摩耗があったほどです。(それまでの蒸気機関でカムがフンダンに使われていたのは、回転数が低いからです。)
※自動車が発明されて40年後(それでも第二次大戦前)には、既にレーシングエンジンは排気量1000cc当り100馬力を超えましたが、その頃でもこの部分の摩耗は完全に解決出来ていたとは言えず、この時代には凝ったローラーを挟んで摩擦を低減した設計などが見られます。
※戦後になりこの部分の耐摩耗性が飛躍的に向上したのは、接触面の金属の改質と潤滑に関する研究が進んだからです。
(1)接触面の金属の改質
※現在では、カム表面にチル処理(加熱後部分急冷して表面硬度を上げる処理)やワイドピーニング処理(二硫化モリブデンなどの粒子を高速で衝突させ、表面の疲労強度を増す処理)などを行い、またカムが衝突するタペット側には高価なステライト鋼を溶接するなどして、接触部の耐摩耗性を驚異的に向上させています。
※エンジンや変速機では(F1用などではなく、量産車用で)、カムに限らずピストンリングでもクランクシャフトでもシンクロコーンでも、元々ジェットエンジン用に開発された特殊な金属や特殊な表面処理をフンダンに利用しており、それで20万km(トラック用ディーゼルなら100万km)もの走行距離に耐えるモノが作れる様になりました。昔のクルマのエンジンや変速機が10万kmも持たなかったのは、設計技術や加工技術以前にこの種の『基盤技術』の違いが大きいです。
それでも耐久性やコストなどで紆余曲折があり、現在の自動車用カムシャフトではチル処理が一般的となっているのではないかと思いますが・・・ここは熱処理やエンジン設計で『食ってるヒト』の回答を待ちましょう。世界中のエンジンを調査すれば、『おっ!これは!』と驚愕する対策がとられている例もあるかもしれません。)
(2)潤滑
※この面では、ワタシは完全に『ユーザー』の立場に過ぎないのですが(潤滑剤の研究は、工学ではなく化学の分野です)、まず極圧剤の開発があるでしょう。
エンジンオイルには(ショップなどでワザワザ高額な添加剤を買うまでもなく)、様々な添加剤が混入されています。で、その中の一つが極圧剤です。これは部品同士の接触面などで、高い面圧がかかるところでも潤滑性能を維持する為に混ぜられているモノですが、戦後(恐らくジェットエンジンの実用化と共に)急速に研究が進みました。エンジンに限らず変速機もそうですが、この『高性能な潤滑剤』に我々工学分野の技術者は大変助かっています。
※更にも一つ。これは『現象が先にあり、後でその働きに気付いた』的な話なのですが。
金属同士をちょっとでも接触させれば急速に摩耗するのは御質問者様の御想像通りで、いくら金属を硬化してもやがて摩耗すると考えるのが妥当です。しかし実際には金属の改質で十分な結果が得られており、すると次は油膜について考えることになります。
一方、最近(と言いつつ、ここ15年ぐらい?)潤滑面同士のスキマを狭くして圧力をかけると、その部分の油膜の圧力が急激に上昇し、油膜が切れにくくなる(部品同士が接触し難くなる)という現象が発見されました。
クルマのエンジンの場合、この働きで潤滑されている代表例がクランクシャフトのメインベアリングですが、カムとタペットの接触でも同様の現象が発生しているのではないか?と。(実際に実験的にカム~タペット間の油圧を測定した論文は読んだことがありませんが、恐らく潤滑油のこういう働きが存在しているのではないか?と考えられます。)
ちなみに。この技術的分野は、トライポロジーという学問で研究されています。比較的最近確立された新しい分野の学問で、もし興味をお持ちならちょっとかじってみても面白いですよ。
・・・っというワケで。
カムの接触面は、金属の改質+潤滑油の性能向上+オイル潤滑のメカニズム という複合的な働きで摩耗しないのではないか、と予想されるということです。
>(2)MT車 クラッチディスク・フライホールの摩擦と伝達
画像や展示物には心当たりがないので回答にはなりませんが。
クルマのクラッチでは、放射熱で真っ赤になるほど温度は上がりません。(ヘタクソが運転したらクラッチを滑らし過ぎて真っ赤になる?いえいえ、その前に熱でクラッチ材が分解し、摩擦力を急激に失い温度が上がらなくなります。)
『あの高回転の出力が摩擦により動力伝達する瞬間が、いまいち想像できません。』とのことですが・・・これは『エンジン側がいい調子で回っているのに、半クラッチで変速機側がゆっくり回る現象が判らない』ということでしょうか?
クラッチは、高校?で習う摩擦力の式F=μWにモロに当てはまる装置です。
半クラッチということはクラッチを押すチカラ=荷重Wが小さいということで、その分F(クラッチの場合、エンジン側のトルク)の伝達量も小さくなります。一方クラッチ側には走行抵抗がかかっているので、半クラッチ状態ではエンジントルク[T]と走行抵抗[-T]の差分でクラッチが回される(つまりスリップしてエンジン側の回転数よりゆっくり回る)というワケです。
大変遅くなりましたが、内容大変興味深く見させていただきました。
素人のくだらない質問に対し、技術者の観点からここまで
分かりやすく歴史的背景、解説、考察、結論まで、誠意をもった
ご回答をしていただき、大変感謝しております。
恥ずかしながらチル処理、トライポロジーは始めて耳にした単語でした。
調べてみましたが、面白そうな内容ですね。
摩擦については、高回転のフライホイールと静止しているクラッチが、
摩擦により一緒の回転速度(角速度)で動きだす映像がイメージできなかった
のですが、確かに高校物理のF=μWを考えればそうだと思いました。
一番専門的な立場としての見解を頂けたので、ベストアンサーと
させていただきたいと思います。
No.5
- 回答日時:
金属同士が直接触れていればその通りです、オイルの分子1個分の薄い膜が間にあれば摩耗しません。
摩擦によって滑れば熱が発生します、クラッチを繋ぐ時、熱発生が大きな摩擦があって滑る時間は0コンマ何秒以下です(ものすごい摩擦になった瞬間に繋がって滑りが無くなります)。
良く半クラッチの話を聞きますが、レース等以外で半クラッチを使うのは超ヘタクソのテクニック?です。
参考 「電磁波の熱放射 」全く意味不明、材料にもよりますが、単なる摩擦のある滑りで、簡単に計測可能な電磁波を発生させようとすれば自動車のエンジン程度の力では無理です。
No.4
- 回答日時:
>(1)タペット(もしくはクランクシャフト)の磨耗
カムシャフトは表面が高周波焼付けで強固に硬くしてありますから余程のオイルメンテナンスが悪くない限り磨耗の心配はないでしょう。
ただタペットの方はラッシュアジャスタの表面が多少磨耗してるのを見たことがありますが多少の隙間は油圧でカバーするので問題ないでしょう。
もちろんクリアランスが大きくなったらシム調整などは必要でしょう。
>(2)MT車 クラッチディスク・フライホールの摩擦と伝達
>あの高回転の出力が摩擦により動力伝達する瞬間が、いまいち想像できません。
そんな大げさなことはありません。初心者が半クラッチで滑らせながら繋がない限りそれほど熱も持たないし磨耗することもありません。
大変遅くなりましたが、ご回答どうもありがとうございました。
日常から従事されていると思われる方からの意見、大変参考になりました。
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