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フェダラーがエイハブ船長に
(1)人間によって造られたのではない棺を見てから死ぬ
(2)アメリカの木で造られた棺を見てから死ぬ
(3)自分が先に死んで水先案内人として姿を現す
(4)麻糸だけが船長を殺せる
と予言してますよね。
この予言の(1)と(2)についてなんですけれど、(1)の「人間によって造られたのではない棺」とはモビー・ディックのことなのでしょうか?フェダラーの死体が網で絡み付いていたから、モビー・ディックはフェダラーにとっての「棺」と言うことなのかなあ、と思ったのですけど、どうなのでしょうか?
また、(2)の「アメリカの木でできた棺」とはピークォド号を指しているのでしょうか?他に何も思い浮かばなかったのだけれど、なぜピークォド号が「棺」なのか分からず・・・。船員がみんな死んでしまったから「棺」なのでしょうか?
暇なときにでも回答いただけるとうれしいです。

A 回答 (1件)

ちょうどいま『復讐する海 ―捕鯨船エセックス号の悲劇―』(ナサニエル・フィブリック 集英社)を読んでいるところで、『白鯨』を読み返さなくちゃなぁ、と思っていたんです。

いい機会なので、本棚の奥から引っ張り出してきました。

えっとですねぇ。
「第百三十五章 追撃――第三日」というところを見てください。文庫だったら下巻の終わりの方です。

「鯨の背にぎりぎりと幾重にも索を巻かれ――一夜のうちに鯨がその身にぐるぐる巻きに纏いつけた鯨索のなかに巻き込まれ、幾重にも羽交い締めにされている拝火教徒の、半ば引き裂かれたからだが見えたのだ」(田中西二郎訳 新潮文庫p.447)
ここでまず、予言の三が現実のものになります。

つづいて、エイハブはこう言う。
「「そうか、拝火教徒! おれはおぬしにまた会うたな。…すると、これがおぬしの約束した棺なのだな」」(同ページ)
これで、モービー・ディックそのものが第一の予言の棺であったことがわかります。

エイハブは捕鯨ボートに乗り移って、モービー・ディックの追跡を続けます。
すると、白鯨は「かれらの運命を予告しているその頭」を揺さぶりながら、ピークォド号そのものに攻撃をしかけてくる。

「弱い人間の力に何ができようとできまいと、鯨の額の堅固な白い砦は、船の右舷の舳を打ち破り、人間も船材もゆらゆらとよろめいた。ある者はうつぶせに海へ落ちた」(p.453~p.454)

それを捕鯨ボートから見ていたエイハブは、船そのものが棺だと悟るんです。

「「船! 棺!――第二の棺!」ボートからエイハブが叫ぶ。「棺の材木はアメリカ産でなければならぬ!」」(p.454)

そして予言の四番目は……。このすぐ後に成就しますね。

これは実際のできごとだったんです。
捕鯨船エセックス号がマッコウクジラに沈没させられる、という事故が、現実に起こっていたんですね。
メルヴィルはそれを元に『白鯨』を書いた。ピークォド号は沈没し、イシュメイルはレーチェル号に助けられてこの話を語る、という物語構造をこの作品は取っているのですが、現実のエセックス号の悲劇はこのあと始まった。それが『復讐する海』なんです。まだ全体の1/3ぐらいしか読んでないのですが、これを読むと『白鯨』のバックグラウンドみたいなものがよくわかります。
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この回答へのお礼

丁寧な解説ありがとうございます。とても分かりやすくて、疑問も解けてすっきりしました。
「白鯨」はちょっと読み流しただけなので、どうもあまり内容が頭に入ってなかったみたいです…。もう一度きちんと読み直してみようと思います。

お礼日時:2004/02/27 21:08

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