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司馬遼太郎の「人斬り以蔵」を原作とした、「人斬り」という映画が上映されました。
この映画では、三島由紀夫が薩摩藩士、田中新平役で出演しています。田中は切腹して果ています。

質問は、この映画について、司馬と三島は何かコメントを残していますか?

A 回答 (1件)

wikから。




何ゆゑ私に、幕末の刺客、薩摩侍の田中新兵衛の役が振られたか、多分、下手な剣道をやつてゐてサムラヒ・イメージを売り込んでゐたり、テロリズムを礼賛してゐるやうに世間から思はれてゐたり、また私を使へばその分の宣伝費はタダですむと計算されてゐたり、いろいろの理由があるだらうが、「もの」を選ぶといふのは、最終的には総合的判断である。総合的判断とは、非合理的なものである。さういふ風にして、私の知らないところで、さういふ相談が進んでゐた、といふことが……そして私の「知的な部分」なんかは全然考慮の外に置かれたといふことが、私をうれしがらせたことは相当なものだつた。それはともかく、橋本忍氏のすぐれたシナリオの中でも、ろくに性格描写もされておらず、ただやたらに人を斬つた末、エヽ面倒くさいとばかりに突然の謎の自決を遂げる、この船頭上りの単細胞のテロリストは私の気に入つた。
— 三島由紀夫


時代劇殊に幕末物は好きだが、自分がまさか時代劇に出演することにならうとは、想像もしてゐなかつた。(そんな利口なプロデューサーはゐるまい、とタカをくくつてゐたのが本音である) はじめてカツラをつけ、大小を腰にさしても、剣道や居合の道場の延長で、少しも違和感を感じなかつた。第一、私自身、人から見れば漫画だらうが、幕末の勤皇の志士の心境で、毎日を送つてゐるのだから、その生活感情がそのまま画面に出ればいいのだと思つた。
— 三島由紀夫「『人斬り』出演の記」



朝から勝さんとからむ場面を演じているんだが、勝さんほどいいお師匠さんはありませんね。実に親切に教えてくれる。これまでのぼくは“俳優”としてどんな“素材”なのか見当がつかなかった。自分自身がわからなければ、どの面を生かせばいいのかもわからない。ところが勝さんは半日で、ぼくが俳優としてすばらしい資質をもっていることを知らせてくれた。
— 三島由紀夫


只今京都で勝新太郎と裕次郎と仲代達矢と四人共演の「人斬り」といふ映画に、田中新兵衛の役で出ておりますが、この役の交渉をうけてから面白くなつて、この時代のものを大分よみました。よめばよむほど、現代との類似が目につき、こつちも多少、志士気取りになつて来ます。明後日は大殺陣の撮影です。新兵衛が腹を切つたおかげで、不注意の咎で閉門を命ぜられた永井主水正の曾々孫が百年後、その新兵衛をやるのですから、先祖は墓の下で、目を白黒させてゐることでせう。
— 三島由紀夫



小説を書くという作業は、自分自身の中にある普遍的人間が歴然と住んでいて、それがいかに奇妙な心理や行動を表現しようとも、本来普遍性から外れることがないという、いわば証明不要の公理のようなものを信ずる以外に書けるものではない。(中略)男は一個の身を無数の権力もしくは権力現象に身をゆだねたり、そのとりこになり、他に害をあたえたり、あるいは害を受けたり、ときにはそれを得ることによって何事かの自己表現を遂げようとあくせくし、それがために生死する。(中略)志とは単に権力志向へのエネルギーに形而上的体裁をあたえたにすぎない場合もあるが、それはそれなりに面白く、さらにはいかなる志であっても志は男が自己表現をするための主題であり、ときには物狂にさせるたねでもあるらしい。
— 司馬遼太郎
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この回答へのお礼

早速のご回答ありがとうございます。

三島は、志士に憑依されたようですね、
<この船頭上りの単細胞のテロリストは私の気に入つた。>
<幕末の勤皇の志士の心境で、毎日を送つてゐる>
<勝さんは半日で、ぼくが俳優としてすばらしい資質をもっていることを知らせてくれた。>
<現代との類似が目につき、こつちも多少、志士気取りになつて来ます。>

司馬も、志が物狂いにさせる、と言っていますね。
<いかなる志であっても志は男が自己表現をするための主題であり、ときには物狂にさせるたねでもあるらしい。>

お礼日時:2023/03/09 16:17

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