No.6ベストアンサー
- 回答日時:
No.4の回答で色々と書いた後に気づいたのですが、容易に入手できる安価な物質を用いて分析手段に中和滴定を用いて反応追跡が出来る系はなかなかないですね。
ちょっと無責任な回答でした。ご質問の内容に戻って考え直しました。
>「酢酸エチルの加水分解反応」で行う中和滴定は上記の目的を果たすのに十分なのかどうか
研究への実用では無く、あくまでも学習のためという前提のもとで充分だと思います。ただし酢酸エチルに対して水を大過剰に加える必要があります(こうした反応では大抵そうしますね)。そうすれば反応を擬一次反応として(見かけ上一次反応として)解析することが出来ます。分析手段もGCなどのほうが適していると思います。
酢酸エチルの酸触媒による加水分解反応はrei00さんが類似例をご提示の通り
CH3COOC2H5 + H2O + H+ ⇔ CH3COOH + C2H5OH + H+ (1)
で表されます。酢酸エチルの反応初期の減少速度は(rei00さん、単なる書き間違いと思いますが一応訂正しておきます、正方向の速度は原系成分濃度の積で表されます)
-d[CH3COOC2H5]/dt = k'[CH3COOC2H5][H2O][H+] (2)
で書き表すことが出来ます。ここで酸触媒は反応の進行度に関らず一定、また反応の進行度による濃度変化を無視できる程度に水が大過剰に存在していれば k = k'[H2O][H+] と置いて
-d[CH3COOC2H5]/dt = k[CH3COOC2H5] (3)
となります。複次反応を速度論的に解析する際に特定の成分以外の基質を過剰に存在させるのは反応を擬一次反応として解析しやすくする一般的な手法です。
反応開始時の時刻を時間t0 として、このときの酢酸エチル濃度を[CH3COOC2H5]t0とおき、式3を解いて整理すると
ln{[CH3COOC2H5]/[CH3COOC2H5]t0} = -kt (4)
すなわち時間t経過後の酢酸エチル濃度をt= 0 の濃度で除した値の自然対数と時間を一次プロットすればその傾きが擬一次反応の速度定数kである、ということです。真の速度定数を求めるにはkを[H+]と[H2O]で除してやれば算出できます(正式にはもっと厳密な手法をとります、今回はあくまでも簡便な方法として提示しました)。
さて、上記はあくまでも酢酸エチル消費量に着目したものです。GCなどが使えるのであれば酢酸エチルに着目して測定を行うのが良いでしょう。今回の系では幸いなことに反応中間体濃度をほとんど無視することが出来ますので
酢酸の生成量 = 酢酸エチルの消費量
とみなして解析を行うことが出来ます。
細かい点ですが、反応の追跡はなるべく早い時期に行うこと。反応終盤では濃度も濃度変化も小さく誤差が大きくなります。また一次反応速度定数を算出する上では反応開始後であれば反応開始時刻 t0 をいつに設定しても構いません(理由は考えてみてください)。誤差の大小の評価は式4の一次プロットでやれば良いのではないでしょうか。簡単な計算ですので表計算ソフトで評価可能だと思います。グラフにしてビジュアルに評価すると分かりやすいですよ。
最後に熱分解ではありませんが、一次反応を応用した実例として遺跡などに含まれる炭素の放射性同位元素の存在比から年代を割り出す手法があります。調べてみては如何でしょうか。
No.9
- 回答日時:
rei00 です。
Organomets さん,再度の御注意有り難うございます。全くお恥ずかしい事ですが,御指摘のミスに気付いておりませんでした。もちろん御指摘通りで,遅きに失しましたが,以下の様に訂正いたします。
『 -d[CH3COOCH3]/dt = k'[CH3COOH][H+] 』
⇒ 『 -d[CH3COOCH3]/dt = k'[CH3COOCH3][H+] 』
『 -d[CH3COOCH3]/dt = k[CH3COOH], k = k'[H+]0 』
⇒ 『 -d[CH3COOCH3]/dt = k[CH3COOCH3], k = k'[H+]0 』
tarachan424 さん,Organomets さん,混乱させたようで申し訳ありませんでした。今後ともよろしくお願いいたします。
No.8
- 回答日時:
再三登場させていただきます。
rei00さん、私も言葉が足りなかったので惑わせてしまったようですね。すみません。私が指摘したかったのは以下の部分の表記についてです。まずrei00さんの過去の回答からこうした系の解析については十分に知識を持ってらっしゃることは確認しました。その上で書き間違いかな?と思ったのです。
> したがって,式(1)は次の一次式(2)になる。
> -d[CH3COOCH3]/dt = k[CH3COOH], k = k'[H+]0
これは正しくは
-d[CH3COOCH3]/dt = k[CH3COOCH3]
ではないでしょうか?
この系の場合には未反応時の酢酸メチル濃度を [CH3COOCH3]t0 とすれば、あるいは
-d[CH3COOCH3]/dt = k([CH3COOCH3]t0 - [CH3COOH])
一次反応では反応開始時が原料の消費速度が最大であり、終点が消費速度が最小となります。この系の場合も擬一次反応ですので酢酸メチルの消費速度 -d[CH3COOCH3]/dt もこれに従います。酢酸メチルの消費速度は生成した酢酸濃度に比例して増加するのではなく、残存する酢酸メチル濃度に比例して減少していく、ということです。
A→Bの一次式の速度式を解くと[A] = [A(t=0)] exp(-kt) となりますが、これを逆に微分して式を整理して確認しても良いでしょう。
以上のことから、おそらく右辺の括弧内にCH3COOCH3と書くべきところをCH3COOHに書き間違えたものと判断しました。非常に細かい点ですが気になりました。
No.7
- 回答日時:
rei00 です。
Organomets さんの回答を拝見して補足(?)致します。> rei00さん、単なる書き間違いと思いますが一応訂正しておきます
ありがとうございました。書き間違いではないんですが,実験書の記載を適当に変えながら回答を書いている間に,「反応の進行度による濃度変化を無視できる程度に水が大過剰に存在」についての説明を忘れてしまったようです(お恥ずかしい)。
tarachan424 さん,先の私の回答には途中の説明を省略した所がいくつかあります。必要でしたら補足下さい。
No.5
- 回答日時:
rei00 です。
チョット気になる事があって,昔某大学の教養課程の化学実験をお手伝いした時の実験書を引っ張り出してみました。と,酢酸エチルではありませんが,酢酸メチルの加水分解を中和滴定で追っかけて反応速度の測定を行なっていました。以下,その実験書を元にしています。
加水分解反応:
CH3COOCH3 + H2O + H+ ⇔ CH3COOH + CH3OH + H+
反応速度式(1):
-d[CH3COOCH3]/dt = k'[CH3COOH][H+]
(正方向の速度定数:k')
ここで,塩酸の濃度が1規定程度であれば,酢酸の解離による水素イオンの濃度増加は無視できるので,最初の塩酸濃度を [H+]0 とすると [H+] = [H+]0 とできる。
したがって,式(1)は次の一次式(2)になる。
-d[CH3COOCH3]/dt = k[CH3COOH], k = k'[H+]0
これから,次の式(3)が導ける。
a - x = ae^(-kt)
a: 酢酸メチルの初濃度
x:時刻 t において生じた酢酸の濃度
実際の操作:
1)約 1 N HCl 240 ml に酢酸メチル 8 ml を加えて反応開始
2)5分ごとに 5 ml を取りだし,蒸留水 50 ml に加えた後,0.2 N NaOH で中和滴定
3)反応開始後 100 分まで繰り返す
4)時刻 t に対して滴定量 V をプロットし,なめらかな曲線を書いた後,5分ごとの滴定量を新たに読み直す。
結果の解析:
時刻 t1, t2, ・・・tn と時刻 t1+Δ, t2+Δ, ・・・tn+Δ(Δ一定)で x を測定し,各濃度 x1, x2, ・・・xn と x1+Δ, x2+Δ, ・・・x(n+Δ) を求める。
式(3)から,x(n+Δ) - xn = a[1-e^(-kΔ)]e^(-ktn)
したがって,ln[x(n+Δ) - xn] = -ktn + 定数
ln:自然対数
滴定に要した NaOH 量を V1, V2, ・・・V(n+Δ) とすると,X(n+Δ) - xn = [V(n+Δ) - Vn](N/5) となり,ln[x(n+Δ) - xn] = -ktn + 定数' となる。
したがって,ln[V(n+Δ) - Vn] を tn に対してプロットした直線の傾きから,k が求まります。
いかがでしょうか。酢酸エチルでも同様に可能だと思います。ただし,これは教養化学の学生実験の話です。tarachan424 さんの目的によっては使えないかも知れません。
No.4
- 回答日時:
物質量の経時変化から速度定数を求めるのであれば、触媒反応や並行反応よりも不可逆的な一次反応を選ぶべきです。
例えば加熱によりA→Bに変化する反応など。こうした反応をモデルケースに選べば速度定数測定を比較的容易に学べますし、速度定数と測定温度から活性化自由エネルギーの算出、数点の温度で速度定数を計測しΔG=ΔH-TΔSより活性化エンタルピーや活性化エントロピーを算出できます。詳細は物理化学の教科書を参照してください。個人的に勧める反応速度論の本としては最近改訂版が出た慶伊富長先生の本や、これは絶版になってしまいましたが荻野博先生が訳された本などが挙げられます。こうした書物の中に例として取り上げられている反応の中に適切な実験例が示されているかもしれませんね。
No.3
- 回答日時:
専門外ですが、素人発想として・・・。
反応条件も分かりませんが、サンプル採取時間と測定時間のズレが、反応速度解析する際に気になりますね・・・(誤差の問題?)?
酢エチでは難しいでしょうが、ストップドフロー法のような方法で測定は可能なのでしょうか?
⇒分光学的な測定は難しいでしょうね・・・?
恐らく、古い文献があるように思いますが・・・?
データベースの文献検索でもHitするかどうか難しいでしょうね?
「反応速度論」関連の成書を丹念に見て探せれば良いのですが・・・?
ご参考まで。
No.2
- 回答日時:
反応速度論は専門外で自身無しなんですが,最初に加える酸触媒の量を考慮すれば,中和滴定で生成した酸の量を求める事は可能だと思います。
これが実際に応用可能かどうかは,tarachan424 さんが行う反応の規模やどれぐらいのタイムスケールで反応を追うかによると思います。
誤差に関しては,HIMADESU さんの回答の通りで,あなたの目的でどこまで許せるかの問題だと思います。
No.1
- 回答日時:
酢酸エチルをどういう条件で加水分解するつもりなのでしょうか?水を入れて加熱しても、簡単には加水分解しないと思います。
通常は、何らかの酸を触媒にして加水分解するのでは?とすれば、中和滴定は、ちょっとやりにくいでしょうね。大学レベルであれば、ガスクロなどのクロマト系の分析法が簡単だと思います。誤差に関しては、目的によって変わります。反応速度をどこまで正確に把握したいのか、それによって許容される誤差は異なります。また、その許容される誤差によって、分析方法を含めて、全体の実験方法も考えなければいけません。誤差は「どこまでなら認められる」のではなくて、「どこまでなら認める」のです。その誤差を含んだ上で、実験結果を考察していかなければなりません。
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