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 形式的に会社名義の債務について、支配株主にも責任追及できる場合があるとする周知の理論ですが、実務的にこの考え方で、支配株主個人を被告にして勝訴判決を取ろうと思ったら、請求の原因にはどのような事実をあげないと、いけないものでしょうか?
 たとえば、「本件会社は、被告の一人会社であり、会社は被告と別個の法人格としての実体を持っていない」これだけで足りるものでしょうか?
 それとも、「取締役会が開かれていない」、「会社の財産と被告個人の財産はその収支が混同されている」など、あるいはそれ以外に何か必要でしょうか?
 経験者の方のご回答を希望します。

A 回答 (4件)

 私も、結論的には、tk-kubotaさんのNo.3のご回答とほぼ同意見です。

以下、ご質問の事案の原告がchakuroさんご自身であるという前提でご説明申し上げます。

1 被告がchakuroさんご主張の事実を争った場合の立証方法
 No.1の回答で指摘させていただいた事実は、いずれも原告であるchakuroさんに立証責任があります。
 以下、No.1の回答の2(2)でご説明申し上げた法人格無視の徴表事実を例にとって、立証方法をご提案します。
(1) 株主総会・取締役会が開催されていないこと
 被告において株主総会や取締役会が開催されていたことを反証しようとしない限り、擬制自白(民事訴訟法159条1項本文)ないしは弁論の全趣旨(同法247条)によって、株主総会や取締役会が開催されていないことを裁判所に認定させることができます。

 被告が支配株主であるとすれば、数回分程度の株主総会議事録や取締役会議事録を入手し(株主総会議事録・商法244条3項、4項、263条2項。取締役会議事録・同法260条の4第4項、非訟事件手続法126条1項、132条の8)、これらを書証とすることで、「株主総会・取締役会が開催されていない」とのchakuroさんのご主張に対して容易に反証をなし得るはずです。
 そうすると、このような反証すらしないとすれば、被告はchakuroさんのご主張を争うことを明らかにしない(民事訴訟法159条1項本文)と評価されるでしょうし、そうでないとしても、容易なはずの反証をしないという意味で、弁論の全趣旨(同法247条)としてしん酌されると考えられます。

(2) 業務ないし財産が混同されていること
 No.1の回答が舌足らずであったかもしれません。申し訳ありません。
 これらの要件は、「混同」という法的評価概念を含んでいますから、実際には、「業務ないし財産が混同されているとの評価を基礎づける具体的事実」が主張立証の対象となります。
 例えば、支配株主の自宅と会社の本店とが同じ電話番号であるとか、支配株主が社用車等の会社財産を日常的に利用しているとか、支配株主の会社に対する債権債務について取引関係書類が作成されていない(この事実の立証も、(1)と同様の方法によります。)といった具体的事実を主張立証することになります。

2 規範的要件の主張立証の構造
 「業務ないし財産が混同されていること」のような法的評価概念を含む法律要件(*1)は、「あの事実とこの事実があれば、業務ないし財産が混同されていると認められる」といった具合に定式化することが困難です。そのことは、逆に、一つ二つ立証に失敗した事実(評価根拠事実)があっても、なお当該要件の具備が認められ得ることを意味します。
 そうすると、chakuroさんとしては、訴え提起前に、例えば「業務ないし財産が混同されているとの評価を基礎づける具体的事実」(評価根拠事実)をできる限り収集されたうえで、立証の難易を考慮しつつ、どの事実を主張してゆくこととするのかをご選択になる必要があるわけです。

 他方、被告側は、抗弁として、「業務ないし財産が財産が混同されているとの評価を妨げる具体的事実」(*2)、例えば、支配株主が社用車を利用した場合は会社に利用料が支払われているといった事実を主張立証することができます。
 そして、裁判所は、chakuroさんが主張立証された評価根拠事実と被告が主張立証した評価障害事実とを総合考慮して、業務ないし財産が財産が混同されていると評価できるかを判断することになります。

 以上、ご参考になれば幸いです。
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*1 このような法律要件を「規範的要件」といい、規範的要件の主要事実、すなわち、規範的要件があるとの評価を基礎づける具体的事実を、「評価根拠事実」といいます。
*2 このような規範的要件があるとの評価を妨げる具体的事実を、「評価障害事実」といい、規範的要件の不存在により利益を受ける当事者(=相手方当事者)が立証責任を負います。
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>下記#1のかたと同様の追加質問、よろしければご回答お願いいたします。



原則として立証責任は原告にあります。しかし、例えば、「貸した金を返せ」との訴えで、被告が「借りた覚えがない」と云うなら原告で被告差し入れの「借用書」などをその証拠書類として提出する義務を負います。これとは逆に、借りてもないのに「支払え、支払え」と云うので「債務不存在確認訴訟」を提起したとすれば、原告が「借りていない」と云っているわけですから、「借りていない証拠」はありません。その場合は、被告で「このとおり貸しているではないか」と原告差し入れの「借用書」などの提出義務を負います。
このように、原告でも被告でも、自己の主張を証拠によって説明します。
本件は「法人格否認」を考えていますが、上記の例では後段に該当すると思います。しかし、実務的に「法人格否認の訴え」と云う訴訟は存在しないと思います。何故なら、先の例と違って原告に利益がないからです。従って、chakuroさんは実践方法を聞いておられるわけですから、私の云う、会社を無視し個人を相手とし、そのなかで争うなら法人格を否認すればいいとおもいます。その場合、当然ながら、被告で取締役議事録や各種の帳簿類などの提出義務を負います。
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例えば、chakuroさんがAと云う会社に金銭を貸し付け、それを回収しようとして勝訴判決を得ても会社には財産がなく、むしろ、A会社の社長であるaと云う個人に財産があると云う場合、A会社を否認してaに対して請求できないものか? と云うことであれば、直接にaを被告として、「被告は原告に対して○○万円支払え。

」との判決を求めてはいかがでしよう。その場合に被告が「それは会社が借りた金で個人が借りたわけではない。」と云う答弁で初めて「法人格否認の法理」によって「取締役会が開かれていない」、「会社の財産と被告個人の財産はその収支が混同されている」などの理由で法人格を否認していいかがでしよう。 
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この回答へのお礼

早速の回答ありがとうございます。ところで、下記#1のかたと同様の追加質問、よろしければご回答お願いいたします。

お礼日時:2002/01/08 02:52

 結論的には、「法人格が濫用されていること」、あるいは、「法人格が形骸化していること」という法的評価を基礎づける具体的事実を請求原因事実として記載すべきです。



1 「評価根拠事実」
 実体法規は法律要件と法律効果の組み合わせで成り立っていますが、この法律要件に該当する具体的事実のことを、「主要事実」(要件事実)といいます。
 例えば、「当事者の一方が自己の財産を無償にて相手方に与ふる意思を表示」することと「相手方が受諾を為す」ことは、いずれも贈与契約(民法549条)の法律要件であり、「AさんがBさんに『パソコンを買ってあげよう』と言うこと」と「BさんがAさんに『ありがとう、嬉しいな』と言うこと」は、いずれも主要事実です。
 そして、原告が主張立証すべき請求原因事実は、このような主要事実です。

 ところで、民法110条の「正当の理由」や同法709条の「過失」のように、事実ではなく法的評価概念が法律要件とされている(ようにみえる)場合がありますが、この場合に主要事実となるのは、「法的評価そのもの」ではなく、「法的評価を基礎づける具体的事実」であるというのが、実務上支配的な見解であるとされています。
 民法110条の「正当の理由」を例にとりますと、原告が越権代理による契約の成立を主張しようとすれば、「原告にはA氏(=無権代理人)に契約締結の権限もあると信ずるべき正当な理由があった」と主張するのみでは足りず、「A氏は被告の実弟であり、被告の実印を携行していた。さらに、原告が本件契約の締結にあたって被告に電話をかけて問い合わせたところ、被告は、『その件は弟に任せている』などと説明した。」というように、原告に「正当な理由」があるという評価を基礎づける具体的事実を主張する必要があるわけです。

2 法人格否認の主張方法
(1) 法人格の濫用の場合
 法人格の濫用とは、会社が株主の意のままに支配されており(支配の要件)、かつ、支配株主に違法または不当な目的がある(目的の要件)ことをいいます。
 そうすると、法人格の濫用を主張するには、「会社が株主の意のままに支配されているという評価を基礎づける具体的事実」と「支配株主が有している(違法または不当な)目的」を主張する必要があるわけです。

(2) 法人格の形骸化の場合
 法人格の形骸化とは、会社が実質的には株主の個人営業であることをいいます。
 そして、裁判例の多くは、株主が会社を完全に支配していることに加えて、
・ 株主総会・取締役会が開催されていないこと
・ 株券が発行されていないこと
・ 株主と会社の業務が混同されていること
・ 株主と会社の財産が混同されていること
などの、法人形式が無視されていることを徴表する事実があってはじめて、法人格の形骸化が認められるとしています。
 そうすると、法人格の形骸化を主張するには、「被告が会社の全株式を保有していること」を主張するだけでは足りず、上記のような法人形式無視の徴表事実を具体的に主張する必要があるわけです。

 以上、ご参考になれば幸いです。
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参考文献:江頭憲治郎『株式会社・有限会社法』31頁以下
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この回答へのお礼

早速の回答ありがとうございます。ところで、上記の主要事実を相手方が、争ってきた場合、主張責任はどちらにあるものでしょうか?原則は利益を受ける、原告側にありそうなのですが、取締役会を開催していることについては、被告側にちゃんとやっている証拠を提出してもらうという形でないと、「ないことの証明」というのは難しいと思うのですが・・・。また、逆に財産の混同については、原告としては「あることの証明」なので、原告のほうで立証できないと厳しいでしょうか?

お礼日時:2002/01/08 02:50

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