「抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一であること」
は法定地上権の成立要件のひとつであります(388条)。
では、
「抵当権設定当時は同一人に帰属していたが、設定後に所有者が別人になった場合」に法定地上権は成立するのでしょうか??
普通、学術書には抵当権は法定地上権を前提に設定されているから、当然に成立すると書かれています。あと、約定利用権を設定しても、抵当権に劣後するからだとも。
しかし、よく考えると二つ目の理由はおかしいのではないでしょうか??
以下細分化して考えます。
(1)土地に抵当権が設定された場合、その後土地または建物が譲渡されると、当然何らかの約定利用権が土地に設定されるでしょう。
土地の抵当権が実行され、土地が別人の所有に帰してしまった場合、果たして建物所有者は約定利用権は主張できないのでしょうか??
確かに、約定利用権は先に設定されていた抵当権に劣後しますが、一方で、通説は従たる権利はその設定の時期を問わずに付加一体物として扱い、抵当権の効力が及ぶとしています。とするなら、土地についていた約定利用権もまた存続するのではないでしょうか??
ここが私が一番疑問に思っているところで、この土地利用権は建物にとってはまさに従たる権利ですが、土地にとっては従たる権利などではなく、いってみれば従たる義務でしかないとも考えられます。そこで、
抵当権の効力が及ぶ「従たる権利」とは何なのか?詳しくは、権利とはいえないような義務にまで及ぶのか??
というのが今回の一番の悩みどころです。
(2)建物に抵当権が設定された場合、その後土地または建物が譲渡されると、当然何らかの約定利用権が土地に設定されるでしょう。
建物の抵当権が実行され、建物が別人の所有に帰してしまった場合には、土地と違って建物には確実に「従たる権利」である約定利用権が存在し、それにまで付加一体物として抵当権が及ぶので、建物所有者に法定地上権を成立させなくてもよいのではないでしょうか??
以上二点について、ご教授のほどよろしくお願いします。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
>土地に抵当権が設定され、その後土地または建物が譲渡され、地上権ないし賃借権が土地に設定されたとします(もちろん登記済み)。
民法を勉強されている方のようですので、あえて申し上げますが、登記がなくても、地上権や賃借権(借地権)を第三者に対抗できる場合があることを借地借家法の条文で確認してください。
>なるほど、約定利用権が地上権や賃貸権ではなく使用貸借権の場合に問題になるということですね??
使用貸借の場合だけ問題になるわけではありません。地上権と違って賃借権の譲渡は、原則として設定者の承諾が必要であるということを忘れてはなりません。また、賃料不払を理由に、地上権の消滅請求をする場合と、賃貸借契約の解約告知をする場合とではどちらが容易か考えてみてください。その違いがわかっていないと、賃借権つき建物より法定地上権が成立する建物のほうが評価が高くなるのか理解することはできません。
また、仮に約定利用権が地上権であったとしても、約定地上権が無償なのか有償なのか、有償だとすれば地代はいくらなのか、存続期間はどのくらいなのかによって、法定地上権の成立より不利になることもあります。なお、法定地上権の地代は、当事者間の協議が調わなければ、申立により裁判所が決定します。
>登記された地上権や賃貸権は誰に対しても主張できるのではないですか??
抵当権設定登記より後に登記された(借地借家法上の対抗要件を具備した)地上権や賃借権がその抵当権に対抗できるのですか。基本書で民法第177条のところをもう一回良く読んで下さい。
>結局は法定地上権がつくことが予期されているから、裏切ることにはならず抵当権者には何の不利益もないのでは??
既述のように、約定利用権の存続期間や地代、賃料の定めによって、土地所有者に不測の損害を与える可能性があります。
様々なご指摘、ありがとうございました。
自分の勉強不足さがよくわかりました。
また、質問させてください。
ご教授ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
こんにちは。
「抵当権設定当時は同一人に帰属していたが、設定後に所有者が別人になった場合」ですね。
(1)土地に抵当権が設定され、実行された場合
・建物所有者…抵当権設定後~抵当権実行前までに設定した敷地利用権は、登記されていたとしても、必ず抵当権に劣後します。よって土地競落人に対抗できません。
なお、利用権は「建物についての」従たる権利なのですから、「土地の」抵当権の効力が及ぶ及ばないの問題ではありませんね。
(2)建物に抵当権が設定され、実行された場合
抵当権実行前に設定していた敷地利用権は、建物について従たる権利であるため、建物に設定した抵当権の効力が及びます。従って、建物競落人は利用権を取得します。その利用権が土地所有者に対抗できるなら、(法定)地上権をわざわざ設定されたとみなす必要はなかったはずです。ここはおっしゃる通りですね。
A)取得した利用権が地上権である…法定地上権は、抵当権の実行により、法律上の権限を失った建物の存続を保護するための制度です。この場合は、すでに土地所有者に対抗できる地上権が成立しているのですから、改めて「地上権が設定されたものとみなす(388条)」必要はありません。
B)取得した利用権が賃借権である…賃借権登記の有無を問わず、建物競落人は「賃借権の譲受人」と扱われます。賃借権の譲渡の場合、土地所有者の承諾か、承諾に代わる裁判所の許可がないと、土地所有者に対抗できる賃借権とはなりません。よって、法定地上権を成立させる意味が出てきます。
C)取得した利用権が使用貸借に基づく場合…下の回答者様が述べています。
なるほど、取得していた約定利用権の違いによって、なるほど、法定地上権の成立意義に差がでてきますね。
ご教授ありがとうございました。
No.1
- 回答日時:
>この土地利用権は建物にとってはまさに従たる権利ですが、土地にとっては従たる権利などではなく、いってみれば従たる義務でしかないとも考えられます。
土地(の所有権)にとっては従たる権利ではないのですから、「土地」に設定された抵当権の効力が、約定利用権に及ばないことは明らかですよね。
>建物の抵当権が実行され、建物が別人の所有に帰してしまった場合には、土地と違って建物には確実に「従たる権利」である約定利用権が存在し、それにまで付加一体物として抵当権が及ぶので、建物所有者に法定地上権を成立させなくてもよいのではないでしょうか??
例えば、約定利用権が使用貸借による権利(以下、「使用借権」という。)の場合はどうですか。建物の所有権が移転すると言うことは、使用借権も移転すると言うことですが、貸主が同意しない場合はどうなりますか。土地の所有者(貸主)が土地を売却した場合、新所有者に対して使用借権を対抗することができますか。借主が死亡した場合、使用貸借契約はどうなりますか。
この回答への補足
早速のご回答ありがとうございます。
>土地(の所有権)にとっては従たる権利ではないのですから、「土地」に設定された抵当権の効力が、約定利用権に及ばないことは明らか
というのはその通りですね。
>例えば、約定利用権が使用貸借による権利(以下、「使用借権」という。)の場合はどうですか。建物の所有権が移転すると言うことは、使用借権も移転すると言うことですが、(1)貸主が同意しない場合はどうなりますか。(2)土地の所有者(貸主)が土地を売却した場合、新所有者に対して使用借権を対抗することができますか。(3)借主が死亡した場合、使用貸借契約はどうなりますか。
なるほど、約定利用権が地上権や賃貸権ではなく使用貸借権の場合に問題になるということですね??
使用貸借の場合、
(1)584条により、土地所有者に契約を解除される→主張できない
(2)使用貸借権は賃貸権、地上権と違って登記できない→主張できない
(3)599条によってその効力を失う→相続人等は主張できない
という問題がおこってきますね。
確かに、ここらへんの問題は見過ごしていました。ありがとうございます。
そこで、新たな疑問がでてきたので質問させてください。
土地に抵当権が設定され、その後土地または建物が譲渡され、地上権ないし賃借権が土地に設定されたとします(もちろん登記済み)。
そして、土地の抵当権が実行され、土地が別人の所有に帰してしまった場合、建物所有者に法定地上権が認められるのはわかりました。それは、元々あった地上権ないし賃借権が土地(の所有権)にとっては従たる権利ではないから、「土地」に設定された抵当権の効力が、それらに及ばない結果、新たな土地所有者はそれらの負担をおわないから、建物所有者のために法定地上権が必要ということですよね??
とするなら、そもそも従たる権利云々のまえに、なぜに
「約定利用権を設定しても、抵当権に劣後する」
という命題が成立するのかが疑問になります。
登記された地上権や賃貸権は誰に対しても主張できるのではないですか??
抵当権設定当時にはそのような利用権がなかったのだから抵当権者の期待を裏切るといっても、結局は法定地上権がつくことが予期されているから、裏切ることにはならず抵当権者には何の不利益もないのでは??
→よって、土地に抵当権が設定され、その後土地または建物が譲渡され場合、約定されたのが地上権・賃貸権の場合は問題にならないのではないか??
法定地上権が成立すると割り切っても、上記のことが頭から離れません。くだらないかとお思いになるでしょうが、初学者ゆえの疑問としてご教授ください。
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