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詐害行為取消権の折衷説の場合で被告を受益者としてた場合に、詐害行為の要件は、行
為者の詐害意思、受益者の悪意ですが、行為者の詐害意思はどのように認定するのでし
ょうか?
参考人として事情聴取等を行うのでしょうか?

A 回答 (1件)

詐害行為取消権は、その主観的要件と客観的要件の


多さにあきれてしまいますよね。たった一条の条文で
債務者の悪意。受益者の悪意、転得者の悪意、
そしてさらには無資力要件、そして財産上の権利を目的
とするか、詐害行為取消権の対象は法律行為か、裁判
上の行使か、これだけでも検討する要件は非常に多い
です。

何故これだけ多いのか。民法には所有権絶対の原則が
ございますよね。もともと債務者が有している資産につい
てその処分をするのは、債務者自身の自由である。だか
ら他の人がそれに干渉できるというのでは、所有権の価
値が相対化してしまう恐れがあるから、できる限り他人の
干渉を排除しなければなりません。

しかし、その債務者に債権者がいるような場合、債務者
自身の判断で財産の処分を任せてしまうと、債権者をわ
ざと害するようなそんな処分の仕方をしてくる人もいるわ
けです。

このような場合に、さすがにそれは債権者も、債務者の
財産の処分に口出しをさせてあげないとまずいだろう。と
いう考えから424条の詐害行為取消権は誕生しました。

この経緯はとても大切です。

さらに債権者が干渉できるとはいえ、実際にそういう行為が
あったのかどうか、債権者の一存で判断させてしまうと、結局
債権者の恣意的な判断により、あ、あいつは俺を困らせる目
的で手放しやがった。ということで文句をいくらでもいえるよう
になってしまいます。訴害行為取消権を認めたことにより、逆
に債務者の立場を著しく弱くしてしまいますから、裁判上で
実際にそのような行為があったかどうかを判断してもらうことに
なります。

次に、裁判所のステージで審査される↑に述べた要件は極
めて厳格ですよね。判断しなければならない要件が非常に
多いことに気づかれると思います。このように厳格な要件を
債権者に要求することによって、本当にそのような行為があ
ったのかどうか、を判断し、債務者の所有権を保護している
と言えます。

もちろん、債務者の取引を信頼した受益者と転得者の保護
もカバーしていると言えるでしょう。

この点判例は、「債務者が債権者を害する事を《知ってした》
という行為に対して、積極的な害意があるという場合には、本
当に自己の債務を弁済するためであるような場合にも、阻害
行為を成立させてしまったり、逆に単に「あ、今この土地手放
すとあの人に返す分なくなっちゃうなぁ。っていう認識のみで
あれば、今度は、極端にその債権者を避けるような弁済の仕
方をするなど、主観と客観を混ぜ合わせて、総合的な考量を
して、要件を認定しています。これも主観を、害意をにおわせ
るような弁済の方法ですけどね。特に後者の例を
判例は「他の債権者との通謀」と表現しています。

まとめますと、詐害意思を認定するというのは、客観的な行為
からもその意思をにおわせるものであるかどうかによっても違
ってきており、「お前こういうつもりやったんやろ?」とか、取調
室で行われるような主観への積極的調査というよりは、先ほど
も申しました通り、債務者の行動からも判断します。

そしてこれは詐害行為取消権の折衷説であろうとなかろうと
違いはありません。折衷説というのは、詐害行為取消権って
いうのは、一体どんな権利なんだ?という論点から生じてくる
ものです。条文をよくご覧になってください。要件はがちがちに
書いてあるけど、「請求することができる。」と書いてるだけで、
実際どんな効果が発生するのかわからないでしょ?

普通の取消権と比較してみてください。例えば、未成年者
取引の取り消し権、詐欺、脅迫の意思表示の取り消し権
の場合、未成年者、あるいは意思表示者は取り消し権を
行使し、契約の取り消しをします。そして効果としては遡及
効ですよね。

これと詐害行為取り消し権も同じ権利だ。という主張が
形成権説です。取り消し権と同じように、効果が遡及し、
債務者が今までした受益者、転得者間の取引も
初めからなかったことになり無効となる。
この説は、明らかであるように、「取り消し権」という文
がつかわれていることに注目しています。で、先ほど
詐害行為取り消し権って裁判上で必ず起こす権利だ
といいましたよね。ですから、その裁判上の効果につ
いても明らかにしています。
形成権である。といっています。

まぁ批判はたやすくわかるように、取引の安全を阻害
します。転得者まで物が流れてしまうと、また債務者の
ところに戻さないといけなくなる。転得者からのさらに
転々得者となれば正直めんどいです。
だからやっぱり転得者も返すのめんでぇ~っておもう
わけです。ですから裁判で返しなさいと言われても返
さない場合もあるでしょう。しかも、「詐害行為取り消し権は
あくまでも他人の財産に干渉する権利ですから、その権利
を行使した後については、なお債権者はその債務者の財産
に干渉することができないんです。ここ大事です。債権者が
債務者の財産に干渉できるのは、あくまでも「取り消し権を
行使するとき」だけであって、その後その取り消し権がどう
いう効果をもったとしても、債権者はそれに口出しをするこ
とができないのが「原則」なのです。ですから形成権はわざ
わざ、「債務者が転得者に有している不当利得返還請求権を、
債権者が代位行使できるから、それによって債権者は自分
の債権の満足を図るべき。」
といっています。正直いって、めんでぇ。

しかしこれが一番わかりやすい学説でしょうし、これがどういう
学説なのか正確に理解することが詐害行為取り消し権の折衷
節を理解するのに重要なポイントです。

次、請求権説ていうのがありますね。これは詐害行為の、
取り消し権という性格から180度距離を置いた学説、いわば
形成権説の対局に位置する説です。受益者とか転得者に
対して、まず、その財産を債務者に渡しなさい。返しなさい。
と請求します。そしてその裁判上の訴訟は、給付訴訟です。
裁判官は、受益者らに、
債務者に○○を引き渡せ。と命令する訴訟になります。

しかしこれって何を取り消してるんでしょうか?はい。形成
権説から真っ先に批判がきます。
取り消しっていう名前を全く無視している。と。
さらに言えば、これも大切。債務者が受益者に何らかの債
権を持っていまして、それを免除したとします。すると、受益
者はそれだけで「受益者」になります。そして、財産の
変動は、外見的には全く生じていません。こういうとき、請求
権説だと、○○を返せ。なんて言えなくなってしまい、確かに
詐害行為なのに、何も訴えられなくなってしまうのです。
ちなみに、請求権節は、形成権説に対して相対的無効です。

さて、きました。折衷説。折衷の意味からお分かりの通り、上
の2つの説をミックスした説。これが折衷せつです。しかしど
れとどれをミックスするのか。まず、債務者に○○を返せ。
これを請求権説からゲット。次に、取り消します。しかし
相対的無効であって、財産の返還を請求するのに必要
な範囲です。ほぼ、請求権説より。になりますね。

いい点は、一応取り消しという文を守っている。そして、
責任財産の保全、↑にご説明しました通り、できるだけ
債務者の処分権限に立ち入らない。だから、必要な範
囲で。としています。さらに、絶対的無効だと取引の安全
がやばいので、相対的無効にしましたー!って感じです。
まさにいいとこどりです。しかし、折衷説の悪いところは、
悪いところもちゃんと折衷しちゃうってところでしょうかねぇ
。w。そうでなくてもなんか問題出てきます。

ではこれで一体どうなるんでしょうか。折衷説に立った
場合の効果は?まず、債務者に○○が戻っちゃいます。
んで、請求した相手との間で、無効になります。これは理解
されているんでしょうけどね。

しかしやはり批判が。相対的無効ですから、「債務者との
関係では無効ではない。」んですよね。じゃあ何で債務者
に○○が帰ってくるのか。それが一応相対的無効からす
る道理であるとしても、債務者からすれば、売ったはずの
物がまた無償で戻ってきただけなんですね。だから、○○
を戻した受益者や転得者は、私がその財産に対して支払
ったお金を返してください。とはいえなくなっちゃいます。

だから、本当は受益者の物なのに債務者の物として扱わ
れる。何でだろう。って
ことになるわけですね。お分かりいただけたでしょうか(^益^)

(補足)責任説。
これは一番魅力的な説です。しかし文言とか制度とか無視
しまくってるドイツの学説です。
詐害行為は責任財産の保全。というのが趣旨でしたね?
例えば詐害行為取り消し権を
受益者に対して請求します。すると、その受益者の持っている、
債務者から購入したその財産が、そのまま、責任財産になっ
てしまいます。これを「責任的無効」と呼んでいますが、この話だと、
え?何が無効なの?って思いますよね。たぶん、債務者の責任は
なくなるよ~ってことでしょうね。債務者の責任が~受益者の責任
になるってことなんでしょうかね。すいませんここについては
勉強不足です。
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この回答へのお礼

懇切丁寧かつ論理明快な回答をありがとうございます。

沿革からの説明とても分かりやすく感服いたしました。

私が一点、未だ、ひっかかっておりますのは、民法ということよりも民事訴訟法の問題
なのかもしれません。
民事訴訟法をよくしりませんので、新たに、民事訴訟における当事者について質問を
させていただきなす。
その節は、ご都合がよろしければ回答をいただけますと幸いです。

お礼日時:2011/06/17 17:58

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