萩原朔太郎さんの詩集を読んでいてわからないところがありました。その詩を、とりあえず、引用したいと思います。 「かぎりなく白き器物を懐かしむ されど器物はものいわず うつはを抱けばしんしんと 白きつめたさ身にしみぬ とまれ かくまれ ものいわぬうつは よしなよし うつはめづる そのこころ やがて おみなのくみめづるなり」 この文章の「ものいわぬうつは よしなよし」の「よしなよし」とはどのような意味なのでしょうか?辞書を引いても、この言葉は載っていませんでした。もしかしたら、萩原朔太郎さんの遊び心なのかもしれませんが、私の頭がかたいためにか推測出来ません。また「おみなのくみめづるなり」の「おみなのくみ」とは、くみという名前のおみな(女)と解釈するのは正しいでしょうか?
説明が下手な上に幼稚な質問で大変申し訳ありませんが、回答して頂けましたら、嬉しいです。よろしくお願いします。
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
度々すみませんNo.4です。
今回は前回の補足として回答しています。先ず、前回はとんでもない誤字に気付かぬまま投稿してしまったので、お詫びしたいと思います。
荻原朔太郎ではなく、「萩原朔太郎」ですね。…お恥ずかしい限りです。
それと、
>これは、偏執的に無機質な陶器を愛する男性の歌と捉えると、本来のものとは方向性が違ってしまうと思います。
――と前回は直感というか女性の願望的視点で断定的に書いてしまいましたが、本当のところ、偏執的に無機質な陶器を愛する男性の歌であり、その自分を受け入れてくれる女性をも夢見た心情を描いたものと捉えるのが、一番素直な解釈ではないかと思い直しました。
この詩だけでは謎が多く、“本来のもの”がどういったものか迄は言及は出来ないな…と。
ご質問にないことまで言及したのは不味かったなと思います。
一番謎に思うのが、この詩に登場する「おみな」とは、まだ見ぬ女性なのか、既知の存在であるかどうかということです。
「おみな」がどういった存在なのかで、「おみなのくみめづるなり」の解釈が変わってくるというのがこの詩の面白いところであり、想像を掻き立てられる部分でもあります。
「おみな」がまだ見ぬ作者の想像だけの人物であれば、人物よりも白い器に対する思い入れが勝っている様に思えます。
そうなると、“かぎりなく白き器物を懐かしむ ”そんな、自分の全てを受け入れてくれる女性を夢見ている(恋に恋する歌)と取れます。
しかし、“おみな”とは、実在した既に見知った人物のことであるのなら、詠み人は白い器とその女性を重ねてみていたという解釈が可能です。
口下手で上手く意思疎通できない世渡り下手な男性が、白い器を思わせる美しさを持った女性に惹かれる思いを歌ったものとして解釈したのが、前回の私の回答です(白い器を愛しつつ、その器を思わせる女性にも惹かれているという解釈です)。
ここで断りをしたいのですが、前回も今回も、議論を目的に書いたものではなく、この詩が誕生したとき、「おみな」がまだ見ぬ人なのか、思慕の対象として実在していたかで解釈が変わってくるということを述べたものであるということです。
ですから、私が前回、回答しました詩の背景については、一つの解釈として参考程度に止めてください。
詩そのものの語句に関する解釈については、前回のもので誤りはないと思います。
*****
本来のご質問からは逸れますが、宜しければ、こちらも併せてお読み下さい。
質問者さんは既にご存じかもしれませんが、参考資料としてリンクを貼っておきます。
1.【僕の孤独癖について/萩原朔太郎】http://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/1792_ …
2.【萩原朔太郎】http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%90%A9%E5%8E%9F% …
2には作者の生い立ちや交友歴が載っていますが、1は特に作者自身の言葉ですから、どういう人物であったのかを考えるとき、非常に参考になると思います。
1では、萩原朔太郎さんが、子供の頃や青年期において強迫観念が強かったこと、神経質であったことで苦しめられたということが綴られています。
1を読むと作者は長らく孤独にあった人だということが解るし、「かぎりなく白き器物を懐かしむ」という思いの深さは、常人が想像する以上のものだろうと思われますし、同時に人恋しさも汲んで取れます。
すると、ご質問にある詩を解釈するとき、やはり、そこに登場する「おみな」とは、まだ見ぬ女性なのか、既知の存在であるかどうかで趣ががらりと変わって来ます。
解らないところがまた、幻想的な趣をこの詩に与えていて魅力を増していると言えます。
“おみな”がどういう存在だったのか解ればスッキリはするけれど、解らない謎の部分を残した方が、詩は面白いなと思いました。
こんなにも長く詩の解説をして頂き、本当に嬉しいです。
「おみな」という存在は、神秘的で、いったい誰なのだろうか?と自分もずっと考えていました。でも、この存在が明らかにならないからこそ、魅力的なのかもしれないですね・・・。
私は無知なので、聡明なるmist_green様のようにこの詩の深いところまで、解し得ないのですが、やはり萩原朔太郎さんの詩にとりつかれてしまいました。
また、質問した時には回答して頂ければ嬉しいです。
No.4
- 回答日時:
途切れ途切れで読むよりも、一気に読んだ方が解釈しやすいので、詩を口語訳してみました。
「限りなく白い器を愛しく思う。けれども器は何も応えてはくれない。器を抱けば、しんしんと白い冷たさが身に染みる。とにもかくにも、物言わぬ器よ。良いんだ、良いんだ。器を愛するその心、やがて、おんなが汲んで愛することであろうよ。」
これは、偏執的に無機質な陶器を愛する男性の歌と捉えると、本来のものとは方向性が違ってしまうと思います。
愛する女性その人を、無機質な物に例えることで、すれ違う切なさを詠んだ歌だと思いました。
荻原朔太郎さんの当時の背景を知っていればまた、詩の解釈が変わってくるのでしょうけれど、私は朔太郎さんが言葉を返してはくれない、凛とした美しさを持つ冷たい陶器と己が心を寄せる女性を重ねて見ている、片思いの恋を詠んだものだと思います。
>「よしなよし」とはどのような意味なのでしょうか?
[【よしなに】よい具合になるように。よいように。適切に。/引用元:『大辞林』]
これは、「よしなによしなに」でも良かったのだと思いますが、言葉を歯切れ良く流れ良くすることで、寂しい思いを振り切るような、力強い効果を狙ったのだと思います。
おそらく作者が、「いいんだ、これでいいんだ」と自分に言い聞かせているのでしょう。
「良いように、良いように考えろ!」と気合いを入れているんだと思います。
>「おみなのくみめづるなり」
これは、
「おみな=女」
「くみめづる=汲み愛づる=(私<詠み人>の思いを)汲んで愛する=私の愛に応える」
という解釈になると思います。
No.3
- 回答日時:
あくまで私見ですが。
「な」を感動・詠嘆を表す終助詞と捉えても面白いかもしれません。
「良いな~。うん良い・・・」といったニュアンス。
「おみなのくみめづるなり」は#2さんが回答されてるように「女が汲み愛ずる」でしょう。
汲む対象は「うつはめづる そのこころ 」です。
ものも言わず冷たいだけの器を愛しむといった風変わりなわたしの心を理解し(=汲み)、わたしのその感覚を愛してくれる(=めづる)、そんな女性もやがて出現するはずだ。
という意味に解釈してみました。
ナルシスティックな感覚が基調になっているように思います。
No.2
- 回答日時:
「よしなよし」 の 「よしな」 は、よく 「どうぞ よしなに」 という、あの 「よしな」 ではないかと思います (「よしなに」 はたいていの辞書に出ていると思います)。
だから、「よしな」 も 「よし」 も、ほぼ同じ意味で、音を重ねているわけです。歌うような調子が出ています。
「ものいわぬうつは」 ではあるけれど、それはそれで愛着が湧くし、愛情を注ぎたくもなり、いとおしさも覚える、といったふうなことを述べているという印象を受けます。
「おみなのくみめづる」 は、「女の汲み愛づる」 ということで、その器で水か何かを汲むという、器本来の用途のことを述べていると解せられます。
器を愛でるという行為は、乙女がその器で何かを汲む姿を彷彿とさせる、という含みか。
回答して頂きまして、本当にありがとうございます。 詳しい説明で、やっと理解出来ました。 萩原朔太郎さんの詩は、深く読んでゆくと、やはり美しく感ぜられます。 また、質問した際は、回答して頂けると嬉しいです。
No.1
- 回答日時:
>とまれ かくまれ ものいわぬうつは よしなよし
私の持っている氏の詩集には入っていませんでした。
「よしな」 は古語辞典によれば、不都合のないよう、うまくいくよう 「よしなに計らいください→うまくいくように…」 という意味です。
それで
あまり自信がありませんが、この部分は
”いずれにしても ものを言わない器はうまくあつかえばいいものだ(なあ)”
というほどの意味のように思えます。
>おみなのくみめづるなり
女のくび(首から上、もちろん顔も含める)、あるいは 躯(く) と 身 つまり 女体を婉曲にあらわしているのだと思います。
あくまで私見です。
回答して頂きまして、誠にありがとうございます。
もう一度、字引を引いてみたら「よしなに」確かに載っていました。 「よしなよし」は巧みに音の調子を会わせているんだなぁ、と考えると、古い時代の詩人は感性があるとつくづく感じてしまいます。
おみなのくみ を女のくびと考えると、なんだか官能的な匂いがして、引き込まれちゃいます。
ちなみに、引用文は、新潮文庫の「萩原朔太郎詩集」(河上徹太郎編)の草稿詩篇から抜き出しました。
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