No.5ベストアンサー
- 回答日時:
フロリゲンというホルモン自体は、未だに発見されていませんが、
花を咲かせるのに必要な遺伝子は既に発見されています。
それが#3で少し触れたFT遺伝子です。
#2のsuiranさんがご紹介されているページに詳細が書かれています。
全部読まなくても、「1. 6. (4)半世紀以上にわたる謎「フロリゲン」の実体は何か?」だけでもご覧下さい。
また、そのページで紹介されている
瀧本敦氏著『花を咲かせるものは何か』
も、興味をお持ちでしたら、一読されると良いと思います。
ついでですが、「化学と生物」という雑誌の2000年12月号に、そのページを作った荒木氏の記事があり、
「FT蛋白質がペプチド性のシグナル分子の前駆体として機能している可能性がある」
と説明があります。
なお、京大のページが最後に更新されたのが2001年12月なので、
今では、もっと多くのことが明らかになっていると思います。
この分野は、日進月歩の感があります。
専門家でない私には、満足な解説は出来ません。
最初のクリプトクロムの質問から内容が変わっていますが、改めて別に質問し直してはいかがでしょう?
クリプトクロムのことは分からなくても、花成遺伝子のことなら分かる、という人がいらっしゃるかもしれません。
色々ご教示頂き有難うございます.
勉強する材料がたくさん揃いましたので,消化不良を起しそうですが,ボチボチ勉強してみることにします.
No.4
- 回答日時:
>ところで,イチゴのような短日植物に青い光を当てると長日期に花芽をつける可能性はあるのでしょうか?
正直なところ、予測すら出来ず、実際に栽培してみないと分からないと思います。
光の当て方によっても(明期中の補光、暗期中断、サイクリック、終夜照明、他)、反応が異なることがありますし。
同じ短日植物のアサガオ(限界日長14時間)では、青色光を1日当たり14時間照射しても、
花芽を着けたという研究報告があります。
赤色光を1日当たり14時間照射した場合は、花芽を着けなかったそうです。
この場合、青色光で花芽を着けたと言うだけで、花芽分化が早まったことは証明されていません。
また、アサガオの例が、そのままイチゴにも当てはまるとは限らないと思います。
イチゴは、他の短日植物と違って、暗期中断による花成阻害が起こり難いとも聞きます。
イチゴを青色光で栽培した例がありますが、花芽分化後に照明したようです。
赤色光や遠赤色光がイチゴの花芽分化に及ぼす影響について検討した研究もありますが、
どれも、花成を促進させることが出来なかったようです。
もしかしたらご存知かもしれませんが、
植松徳雄氏の「イチゴ栽培の理論と実際」誠文堂新光社・1998年
には、赤色光と遠赤色光(本文中は近赤外光)を組み合わせて照射した例が紹介されていますが、
これも、花芽分化が早まったとは言っていません。
>もし可能なら,短日処理という面倒な作業が省略できて百姓は助かるのですが.
四季成りイチゴなら、短日処理をしなくても、この時期にも果実を着けますよ。
ただ、高温のせいで、品質がいまいちですが。
四季成りイチゴの栽培は、寒冷地が向いているのでしょうね。
回答頂き有難うございます.
イチゴに特定の光を当てて花芽を着けるには,色々難しさが伴い,どうも簡単には出来そうも無いですね.四季成りイチゴは,patentがかかって自家増殖が許可されていないものが多いのと,ご指摘のように味が今一つで・・・・・
ところで,私が学生のころに確かフロリゲンという花成に関係する植物ホルモンが仮想されていたように記憶します.
最近の研究では,フロリゲンの実態について議論があるのでしょうか?
No.3
- 回答日時:
「植物関係の雑誌」とのことで、「Plant Phsiology」とか「The Plant Cell」
といったような専門誌のことかと思いました。
また、「、。」の代わりに「,.」を使っていることや、
一般の方からクリプトクロムの質問があるとは思わなかったので、
「学生のレポートかな?ちょっとは勉強しろ!」くらいの気持ちで
回答していました。すみませんでした。
科学系の雑誌を読んでいらっしゃるようですので、一応、
ある程度の知識をお持ちであることを前提にして説明し直します。
それと、私は、この分野に関しては、昔、文献を漁ったことがあるものの、
専門家ではないので、勉強不足・誤解・知識が古いこと等があると思います。
また、本来は、タンパク質はローマン体、
遺伝子が欠損した変異体は小文字のイタリック、野生型は大文字のイタリック、
で表記するという約束事がありますが、今回は、そのような区別はしませんでした。
ご了承下さい。
先ず、CONSTANS(CO)ですが、これは、開花関連遺伝子の一つで、
欠損した変異体では長日条件下で開花が遅くなります。
COの前にはGIGANTEA(GI)、後にはFLOWERING LOCUS T(FT)という開花関連遺伝子があり、
GI→CO→FTのように光周性シグナルが伝達され、FTが活性化されると花成が促進されます。
ここでは、GIとFTの説明は省略します。
CO遺伝子の発現は概日リズムに依存し、そのmRNAの発現は、
明期の中間期に減少し、明期の終了前から暗期にかけて最も高くなります。
そして、明期中にCOタンパク質が十分にある場合にFTを誘導することが出来ます。
クリプトクロム(CRYPTOCHROME)は、ギリシャ語で「crypto(隠された)+chrome(色素)」
という意味で、もともとは、100年以上前にダーウィンによって調べられた光屈性に関わる色素として、
その存在が予想されていたものの、1993年にようやく発見されたことに因むそうです。
青色光の受容体で、概日リズムに関与し、光同調に関わる光受容体の一つであるといわれています。
先の回答のように、アラビドプシスではCRY1、CRY2の2種類があります。
植物の他、ヒト(hCRY)、マウス(mCRY)、ショウジョウバエ(dCRY)にも
クリプトクロムと似た配列の遺伝子があることが知られています。
アラビドプシスの場合、CRY1、CRY2とも生物時計に関与しているそうですが、
花成に関わっているのは、CRY2と言われていて、
CRY2が欠損した変異体では長日下での開花が遅れたり、
CRY2を過剰に発現させるようにした変異体では短日下での花成が早くなることから、
CRY2遺伝子は、日長に対する感受性を減少させることが考えられています。
後は、昨日の繰り返しになりますが、
>CRY2によるCOの発現制御については、
>PHYBが赤色光下でCOを抑制するのに対し、
>CRY2は青色光下でPHYBを抑制することでCOの発現を上昇させ、花成を促進させます。
で、PHYBは、フィトクロムB(PHYTOCHROME B:アラビドプシスではA~Eの5種類が知られています)
のことで、花成を抑制することが知られています。
suiranさんの
>クリプトクロム2とフィトクロムAという2種類のタンパク質が
ですが、最近の海外の論文にそのような内容の物があるようですが、
(suiranさんが仰っているのは、
Yanovsky, M. J., et al. 2002. Molecular basis of seasonal time measurement in Arabidopsis. 19 September: 308-312.
だと思いますが)
そこまでは手を出していませんので、これの詳細については、ご勘弁下さい。
該当論文の要約を読む限りでは、「FTの発現に関わるCOの活性化は、クリプトクロム2、あるいは、
フィトクロムAを通じた光の受容を必要とすることを証明した」物のようです。
入手出来るかどうかは別として、邦文の文献には、以下のような物があります。
古谷雅樹氏著「植物は何を見ているか」岩波ジュニア新書408・2002年・岩波書店
(http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/50/3/5004080.html)
ジュニア(中・高校生)向けとは言え、内容は比較的専門的。クリプトクロムの発見の経緯について触れられていますが、花芽形成との関わりについては、たぶん、書いてなかったと思います。
以下は、専門的な内容です。
和田正三氏ら監修「植物の光センシング」植物細胞工学シリーズ16・2001年・秀潤社
(http://www.shujunsha.co.jp/book/4-87962-/244-3.h …)
恐らく、一番詳しいと思います。
岡田清孝氏ら編集「植物の形づくり」蛋白質核酸酵素・2002年9月号増刊(第47巻第12号)・共立出版
(http://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookhtml/0805/0025 …)
概要について、約1ページ分の解説があります。花成については、関与するとあるだけで、詳しくはありません。
今泉貴登氏ら「植物における青色光受容体」蛋白質核酸酵素2001年7月号・1228~1237ページ・共立出版
(http://www.kyoritsu-pub.co.jp/pne/libs/2001/usua …)
細胞内分布、信号伝達、体内時計との関わり等について、約4ページ分の解説。
横井修司氏ら「日長による植物の開花制御」蛋白質核酸酵素2004年2004年1月号・28~35ページ・共立出版
(http://www.kyoritsu-pub.co.jp/pne/libs/2004/usua …)
GI、CO、FTと、それらと相同の働きをする遺伝子の解説で、クリプトクロムについては数行書いてある程度です。
解説有難うございます.
説明された内容が高度なため,十分には理解できませんが,私なりに理解出来たところもありました.
花芽が形成されるためには,青い光が関係していて,その青い光を感じるのがCRY2で,その作用の仕組みが遺伝子レベルで判りつつあるわけですか(!?).スゴイごとですね.
紹介頂いた文献平易で手に入りそうなものを読んでみることにしました.有難うございます.
ところで,イチゴのような短日植物に青い光を当てると長日期に花芽をつける可能性はあるのでしょうか?
もし可能なら,短日処理という面倒な作業が省略できて百姓は助かるのですが.
ご意見を置きかけ下さい.
No.2
- 回答日時:
日経サイエンスに以下の紹介があります。
これがご質問の元ではないでしょうか。すみませんがコピーはしましたが,アドレスはコピーし忘れました。探しても見つかりません。<(_ _)>「多くの植物は,夜の長さを感知して,開花時季を測っていますが,長日植物であるシロイヌナズナでは,実際に光周期を測っている遺伝子が見つかりました。(nature 9/19日号)
シロイヌナズナは,すでに全ゲノムが解読されていて,遺伝子研究が進んでいる,おなじみのモデル植物です。
今回,シロイヌナズナが時間を測ることができるのは,CONSTANSという遺伝子のおかげであることが分かりました。
CONSTANSは午後に活性化し,クリプトクロム2とフィトクロムAという2種類のタンパク質が,CONSTANSと同じ時間帯に光を検出すると花が咲く仕組みになっているようです。」
植物屋さんのramurameさんよろしくお願いします。
tamfさん,下記URLは京都大学のものです参考になりましたなら。
参考URL:http://cosmos.bot.kyoto-u.ac.jp/Araki-Lab/
有難うございます.たしかに日経サイエンスであったように思います.
京都大学のURL覗いてみました.内容を理解するためにはかなり勉強しないといけないようですね.
No.1
- 回答日時:
具体的に、何の記事(論文?レビュー?)のことか分かりませんし(ご自分で読むのがベストだと思います)、
tamfさんがどの程度の知識をお持ちなのか分からないので、簡単なことだけを。
フィトクロムが、赤色光/遠赤色光の受容体であるのに対し、
クリプトクロム(クリプトクローム)は青色光の光受容体です。
シロイヌナズナでは、CRY1とCRY2の2種類があることが確かめられていて、青色光によって花成が促進されます。
CRY1、CRY2とも、胚軸の伸長成長、概日リズムの制御、他に関わっていますが、
CRY2は、CO(CONSTANS)の発現に関わっていることと、
CRY1より弱光下で機能していることも知られています。
CRY2によるCOの発現制御については、
PHYBが赤色光下でCOを抑制するのに対し、
CRY2は青色光下でPHYBを抑制することでCOの発現を上昇させ、花成を促進させます。
また、青色光下で、CRY1とCRY2が協調して働き、花成を促進させる経路もあるそうです。
この回答への補足
回答・解説有難うございます.
質問について補足します.記事の掲載された誌名は覚えていませんが,一般向けの自然科学雑誌(「遺伝」とか「日経サイエンス」とか)のコラムで短いもので,ずいぶん前です.
私の知識レベルは,農学部卒(但し,卒後30年は経過しています)の百姓です.
回答の中で,また新たに判らない言葉が出てきました.co(constans)とは・・・?
教科書か解説記事をご紹介願うほうが早道かもしれません.
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