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義親を介護する新たな金銭的メリットになるか?「特別寄与料の請求」について弁護士に聞いた

義親を介護する新たな金銭的メリットになるか?「特別寄与料の請求」について弁護士に聞いた40年ぶりに相続法(民法)が改正され、令和元年7月1日から「特別寄与料の請求」が認められるようになった。

超高齢化社会の日本において非常に重要な意味合いを持つ改正だが、なぜだか世間の関心はそこまで高くない。それはそもそも特別寄与そのものに対する理解不足も一つの原因ではないだろうか。「教えて!goo」にも「遺産相続について教えてください。」と義両親の介護をして看取った妻の相続の件で家業を継いだ長男から質問が投稿されていた。今回は特別寄与料の請求について、弁護士に取材し、弁護士の解説を交えながら記事にしてみた。

■キーワードは「寄与」と「特別寄与」の違い


話を伺ってきたのは富士見坂法律事務所の井上義之弁護士だ。そして話を理解する上で、キーワードとなるのが「寄与」と「特別寄与」の違いだ。

登場人物:夫婦、夫の父親(母親はすでに他界)、夫の兄弟
相続人:夫、夫の兄弟

例えば妻が夫の父親を介護し、その後その父親が亡くなったとする。妻の介護は寄与にあたる。寄与とは亡き父親への生前での貢献を表す。しかし法律上、このような寄与は相続人しか評価されない。そして相続人は夫と夫の兄弟だ。つまり相続人ではない妻が、どれだけ介護(寄与)に尽くしたとしても父親の相続では一銭ももらえない。

寄与:相続人による被相続人への貢献
特別寄与:相続人ではない人による被相続人ヘの貢献

「被相続人(父親)の子(夫)の妻は、(被相続人と養子縁組していない限り)相続人ではありませんので、改正前の民法では、被相続人の療養看護に尽くしていても寄与分を主張することができませんでした。実務上は、相続人である夫の寄与分として妻の寄与を考慮するなどして公平に配慮していましたが、夫が被相続人より先に死亡し、夫婦間に子もないというようなケースではそうした解決もできませんでした。新設された『特別寄与料』は、そうした不具合を解消し、公平な相続を実現するためのものです」(井上義之弁護士)

誤解を恐れずにいうと、配偶者の親の介護をいくら頑張っても、一銭ももらえなかったのが、今後はいくらかもらえるかもしれないということになる。

■寄与と特別寄与のそれぞれの具体例


寄与とは亡くなった人に、生前どれだけ尽くしてきたか、貢献したかを意味する。では具体的にはどんな寄与、特別寄与があるのだろうか。

「民法904条の2第1項は、相続人が『被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与』をした場合に『寄与分』が認められる旨規定しています」(井上義之弁護士)

【寄与の具体例】

・家業従事型:農業など家業への従事によって被相続人の財産の維持・増加に寄与したケース
・金銭等出資型:医療費や施設入所費用、不動産購入資金などの援助によって被相続人の財産の維持・増加に寄与したケース
・療養看護型:病気療養中の被相続人の介護に従事することによって被相続人の財産の維持・増加に寄与したケース
・扶養型:同居して衣食住の面倒を見るなどの援助によって被相続人の財産の維持・増加に寄与したケース
・財産管理型:不動産の賃貸管理や立ち退き交渉など被相続人の財産を管理することによって被相続人の財産の維持・増加に寄与したケース

「『特別寄与料』については、民法1050条第1項が『被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与』をした場合に『特別寄与料』が認められる旨規定しています。『寄与分』と異なり『特別寄与料』では『寄与』の態様が労務の提供に限定されており、財産上の給付が含まれていないことに注意が必要です」(井上義之弁護士)

【特別寄与の具体例】

・被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与

特別寄与が認められるのは看病や介護に限られるということは覚えておいたほうが良いだろう。

■特別寄与料の請求の注意点


最後に特別寄与料を請求する上で注意すべき点を井上義之弁護士に伺いまとめてみた。

・「特別寄与料」を認められる者が法律上の親族に限定されており内縁配偶者等は含まない
・「寄与」と認められる範囲が「寄与分」より狭い
・特別寄与料の支払いを求める者は、相続人との協議が整わない時、または協議ができない時、家庭裁判所に対して「協議に代わる処分」を請求できますが、法律関係を早期に安定させるため、相続の開始および相続人を知った時から6カ月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは請求できなくなる。

特別寄与についての基礎知識は以上である。

■特別寄与は事前に認めておいてもらうことが重要


特別寄与料が請求できるようになったことで、現在介護をしている人と、今後その予定がある人の多くは金銭的な見返りを期待するだろう。しかしそこは注意が必要だ。

なぜなら請求できるからとは言え、期待通りの金額がもらえるとは限らないからだ。また亡くなった後に特別寄与料を主張すると、家族関係にヒビが入り、争続に発展する可能性もある。

こういったリスクを回避するために、介護をする人を親族で話し合って決めると良いだろう。そしてその時の話し合いで「介護をする人には特別寄与料を認める」など、具体的な金額も含めて取り決めておいてもいいかもしれない。

公平な相続を実現するために始まった本制度。始まったばかりではあるが、新たな争続の火種とならないよう願うばかりだ。

●専門家プロフィール:弁護士 井上義之 事務所HP ブログ

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