■犬と猫のひげの違い
まず、犬のひげと猫のひげの違いについて聞いてみた。
「犬は主に顔周りの空間認識にひげを使っています。猫のひげは平衡感覚、空間認識、感情表現など多くの情報をひげから送受信しています。猫の場合、前足の裏側にもひげがあることで全身の動きに影響を与えますが、犬のひげはそこまで明確に機能があるわけではありません」(寺内さん)
多くの猫は自分の手入れをするから人の手はあまり必要ないが、トリミングをしている犬は多い。ひげのカットについて聞かれることもあるようだが、犬のひげは切ってもよいということなのか。
「犬はトリミングでひげを切られても、その後の生活が変わることはほとんどありません。しかし、ひげを切られるのを嫌がることもあるし、特に高齢犬では視力が低下していることも考えられます。そのような状況では、ひげも外界を知るための大切な機能である可能性があります。本来あるべき機能を見た目のためになくすのか、その判断は飼い主に求められます」(寺内さん)
寺内さんによると、顔の手術を受ける時など、切らざるをえないこともあるので、状況により飼い主が判断すべきなのだという。
■犬のひげの機能とは
犬のひげは、猫のひげに比べ機能性はそれほど高くないようだが、どのように役に立っているのか確認しておいた。
「犬のひげは、目の上、マズル(鼻)周り、そしてあごの下にあります。草や藪で目を傷つけてしまわないように目の上のひげ(上毛)がセンサーの役割をしています。また、食事や食器の位置は多くの犬種の場合、直接目で確認することができないため、嗅覚とひげの感覚器官を使って確かめているようです」(寺内さん)
退化してしまうひげもあるという。
「ボーダーコリーの子犬は、目の上に太くて長いひげが目立ちます。しかし成長とともに、ある程度伸びきると自然に抜け、その後生えてきません。アクティブな子犬を守る機能なのかもしれません」(寺内さん)
犬種にもより、ひげに特徴があるとのこと。
■あまり知られていない犬のこと
犬のひげのことをあまり知らなかったという人もいたのでは。そんな犬について、他にも知られてないことはないか寺内さんに聞いてみた。
「小型犬の生涯には350万円ほどかかると計算されています。飼い主にとって初めての犬の場合はもっとかかります」(寺内さん)
盲導犬などの特殊な犬でなくても、そんなにお金がかかるとは驚きだ。
「ですが、犬との信頼関係、愛情関係が築けると、犬と人の生活はこの上ないものになります。人は言葉を持たない犬のことを、より理解して察することができるよう、努力する必要があるでしょう」(寺内さん)
今回教えてもらったひげについてもそうだが、犬も人を必要としていることが分かった。
寺内さんによると一緒にドッグスポーツをしたり、競技会に参加したりするなどの目標を持つと人と犬の一体感がより強まるそうだ。身近な生き物だけに、知っているつもりにならず、関係をよりよいものにしたい。
●専門家プロフィール:寺内雄司
東京都八王子市で犬と人の学び場ポケットを運営。家庭犬訓練士やホリスティックペットシッターの資格を持ち、ドックトレーニング、ペットシッター、ペットホテル等トータル的なサービスを行う。ホテルは最高ランク3つ星を受賞。