No.6ベストアンサー
- 回答日時:
No.3の方がおっしゃっている「文学性」ということで説明できると思います。
また、他の方も述べられているように、「声」にした必然性については、確かに音韻上の好ましさもあると思います。
それに加えて、「鐘の声」という言い方は、平家物語の作者にとっては、けっして珍しいものではなかったということがいえると思います。質問者が違和感をお感じなるとしたら、そういう文学的な表現にお慣れになっていないということが理由としてあげられるのではないでしょうか。
たとえば、サーチエンジンの「googole」で「かねの声」で検索してみると、
「水のおもてもさやかにすみたるをそなたのしとみ あけさせて見いたし給へるにかねの声」(源氏物語・椎本)
「三昧たうちかくてかねの声」(源氏物語・明石)
「けふすぎぬいのちもしかとおどろかす入あひのかねの声ぞかなしき」(新古今和歌集・1955)
など、平家物語に先行する作品の用例が見られます。
同じく「鐘声」で検索すると、
「月落烏啼霜満天、江楓漁火対愁眠、姑蘇城外寒山寺、夜半鐘声到客船」(中国・唐の張継の漢詩)
「観音寺只聴鐘声 」(菅原道真・不出門)
といった、有名な漢詩の例がヒットします。
中唐の詩人で、平安時代の日本の貴族たちに親しまれた白楽天の、有名な「琵琶行」という作品にも、鐘ではなくて琵琶ではありますが、「忽聞水上琵琶声、主人忘帰客不発、尋声暗問弾者誰」という表現がみられます。
これらの漢詩も、いずれも平家物語以前に詠まれたものですから、「鐘の声」という表現は、「平家物語」を書こうとするくらい文学に親しんでいる作者にとっては見慣れ、聞き慣れた表現だったといえるのではないでしょうか。
源氏物語の他にも新古今和歌集、中国・唐の張継の漢詩にも
「鐘の声」が使われていたのですね。
作者にとっては見慣れ、聞き慣れた表現だったから、
「鐘の声」で表現したことがわかりました。
ありがとうございました。
No.9
- 回答日時:
皆様の意見の補足ですが、用例として新古今和歌集では
音=ね
恋ひわぶと聞きにだに聞け鐘の音にうち忘らるる時の間ぞなき 和泉式部(平安中期)
※異本では「をと」
音=おと
暁のなみだやそらにたぐふらむ袖に落ちくる鐘のおとかな 慈円(平安末期鎌倉初期)
待たれつる入相の鐘の音すなり明日もやあらば聞かむとすらむ 西行(平安末期)
暁とつげのまくらをそばだてて聞くもかなしき鐘の音かな 俊成(平安末期鎌倉初期)
声(No.6さん検索以外)
待つ宵に更けゆく鐘の声聞けばあかぬわかれの鳥はものかは 小侍従(平安末期)
があり、それぞれ使われております。
私見ですが、No.1、No.5,No.8さんの回答の音に諸行無常の意味を持つから、声なのではないでしょうか。
No.7
- 回答日時:
こんにちは。
私の個人的な解釈ですが・・・。
この場合、考えられる表現は
(1)音(おと)
(2)音(ね)
(3)声
だと思います。
(1)は風の音、鐘の音など、比較的大きい音+音響一般
(2)は楽器の音、人の泣き声、虫の鳴き声などに使われたようです。
(3)は人や動物の音声を表現していました。
まず(2)だと、平家物語の独特のリズムが崩れてしまうので却下です。
(1)については、その他に「噂、評判」という意味があるので、諸行無常を訴える鐘にしては俗的なように思えました。
(3)は、平家物語以外にも楽器での使用用例があり、源氏物語に
「琴の声、風につきてはるかにきこゆるに」
とあるので、情緒的な場面では使われるのではないかと思います。
(この場面は源氏が須磨に半ば流罪のようになり、都を恋焦がれる巻です)
自分の憶測なので、間違っているかもしれません。
長文、乱文失礼致しました。
確かに音(ね)だとリズムが崩れてしまいますね。
声は源氏物語でも琴の声で、鐘の声と同じように使われて
いるんですね。勉強になりました。
ありがとうございました。
No.5
- 回答日時:
一つの私見として・・・。
「音」だと物理的な概念に収斂されてしまい 「ただの自然現象的なもの」になってしまって聞く人に対する訴求力が弱くなるように思えます。つまり 意思や意志を持たない 「ただの物理的存在が発する物理的現象」として捉えられることになりかねないのではないか・・・。
一方「声」と表現すると 「意志と意思を以って相手に何かを訴えかけていく」という 擬人的で生々しく 且つ主体的・情緒的な意味合いを帯びてきます。自らの思いを外に向かって発信していく・・・。
そういう観点から 「祇園精舎の鐘」は ある思いを持って「人の世は【諸行無常】であることを訴えている」ということを表すためには ここは「音」ではなく「声」であることが 表現上 必要だったのだと考えます。そして それは作者の意図的なものではなく 優れた表現力と文章に対する感性が本能的に選び採らせたものだと推測します。優れた表現者は極く自然に 自身の表現したい内容に相応しい言葉を見つけ出してその位置に書きつけるものです。
ここで「音」ではなく「鐘の声にした必然性」というのも 作者の物語作家としての優れた感性と表現力からすれば 極く自然に納得できるのです。
No.4
- 回答日時:
No.1です。
ここからは僕個人的な解釈である事を先に述べておきますね。
この無常堂の鐘の音は特別なのでしょう。
(釈迦の説法の行われた寺院の鐘ですから、仏教世界においてはかなり特別なものになると思います)
特別な鐘の音だからこそ擬人化して『声』に。そしてそれは後に続く【諸行無常の響き】にかかってお互いの意味が強調されて…。
このあまりにも有名な冒頭文。このくだりは単独で存在するわけではなく、平家物語のテーマとも言える部分をも含んでいると思います。
だからこそただの鐘の音ではなく、『声』なのではないでしょうか。
私も素人ですので…是非とも専門家や大学などで専攻した人の意見を聞いてみたいですね。
No.3
- 回答日時:
それは、「文学性」という言葉で片がつくと思います。
有名な、奥の細道の冒頭「月日は百代の過客にして・・・」方丈記の冒頭「行く川の流れはたへずして・・・」徒然草の冒頭「つれづれなるままに日暮らし・・・」のそれぞれの言葉がなぜそれなのか?って考えたことはないでしょ?「声」に「音」の意味がある以上、それはそのまま受け入れましょう。その時代のその作者が、選び抜いた言葉なのですから。No.2
- 回答日時:
No.1さんの回答の通りかと思います。
また、平家物語が書物によって広まったのではなく、琵琶法師(?)の語りによって広く伝わった成り立ちを考えると、言葉の意味より、言葉の韻や響き、語り易さといった要素の方が重要ではないでしょうか。
私も個人的には「かねのおと」と「かねのこえ」を口に出して比べると、「の」と「お」は続けては言い難く、一つの音節になっちゃいそうですが、「の」と「こ」は言い易く、はっきりした音調が漢文調の雰囲気にぴったりなような気がします。
あ、うちの相方は「音」だとただの「ゴーン!」という鐘の音を想像するけど、「声」にすることでこれからの平家の宿命を鐘が哀れんでいるかのような「ご~・・ん・・・」という寂しげな鐘の音を感るそうです。
素人二人の意見でした。
No.1
- 回答日時:
こえ こゑ 1 【声】
[一]
(1)人間や動物が発声器官を使って出す音。虫の場合は羽などを使って出す音。
「―を出して本を読む」「虫の―」
(2)(生き物に見立てていう)物の立てる音。
「風の―」「鐘の―」「雪の解けて筧を伝ふの―/不二の高根(麗水)」
(3)言葉にして表した考えや気持ち。
「読者の―」「非難の―」「国民の―を聞く」
(4)あることが近づく気配。
「秋の―」
[二]
(1)漢字の音(おん)。
「初めは―に読む、後には訓(よみ)に誦す/今昔 12」
(2)言葉の調子。
「―などほとほとうちゆがみぬべく/源氏(東屋)」
《三省堂提供「大辞林 第二版」より》
〔一〕の(2)の…生き物に見立てて言う…の意味からも、『声』でまったく問題ないかと。
僕個人的な感想からも、『声』の方が響きが良いですね。
この回答への補足
ご意見ありがとうございます。
どうも鐘を擬人化して 音 を 声 にする意味合いが
感じられないのですが、、、。
ここまでくると、個人の感じ方の問題になってしまうのですが、、、。
私が作者なら、擬人化する特別の理由がないので鐘の音にします。
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