福知山線の事故の書類送検の短い記事を見ましたが、事故の起こった箇所にATSが設置されていなかった事が問題だったという、良く意味のわからない報道がされていますが、正しくはどういう事なのでしょうか。
基本的にATSは追突防止かと・・・
曲線制限も含めた自動列車制御を行うものは何と言うもので、これを導入している在来線はどういった所でしょうか。
人は間違いを起こすものという考えに立てば ATC等も有効でしょうが、根本的には乗務員が異常行動に走ったのはなぜかという点が重要かと思うのですが、
どうにもこの報道が的を得ていない様なのですが・・・
No.6ベストアンサー
- 回答日時:
現在のATSの基本的な役割は、信号の現示に従い列車を安全に停止させることと、急カーブ手前等特定の箇所(信号の無い箇所も含む)において列車の速度を照査し、列車の過速度を防止することです。
前者の機能の基本は国鉄時代に出来ていましたが、これらのATS(ATS-S、ATS-B)は赤信号の警報は出すものの列車を信号に従い減速させ停止すること自体は運転士任せという、ある意味危険性を帯びたシステムになっていたのが現実です。
この、停止操作が運転士に全面的に委ねられているというシステムの欠陥を衝く形で起こった事故が、1988年12月に起こった中央線東中野駅追突事故と翌1989年4月に起こった飯田線北殿駅正面衝突事故で、この信号冒進で引き起こされた2件の事故の反省から、ATSのシステムに改良が加えられ、これによって登場したATS-Sx形は絶対信号(赤信号)を冒進するとただちに非常制動がかかるような機能と、上記の後者の機能、つまり時素式速度照査機能を持つ合わせ持つようになります。
JR西日本のATS-SWも速度照査機能を持たせてあり、地上子の配置を適切に行っていれば過速度が検知された時点で非常制動がかかるような機能になっています。
その後、このATS-Sxを改良し、地上子からの各種情報や自車の照査速度、制動性能などから列車の減速・停止パターンを算出し、信号現示による減速・停止までも制御するようにし、ATCとほぼ同等の機能を持たせたものが現在汎用的に使用されているATS-Pです。
さて、今回の事故のあった福知山線は、国鉄時代にATS-Sが整備され、事故の時点ではATS-SWが整備済み、さらに、事故の起こる数ヵ月後にはATS-Pが整備される予定になっておりました。
つまり、報道にあった「ATSが未設置」「ATSがあれば事故を防げた」というのを言葉どおりに解釈すれば現実と食い違っていることになります。
ここの部分、本当のところは「急カーブであるのにATS速度照査地上子が未設置」「ATS速度照査地上子が設置されていれば事故は防げた」となるのが正しいのでしょうが、大半の記者は基本的にこのような鉄道知識については素人ですし、たとえ記者に知識があったとしても特集記事でもない記事にこのような難しい内容を載せると読者が混乱するうえ、別にATSの解説欄まで必要となってくるなど弊害もあるので、このような言葉足らずな内容になっているのだと推測されます。
また、この福知山線事故は、これまでの事故報道とは非常に異なり、事故を起した運転士が、事故前に取った行動の遠因となったものまでが様々と報道されたのが特徴的でした。
しかし、今回行われた書類送検では、こういった遠因となったものは因果関係が薄いとされ、検察に起訴を求めない「しかるべき処分」となっているのに対して、「ATS未設置」問題が刑事処分の判断を地検に委ねる「相当処分」となっています。
質問者さんは、おそらくこの部分についても釈然としない思いを抱いていると思われますが、結局のところ、当事者と事故との因果関係を立証する難しさが如実に現れているのがこの部分だと思います。
警察は、事故の原因となった様々な証拠を集め、これらの証拠によって事故と関係者との因果関係を調べ上げ、「書類送検」によってこれらの証拠等を起訴のための資料として検察へ送致するのですが、この送検の時点で事故との因果関係が立証しやすい(=起訴しやすい)ものと、し難いものの差が出てきます。
今回の書類送検では、この立証の難しさの差があるために、(立証しやすい)ATS未設置問題が表に出てきたのでしょう。
もちろん、事故防止の観点から言えば、乗務員が異常行動に走った遠因を究明し、それを今後の事故防止策につなげていくというのは非常に重要です。
日本のこれまでの事故調査では、事故を起こした当事者や関係者の処分が優先され、当事者を処罰してしまえばそれでおしまい、事故の背景となった部分の究明や事故防止に繋がる改善については二の次もしくは放置といった風潮が大きかったのですが、今回の事故ではこの事故の背景の部分にまで焦点が当てられたのは非常に大きな進歩であったと思っています。
事故というのは些細な異常の連鎖から生まれます。
逆に言えば、この負の連鎖をどこかで断ち切ることが出来れば未然に事故は防げるのです。
今回の事故でも、事故の遠因、つまり負の連鎖の欠片となったものが数多く出てきました。
これらの事がらを解明して今後の事故防止に生かし、二度と同様の事故を起こさないとともに、事故の芽を摘むことが今回の事故で亡くなった多くの犠牲者に対する最大の手向けではないでしょうか?
ありがとうございます。
この疑問の本質はそこにあります。
何せ鉄道も工学系ならよいのですが、法律の方になるとわからないのです。
ご丁寧な解説で、納得しました。
ズバリのご回答なので、特に付け加える事はありません。
しかし陪審員制度は困ったもんです。
私のような素人を召集して開くというのですから。
話が脱線するようですが、つながる話であります。
No.7
- 回答日時:
ご質問の文章を読み返しました。
私の考えをお伝えします。
>人は間違いを起こすものという考えに立てば ATC等も有効
ATCも人間が作ったものです。限界があります。昭和47年の鳥飼事故が有名です(鳥飼事故の詳細は,古い話ですが柳田邦夫氏の著書他をご参照ください。私が信号を勉強する原点となった本です)。
根本は,運転士の気質ではないか,と思っています。指導運転士の教え方,スキルアップに無理はないか,など,管理者側に属する問題点が多くあります。「おかしい」とおもったら立ち止まる"勇気",これが鉄道事業者全般で考えてもらいたいことです。定時運転も大切ですが,問題点を見逃さないスキルも大切です。
>根本的には乗務員が異常行動に走ったのはなぜかという点が重要かと思うのですが
私も日ごろ鉄道を利用していますが,運転士は自己の列車運行に注視していて,自分の運転する列車に関与しない事象(指令からの一斉連絡など)については,「関係なし」として平然と運転している姿をよく見かけます。
確かに,列車運行に係る連絡と,営業に係る連絡(たとえばディズニーランドの入場制限などが最たる例)がおなじ無線で流れてくることにも問題です。
ただ,なにか流れてくれば聞き耳を立てるというのは,運転士に限らず誰にでもあること。列車運転中は気持ちを集中させる,関係あり/なしを瞬時に判断する能力をトレーニングをしていくことが大切だと思っています。
ありがとうございます。
小田急を引き合いに出したのも、保安機能の差のみならず、「気質」の差を考えるのですが、それもやはり酷かと思いますので、聞き流して頂いてよいかと思います。
素人にはわかりませんが、路線バスの運転の方が余程神経をすり減らすでしょうから、しかし、気持ちの集中は持っていただきたいですね。
余談ですが205系時代の山手線で、下ろした幕の隙間から見てみたら、運転士がカラオケの歌詞カードを置いていたのにはあきれました。
103系時代から比べれば、ブレーキも駅停止時だけの扱いで、随分楽にはなったのでしょうが、踏み切りもないし・・・
(区別があやしいので、あえてATCとかの表現を避けてみました)
No.5
- 回答日時:
事故の場所は、路線変更で急曲線になり、その時に速度制限が厳しくなりました。
急曲線で速度超過が有った場合、危険なのは明らかです。危険度が増したにも関わらず、速度超過が起きないような安全装置の設置は行われませんでした。
鉄道事業者の上層部が危険と思っていなかったとは考えにくく、危険な状態であると認識しながら放置したという事と、設置されていたらあの事故は無かったと考えられる事から、安全対策を怠った結果、事故を招いたという結論になります。
上層部が責任を問われるのは当然と考えます。
新たな他社連絡線が急な半径で作られたり、新たなポイントを渡る様になる変化はこれからも起こるでしょう。
その際、速度照査を付けなければならない、という意味になったら、本質とずれかな、と思った次第です。
訓練運転を義務付ける、であればまだわかりますが。
それは多分やっていると思いますが。
No.4
- 回答日時:
>私が通学で利用していた小田急線ではオーバーランは経験がありません。
西の阪急、東の小田急は典型的な例で、理由はそれぞれですがオーバーランしにくい=速度照査が厳しい という特徴があります。
小田急の場合、近年まで新旧いろいろな車種をつなげられるようにしており、その結果ブレーキなどの性能を統一していました。このため、列車ごとのばらつきがなく、速度照査しやすい環境いあります。
コレに対し、JRの線路はさまざまな列車、たとえば東海道本線では旅客列車と一千トンもの貨物列車が同じ線路を走るため、一定の基準ですべての列車を運転することができません。このため、速度照査に消極的であった背景があります。
※ポイント通過時の速度照査を除く
No.3
- 回答日時:
こんにちは。
首都圏で電車運転士をしております。個人的には、
ATS-Pでなくても、急曲線箇所などにピンポイントで設置できる速度照査(SC)が有れば、まず防げた事故です。
確かに運転士の過失も重いのですが、保安装置整備を疎かにし、会社の乗務員の管理体制と、乗降時間の配分の誤りと不適切な運転曲線だった事実が何よりも問題であり、問われなければならない点だと思います。
遅れの出る運転曲線と、それに基づいたダイヤ編成。
しかし、遅延を発生したら処分があるという管理体制は問題であり、当然事故列車の運転士を精神的に追い込んでいたと推察されます。
********************************
現在、JRでATSの無い路線はありません。
質問者様の仰るように、
ATS→Auto Train Stop
・・・・でして、
○追突防止の為の安全装置。
○電車を止める為のモノ。
・・・・になります。
速度照査は別のモノになります。
ATC(Auto Train Control)になります。
ATCというと、車内信号方式が一般的なのですが、車内信号方式はATCの中の「CS-ATC」というモノになり、車内信号方式でないATC(WS-ATC)も存在していました。(開業時の地下鉄日比谷線・東西線)
国鉄に採用された最初のモノは、
○赤信号が近づくと警報が鳴るだけ
・・・のモノだったのですが、お分かりの通りこんな物では何の役にも立たず、過去の事故の反省から、
○警報が鳴る→非常ブレーキを動作させる
・・・というモノになりました。
昭和40年代に国鉄全線に設置完了しています。
実は、改良された後のATSでも、「確認ボタン」を押した後は運転士頼みのモノでして、つい最近まで、国鉄(JR)のATSは危ないシロモノだったのです。
JR東日本は、東中野駅での追突事故で反省し、ATS-Pという新しいATSを開発しました。
このATS-Pは、
○速度照査機能を持つ。
○停止信号手前に絶対に止める。
○停止信号・速度制限の位置、勾配、距離等の情報を地上装置・地上子から列車へ伝送し、列車ではその情報に基づき、自車の制動性能と走行距離から刻々の上限速度を作成し、その上限速度値を用いて速度照査を行い、その上限速度内であれば介入しない。
・・・というモノで、実質、WS-ATCと働きが変わらないモノです。
このATS-Pは、名前こそATSながら保安装置の分類としてはATCになるモノです。JR西日本のATS-Pも機能的にはほぼ変わらず。
ただ、JR東日本は東中野での事故の反省から首都圏は一気に置き換えたのですが、JR西日本は置き換えが進まなかったのです。
<補足なるのですが>
私鉄のATSには、速度照査の機能と常時自動介入を運輸省の通達で義務つけており、同じATSでも旧国鉄のATSとは機能的に異なります。
この通達は、旧国鉄→JRになる前日に廃達。JRには適用されないように、運輸省が動いています。
********************************
今回の事故、運転士の不適切な操作も原因の一つではありますが、ATS-Pでなくても速度照査(SC)があれば防止出来た事故。
人は間違いを起こす
・・・の一点は、同業のワタシも同じ意見です。
しかし、
「人は間違いを起こす」
・・・の考えならば、速度照査(SC)を設置しなければならなかったと思いますし、G現示ならばあの急曲線をフルスピードで突っ込める危険を防がなかったJR西日本の過失は問われる点であります。
ありがとうございます。
現場の方と通じた事とは、嬉しい限りです。
ご意見、全くごもっともです。
民営化前日にその様なことがあったとは、知りませんでした。
国の責任として、ある基準以上の運行密度の線区では速度照査を義務付ける線引きをすべきだったと感じます。
背景からして全線区に-Pを事はないのですから。
しかし、「ATS(-P)の設置工事の遅れや日勤教育、安全管理の怠り」に関して県警が「起訴を求めない」という点が残念でなりません。
でも、
既に社会的制裁は受けており、会社が被害者に対しての補償を負う事では変わりがないのなら、こだわらなくてよいのかもしれません。
当時、 会社からすれば、会社のやる事に不平不満があれるならやめるべきだ、普通はそうだ、という意識もあったのか。
そんな今の世の中で、中央線で有名になってしまったほど飛び込みが多い世の中で・・・
いや、もしかしたら、あの運転手もオーバーランした時点ですべての望みを失い、その後は回復運転というよりは線路に飛び込む人ほどの心境でハンドルを握り続けて、でも最後に本能的に我に返ってブレーキハンドルを引いた時には、もう戻れない世界だったのか・・・
ちょっと運転士の個人的適性を疑い始めて、でも急にふってわいてきた考えです。
その対策として現場に求めている「速度制限の指差呼称の徹底」は、根本が違いますね。
勝手な憶測が不謹慎でしたらお許し下さい。
No.2
- 回答日時:
正直言うと、安全装置であるATSの未設置が一番悪いって感じの受け取り方ってのは、ちょっと見当違いですね。
質問者さんが言うとおり、本当に重要なのは、その時の運転士の身体状況や精神状態です。ただ、そうした場合、その運転士の判断が悪かったためであって、企業の責任としては、さほど重大な原因はないと言った解釈が出来る面もあるように感じます。JR西日本と言う巨大な組織の不祥事として大きく取り上げるには、もっと具体性のあるもので無くてなならず、そうしたことを考えると、安全装置の不備って言うのが、それにもっともらしい原因であったために、それが諸悪の根源と言った感じに取り上げられたのだと思います。まぁ……どっちにしろ100人以上の死者を出してしまったと言うのが致命的です。なんたって、いくらJR西日本が本当のこと喋っても、ニュースで取り上げられた内容でないと誰も信用してはくれませんし、遺族からしてみれば、ただの悪の組織としか認識されていませんので、尚更無理です。なので、ニュースを見る視聴者は、それは一つの原因として考えられるものであって、絶対的な要因ではないと認識することが重要だと思います。
ありがとうございます。
翌日の新聞に出ていましたが、やはり表現が変ですね。
ATSをPと読み替えたとしても、カーブが急になったにもかかわらずATSを付ける行為を怠った、という事ですからね。
過密ダイヤであるにもかかわらずPを付ける事を怠った、としてもらえばまだ納得がいくのですが。
しかし肝心のところが「因果関係が薄い」とされ、問われた全員が「事故の予見可能性を否定」とされています。
それは確かに誰も想像だにしない、事実は小説より奇なり、の世界でしょう。
法律論での話しになると、「事故の予見可能性」での争いになってしまうのでしょうか。
でもやはり、実際の発生率は知りませんが、 オーバーランが多いという事実で会社が視点を変えてほしかった。
私が通学で利用していた小田急線ではオーバーランは経験がありません。
それと、報道の見方に関しては、ごもっともですね。
グレー50%の物件も報道機関の考え方によって10%の表現になってり90%になったりしますからね。
そういえば当時、非常ブレーキをかけたのが脱線の要因だという工学的に間違った報道がされた事もありましたね、思い出しました。
No.1
- 回答日時:
ATS-Pで、かつ速度照査用の地上設備が備えられていれば速度超過に有効ですが 事故当時はATS-P未導入でした。
報道機関の取材者がATSとATS-Pの区別付かないので
トンチンカンな表現になってしまうのでしょう。
鉄道マニアでも保安設備に興味のない人も多くいますし。
非電化区間の列車を電車という表現ミスもまれにありますしね。
ありがとうございます。
実は私も保安設備に関してはよく知らないのです。
ここに質問を立てる前にちょっと調べてみたのですが、ちょっとではよくわかりませんでした。
表現のおかしなところでは、少し前の朝のニュースの遅延情報でありました。
「電車、列車、新幹線」
言いたい事は
「首都圏の通勤電車と中長距離列車と新幹線」
一言「列車」と言えば済むんですけどね。
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