No.1ベストアンサー
- 回答日時:
hemumumuさんは、法律をご専攻でない学生さんとお見受けしましたので、ヒントだけ差し上げることにいたしますね。
1 民法の大原則
民法は、「人(自然人、法人)は、自らの意思に基づく行為についてのみ責任を負う」という大原則を採用しています(教科書の、「民法の基本原理」などと題する部分をご参照。)。
そして、法人は、定款の規定や総会決議(社団法人の場合)、あるいは寄附行為(財団法人の場合)によって理事の代表権の範囲を定めることができます(民法53条但書)。
したがって、理事の越権行為は、法人の意思に基づかない行為ですから、法人は何らの法的責任を負わない、というのが大原則なのです。
しかし、代理人(代表者も含む、以下同じ。)の権限の範囲は、代理人と本人との間の代理権授与行為によって定まるわけですから、第三者である取引の相手方にとっては、その権限の範囲を正確に認識し得るとは限りません。
そうすると、相手方が代理人の権限の範囲内の行為と信じてある取引をしても、後にその取引が代理人の権限の範囲外の行為であって、その効果が本人に帰属しないものと判明し、相手方が思わぬ損害を被ることがあり得ます。
こうなってしまうと誰もが代理人を介した取引の相手方となることに不安を持って取引をしなくなり、代理人制度、ひいては活発な流通が成り立たなくなってしまいます。
そこで、民法110条は、一定の要件(条文上、代理人の主観的目的のいかんは問題とされていないことにご留意ください。)のもとに代理人の権限の範囲外の行為(その意味では本人の意思に基づかない行為)についても、本人にその効果を帰属させることにしたわけです(越権代理についての表見代理)。
2 民法44条1項について
次に、民法44条1項は、「法人は理事其他の代理人が其職務を行ふに付き他人に加へたる損害を賠償する責に任ず」と規定しています。
理事その他の代理人(理事等、とします。)に対して、「他人に(不法な)損害を加へ」る権限を付与する法人など存在するはずがありませんから、理事等の不法行為は、当然その権限の範囲外の行為です。
したがって、上記1で申し上げた大原則に照らせば、法人は何らの法的責任を負わないはずなのです。
しかし、民法44条1項は、「其職務を行ふに付き」理事が不法に「他人に損害を加へた」ときに限って、法人に損害賠償責任を負わせています(その理論的根拠については、教科書の、「法人の不法行為責任の根拠」などと題する部分をご参照。)。
そして、判例によれば、同項の「職務行為」とは、当該行為の外見上法定代理人又は代表者の職務行為であると認められれば足りるものとされています(いわゆる外形標準説。最判S37.9.7民集16.9.1888など)。
3 本問について
この外形標準説に基づき、判例は、村長の手形振出行為(≒借金)が村議会の議決を欠き、また、法律に違反するものであるとしても、当該振出行為自体は、外形上村長の職務行為に該当すると判示し(上記最判S37.9.7)、また、市長が、権限なくして市長名義で約束手形を振り出した(≒借金)場合でも、それが職務の執行についてなされたものと認められるときは、手形所持人(≒貸主)は損害賠償を請求できると判示しています(最判S41.6.21民集20.5.1052)。
ここまで書けば、もうお分かりですね?
がんばってくださいね。
早速のご回答ありがとうございました。
大学での専攻は法律とは全く別なのですが、趣味と自己啓発を兼ねて1年ほど前から独学で法律を勉強し始めました。
これまで憲法、刑法など勉強しましたが、やっぱり民法が一番難解です(笑)条文も読みにくいですし(^.^:)
iustinianusさんの解説は順を追って説明してくださったのでとっても解りやすかったです!
プリントアウトして蛍光ペンでチェックしながら読ませて頂きました。
本当にありがとうございました!
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