No.6ベストアンサー
- 回答日時:
>(新品を加工し販売しても問題ないと考えます)
平成13年(ネ)第959号事件は、特許権者(原告・控訴人)によって製造された製剤を適法に購入してアシクロビルを取り出し、そのアシクロビルを精製した後にそれを原料成分として薬剤を製造した被告(被控訴人)の行為について争われた事件です。
この事件では、東京高裁は、
「しかし,当該特許発明の主要な構成に対応する主要な部品を交換するなどして,修理等の域を超えて,実施対象を新たに生産するものと特許法上評価される行為,すなわち,特許発明の主要な構成に対応する主要な部品の交換等により,特許権者等が譲渡した特許製品に含まれる実施対象と同一のものとはみなされなくなるものを生産する行為は,もはや単なる修理やオーバーホールなどということはできず,特許権者等が本来専有する実施権である,特許発明の実施対象を生産する行為に該当し,この新たな生産行為について,当該特許権の効力が及ぶのは当然というべきである。」
「すなわち,特許権の消尽といっても,特許権の効力のうち,生産する権利については,もともと消尽はあり得ないのであり,前記のとおり,消尽するのは,特許権者等の生産に係る特許製品に含まれる実施対象を業して使用し,譲渡等する権利であり,特許製品を適法に購入した者といえども,特許製品を構成する部品や市場で新たに購入した第三者製造の部品等を利用して,新たに別個の実施対象を生産するものと評価される行為をすれば,特許権を侵害することになるのは当然というべきである。」
旨を判示した上で、上記の被控訴人の行為について、
「特許権者によって適法に製造された製剤を被控訴人が購入した上で、その製剤からアシクロビルを取り出す行為は、アシクロビルを新たに生産する行為ではなく、適法に購入された製剤を使用する行為であるから、特許権の侵害行為には該当しない」
という結論を下しています。
翻って、ご質問のケースですが、仮に柄の部分に特許権・実用新案権・意匠権が設定されていた場合、ブラシの部分だけを交換するのであれば、その柄を有する歯ブラシを再生産する行為に他なりません。従いまして、消尽論の適用はありません。
さらに言えば、このケースを考察する際に一番妥当であろうと思われる裁判例は、平成12年8月31日東京地裁判決、平成8年(ワ)第16782号です。
この裁判例では、俗に「写ルンです」の名称で知られている使い捨てカメラの本体を特許権者・実用新案権者・意匠権者である富士写真フイルム社に無断で回収し、フィルムを詰め替えて販売していた第三者の行為について、同社は原告として「消尽論の適用はない」とし、第三者が被告として「消尽論」で抗弁を図った件ですが、
東京地裁は、
「効用を終えた特許製品に加工等を施したものが使用ないし再譲渡されるときには、特許製品の新たな需要の機会を奪い、特許権者を害することとなる」
と前置きして、消尽論の適用を否定し、被告に損害賠償を命じています。
ただし、ANo.1 の補足欄の通り、「生産がうまくいくかどうかを試験的に確認するのみであり、販売は一切しない」というのであれば、特許法69条1項より、それに対しては特許権の効力は及びません。
なお、「特許を取りたい」と心底熱望されるのであれば、弁理士に依頼なさるのが賢明です(特許とは、「技術的思想」に付与されるものであり、商品そのものに付与されるものではありません。この基本的な事柄や特許法をご存じない方が作成された明細書など、私どもからすれば抜け穴だらけです)。
>MiJun さん
ご質問は、あくまで「例えば」であり、実際の対象が「歯ブラシ」だということではないと推察します。
私の回答も、「柄」に限った話ではなく、「柄」を例え話とした一般論としてご解釈下さい。
No.10
- 回答日時:
>もちろん、柄に素晴らしい特許権があればですが・・・。
例えば、特許第3088976号は、柄の部分に特徴がある幼児用歯ブラシです。特許権者は、花王社です。
ところで、ある会社(A社とします)が、ブラシの歯先が開いて寿命が尽きたこの幼児用歯ブラシを回収し、ブラシ部分と柄とを切断して、自社で製作した別ブラシを前記の柄に取り付けた幼児用歯ブラシを販売する事業を花王社にことわりなく始めました。
さて、A社の行為は、花王社の特許権の侵害となるかどうか? apollon さんが花王社の人間だったら、A社の行為をどう思われますか?
消尽論は、権利者が得た対価に着目し、「一旦適法に譲渡された発明・考案・意匠については、その時点で対価を支払ったことになるから、それ以降の譲渡に対しては権利の効力が及ばない」とする理論です。このため、以降の譲渡に関しては、権利者は二重利得を享受することはできません。
それでは、上記のA社の行為はといえば、「購入時に予定されていた使用目的を達成した歯ブラシにつき、権利者が対価を予定通り回収した後、ブラシを別ブラシに取り替えて新たに歯ブラシを生産・販売する行為」であり、要するに、「特許発明である柄を有する歯ブラシを新たに生産・販売する行為」です。
これは、「権利者に支払われた対価を超えて特許発明を利用し、これにより権利者が対価を得る機会を奪う行為」ですから、A社の行為が許されるものではないことは当然です。
下記の平成元年4月24日大阪地裁判決(昭和60年(ワ)第6851号事件)には、これと略同旨の判断がされています。
>特許も取りたいと考えています。
>もしその場合、(これは質問からそれますが)、先に提出すれば、特許の優先権があるのでしょうか?
>それとも、審査を請求して先に認められたほうに、権利がいってしまうのでしょうか?
「優先権」という言葉は、特許法では別の意味で使用されますが、お尋ねになりたいことは分かります。
日本は、同一発明であれば、先に出願した者のみが特許権を取得することができます。いわゆる「先願主義」です。出願された発明と同一の発明を出願した場合、後からの出願は、特許法第29条1項3号、特許法29条の2、特許法39条1項を理由に拒絶されます。
>実用新案なら、出すだけでいいみたいですが、特許の場合はどうなんでしょうか?
現行実用新案は、よほどの理由がない限り推奨はできません。理由につきましては、下記のQ&Aをご参照下さい。
■実用新案ってどうなの?
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=155222
>法律のことなど、話が難しくなり、ついていけなくなってきました。
特許権は、排他独占権を有する財産です。しかも、その保護される財産は、実体のない「概念」です。
従いまして、排他独占権を認めるのであれば、特許権の範囲を明確にし、他人が自由に使用できる技術と明瞭に区別可能にしておく必要があります。何しろ、相手は「実体のない概念」。特許権がどこからどこまでか明確でないと、同業他社は安心して技術を駆使することができなくなります。
そのために、「特許法」があり、出願から特許権の期間満了まで、この特許法に準じてハンドリングが行われます。
この特許法に精通され、かつ文章表現に長けた方であれば、自力出願が可能であることもありますが、実務に携わる私どもは、そうでない方に対して自力出願は決して勧めません。実際、自力出願された明細書を読んでいると、「この公開公報が特許になったとしても、こうすれば侵害にならない」という回避策が簡単に思いつきます。
今は試作品を製作している段階だと推察しますが、出願に関しては、弁理士(特許事務所)にご相談なさって下さい。
参考URL:http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=155222
No.9
- 回答日時:
平成元年4月24日大阪地裁判決に照らしても、この場合、消尽論の適用はありません(質問者さんからのレスがなく、質問者さんがこの件に興味をまだお持ちなのかどうかが分からないので判旨は省略)。
>前提は
>柄の部分にしか特許がなければ
>(例えば発明の名称が「歯ブラシの柄」)
それでは、「歯ブラシ」として権利がある場合、消尽論の適用はないのですか???
お返事遅くなってすいません。
一応、理解としては、柄の部分の使用は可と
判断しました。
>柄の部分にしか特許がなければ
>(例えば発明の名称が「歯ブラシの柄」)
なんてことはなく、ほとんどの歯ブラシがそうであるように、ブラシの部分に価値があります。
もちろん、柄に素晴らしい特許権があればですが・・・。
当然、きちんとしたものができれば、特許も取りたいと
考えています。もしその場合、(これは質問からそれますが)、先に提出すれば、特許の優先権があるのでしょうか?
それとも、審査を請求して先に認められたほうに、
権利がいってしまうのでしょうか?
実用新案なら、出すだけでいいみたいですが、
特許の場合はどうなんでしょうか?
だんだん、法律のことなど、話が難しくなり、
ついていけなくなってきました。
けど、販売も問題ないんですよね・・・。
No.8
- 回答日時:
表現が下手で誤解を生じているものと思われます。
拙稿を補足します。
まず、前提は
>柄の部分に何かしらの特徴があり、その特徴について特許権・実用新案権・意匠権が成立していれば
です。
また今回、apollonさんがやろうとしていることは
>市販の歯ブラシの柄の部分だけを使い、
>(ブラシの先部分は切る)
>新しく作ったブラシをくっつけて、
>(新しいブラシは、こちらで製作)
>販売する
ですから、柄は柄のままで残されます。
都合、少なくとも柄の部分については
新たな生産はなく、
柄の部分にしか特許がなければ
(例えば発明の名称が「歯ブラシの柄」)
権利は消尽し
特許権は及ばないものと考えます。
発明の実施には
生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡し)、輸入又は譲渡等の申出が含まれますが、
実際には「譲渡」と「使用」のみが規制すべき実施態様となります。
(生産のみして販売がなく、生産->廃棄を繰り返すことがもしあれば、文言上は侵害となりますが、規制すべきものではないことは明らかです)
消尽論は需要者/販売者の立場から議論されることが多いように思われますが、
実際には権利者の権利を保全するためにも必要な論理で、
この論理がなりたたなければ、材料として使われる物品については
特許権は無用の長物と成り下がります。
(材料として使用できない材料を誰が買うでしょうか?)
つまり、適法に販売された特許実施品は、
材料としては採用しうると解するべきで、
本件の場合も当該部分に生産がない以上
権利は消尽したものと考えます。
今回の「歯ブラシ」は
恐らくは架空の話でしょうし、
「歯ブラシの柄」のみに権利があって
「歯ブラシ」には権利がない
場合も想定しにくいですが、
(有体にいって明細書の不備)
上記の前提に立てば
消尽を肯定せざるをえません。
このような状況があるとするならば
特許実施品が商品として寿命を迎えており、
極端に廉価で販売されていて
それを買い入れ材料として組み込む場合が考えられますが、
仮にその商品が、権利者の他の実施品と競合したとしても
一旦適法に譲渡された以上、競合を理由に消尽を否定すべきでなく、同じ結論に達します。
消尽は比較的新しい理論で、いろいろな説があることは理解できます。
(自説が完全に正解だとは思っていません)
読解力の不足、稚拙な表現により
誤解を生じたとすれば
お詫びします。
お返事遅くなってすいません。
一応、理解としては、柄の部分の使用は可と
判断しました。
>柄の部分にしか特許がなければ
>(例えば発明の名称が「歯ブラシの柄」)
なんてことはなく、ほとんどの歯ブラシがそうであるように、ブラシの部分に価値があります。
もちろん、柄に素晴らしい特許権があればですが・・・。
当然、きちんとしたものができれば、特許も取りたいと
考えています。もしその場合、(これは質問からそれますが)、先に提出すれば、特許の優先権があるのでしょうか?
それとも、審査を請求して先に認められたほうに、
権利がいってしまうのでしょうか?
実用新案なら、出すだけでいいみたいですが、
特許の場合はどうなんでしょうか?
No.7
- 回答日時:
●追記
>仮に柄の部分に特許権・実用新案権・意匠権が設定されていた場合、ブラシの部分だけを交換するのであれば、その柄を有する歯ブラシを再生産する行為に他なりません。
このことが、ANo.6 に記した判示事項中の
「特許製品を適法に購入した者といえども,特許製品を構成する部品や市場で新たに購入した第三者製造の部品等を利用して,新たに別個の実施対象を生産するものと評価される行為をすれば,特許権を侵害することになるのは当然というべきである。」
に符合することは明らかです。
平成13年(ネ)第959号事件においては、
「上記の判示事項に符合するような行為であれば(言い換えれば、新たに別個の実施対象を生産するものと評価される行為であれば)特許権の侵害となるが、被控訴人の行為は、そうではない(上記の判示事項に符合する行為ではない)」
として、控訴人(第1審原告)の特許権侵害を理由とする請求が退けられています。
混同なさいませんように。
No.5
- 回答日時:
>ブラシの先部分は切る
わざわざ何か工具で切断するのでしょうか・・・?
ご存知かもしれませんが、似たような歯ブラシは既に市販されており(柄の中間部分より先の替えがありこれを交換出来る歯ブラシ)、個人的には利用してますが・・・??
⇒専門でないので分かりませんが、意匠登録も難しいのかもしれませんが・・・?
⇒さらに販売しても既存のものと比較して消費者はどちらを選択するでしょうね・・・?
ご参考まで。
この回答への補足
首の付け替えブラシじゃないんですよ。
ただ、市販ブラシを切って、旋盤加工するのは、
柄の部分のかな型の制作が間に合わなかったからです。
No.4
- 回答日時:
個人的には
柄の部分に特徴のある特許/実用新案/意匠があったとしても
その部分を修理して販売するのでなければ権利は消尽し
販売は問題ないものと考えます。
(新品を加工し販売しても問題ないと考えます)
以下の判決例が参考になるでしょう。
東京高裁 平成13(ネ)959 特許権 民事訴訟事件
参考URL:http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/List …
No.3
- 回答日時:
柄の部分に何かしらの特徴があり、その特徴について特許権・実用新案権・意匠権が成立していれば、再販売はできません。
この場合、品物が適正に販売された際に各種の権利が全て消滅したとする「消尽論」が適用されることはありませんので、くれぐれもご留意下さい。
逆に言えば、柄の部分に特許権・実用新案権・意匠権が成立しておらず、且つ柄の形態に目立った特徴もないのであれば(言い換えれば、不正競争防止法2条1項3号に該当する心配がないのであれば)、さしたる心配はないでしょう。
No.2
- 回答日時:
柄の部分を再利用すること自体は問題ないと思いますが、考えられているものが他の特許を侵しているかどうか調査する必要があると思います。
それから、考えられているものが特許になる可能性があるなら、出願だけでもしておいた方が良いですよ。製品にしてからでは特許になりませんので。
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