民事訴訟では 裁判官がこんな請求額じゃ足りないだろうというので 被告に原告の請求を超える判決を出すことはできません。
しかし、刑事訴訟では まれにですが 裁判官は検察の求刑を超える判決を出すことがあります。
これについては 疑問視する弁護士もありますが、一般庶民は最初から裁判の公平性に無関心なのか、
現代の裁判も江戸時代のしらすみたいに考えているのか 肯定的に考えている人が圧倒手多数のようです。
確かに、刑事訴訟法に従い 裁判官は検察の求刑に縛られることなく判決を出すことができますが、
これはどういう理由によるものでしょうか? さらに突き詰めれば、民事と刑事、民事の原告の請求と刑事の検察の求刑の根本的な違いは何でしょうか?
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
”江戸時代のしらすみたいに”
↑
江戸時代は、判例主義をとっていました。
過去、同じような事件があったか、あった
場合、どのように処置したか、ということを
物書同心という専門の官僚が詳細に調べて
先例と齟齬がないような判決を出していました。
決して恣意的な判決を出していた訳ではありません。
”刑事訴訟法に従い 裁判官は検察の求刑に縛られることなく判決を出すことができますが、
これはどういう理由によるものでしょうか?”
↑
刑訴では(1)事実を認定し、(2)その事実に法を当てはめる
という作業をします。
(1)は検察官の主張に拘束されます。
しかし(2)は法的判断ですので、これはむしろ裁判官の仕事
になる訳です。
そして、求刑、つまり量刑というのも法的判断です。
従って、検察官の主張には拘束されないのです。
”民事と刑事、民事の原告の請求と刑事の検察の求刑の根本的な違いは何でしょうか?”
↑
民事は、当事者の利益の為に設置されていますが
刑事は公益の為です。
ここが根本的な違いです。
民事は、原則、当事者の利益の問題ですから、当事者が
主張していないことにまで裁判官が口をはさむべきでは
ありません。
しかし、刑事は公益の問題です。
検察官が主張していなくても、公益の為に必要だということに
なれば、裁判官が口をはさむことも許さねばなりません。
もっとも、それも程度問題で、これが許されるのは法的判断
の部分だけ、ということです。
ありがとうございます。
>江戸時代は、判例主義をとっていました。
私が江戸時代のしらすと言ったのは 現在のように 検察が被告を咎め、弁護士が擁護し 裁判官が中立的な立場で裁くのではなく、裁判官が1人3役を務めるよう独壇場にあるということを言いたかったのでした。まあ、それを言うなら 現在の求刑を超える判決自体が 凡例を逸脱しているのは否めませんが。
>刑訴では(1)事実を認定し、(2)その事実に法を当てはめる
という作業をします。
#1さんよりは分かりやすい説明ですね。しかし、なんか釈然としない部分が残ります。これは裁判官と言えど、検察の事実の認定には従わなくてはいけないということですよね。
>しかし、刑事は公益の問題です。
判決だけの問題じゃありませんが、被害者や遺族の意向と食い違うことも多いし、難しい部分だと思います。これについては のちほど考えようと思います。
No.1
- 回答日時:
民事上の権利義務,すなわち,基本的に民法や商法で認められている権利義務は,法律の範囲内で,当事者が設定したり消滅させたりすることができると考えられているのに対し,国家による刑罰権の発動は,裁判所の専権であって,当事者が自由に設定することができないという考えの違いに基づくものなのでしょうね。
例えば,貸金にしても,実際には100万円の貸金があるのに,債権者が50万円返してもらえれば十分だとして,50万円しか請求しなくても,それは債権者の自由であって,民事の裁判所は,そのような自由に介入すべきことではないということになります。逆に,100万円の貸金しかないのに,200万円の貸金があるとして請求した場合で,債務者が真実に反してでもその事実を認めれば,200万円の貸金があるとして判決がなされます。
求刑越えとの関係でいえば,不法行為による損害賠償で実際には200万円の損害があるのに,被害者が,100万円でいいとして100万円しか請求しなければ,それも同じことで,裁判所はそのような自由には介入しないということになります。この場合,判決には,実際には200万円の損害があるが,請求が100万円なので,100万円で判決すると書かれます。
民事訴訟法246条に,「裁判所は,当事者が申し立てていない事項について,判決をすることができない。」と定められているのは,そのような考えを背景にした規定と考えられます。
他方,刑事事件では,刑罰権の発動の主体は最終的には裁判所ということになりますので,その刑罰権の発動を,刑事裁判の一方のプレイヤー(「当事者」と書いてもいいのですが,被告人との関係でいえば,民事訴訟のような完全な「当事者」ということもできません。)に過ぎない検察官が左右することはできないと考えられます。もちろん,検察官は,起訴便宜主義により,刑罰権の発動を求めないこともできますし,被告人のある行為が,A罪にもB罪にも当たるときに,A罪での処罰のみを求めて,B罪での処罰は求めないということもできます。しかし,それは手続法の立法政策の問題(例えば,A罪での起訴に対して,これと別のB罪を認めることは,被告人の防御権を侵害するからという,政策的理由,というか憲法の人権規定による制約によって認められない。)であって,その根本にある裁判所による刑罰権の発動を制約するものではないと考えられていると思います。
刑事訴訟法293条1項が,「証拠調が終わった後,検察官は,事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。」と定めているのは,検察官の述べるところはあくまで「意見」であって,民事事件の「請求」とは異なることを明らかにしている規定と考えられます。
ありがとうございます。
>もちろん,検察官は,起訴便宜主義により,刑罰権の発動を求めないこともできますし,被告人のある行為が,A罪にもB罪にも当たるときに,A罪での処罰のみを求めて,B罪での処罰は求めないということもできます。
この部分が少し引っ掛かります。極端な言い方をすれば、裁判官は検察の求刑を無視したような判決も出せるわけですよね。しかし、検察が傷害致死傷で起訴した案件は状況的に
どう見ても殺人だとしても 裁判官は訴因変更はできませんよね。
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