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この書物を書いた者は、人間嫌い(ミザントロープ)ではない。人間への憎悪は、現代ではあまりに高くつく。古(いにしえ)の人びとが人間そのものを憎悪したように、例えば[アテナイの]ティモンさながらに、ひとつ残らず、容赦なく、心を籠めて、憎悪という愛のすべてをもって憎むこと ― そのためには、われわれは軽蔑することを諦めなければならないだろう。 ― われわれの軽蔑は、これまでいかに多くの精妙な歓び、いかに多くの忍耐、いかに多くの善意をすら、われわれに授けてくれたことか!
(フリードリヒ・ニーチェ『喜ばしき知恵』第五書379 村井則夫訳 河出文庫 440ページ)

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[1]  「Misanthrop」といふドイツ語は日常的に使用される単語なのですか。手持ちの独和辞典には掲載されてゐます。
[2]  ニーチェは、モリエールの喜劇「Le Misanthrope」を意識して書いてゐるのですか。ルキアノス『ティモンまたは人間嫌い』は、質問文中にあるとほりですけれど。

質問者からの補足コメント

  • 「楽しい動物たち」より(1)は見逃してをりました。
    スティーヴン・ジェイ・グールド『ニワトリの歯』渡辺政隆・三中信宏訳 ハヤカワ文庫29章に、「シマウマの縞はどうやってできるのか」といふエッセイがあります。アフリカ人の多くは、もともと黒地のところへ、白縞ができるのだとみなしてゐて、その見解が科学的に正当なものであると指摘してゐます。縞の部分は、メラニン色素が沈着してゆくのではなく、沈着を阻害された結果であるといふのが、発生学を基調にした判断との主張です。分岐分類学への批判や、還元主義にもとづく単純な進化解釈への疑問など、おもしろい読み物です。

    翻訳は、適切な表現を考へはじめるときりがないので、自分でするのは好きではないのですが、Tastenkastenさんは、作曲とおなじく、さいういふところが、お好みなのでせう。

    No.4の回答に寄せられた補足コメントです。 補足日時:2015/05/06 16:19

A 回答 (4件)

こんばんは。


Misanthropという語は、ドイツ語で普通に使います。ドイツ語コーパスで検索すると、現代の新聞の記事でも、用例はたくさんあります。下の検索結果の、下段中央は、Die Zeit紙の文例です。
http://www.dwds.de/?qu=Misanthrop

たとえば一つ上げると、

Da merkt man , daß der wirkliche Woody Allen wohl doch kein Misanthrop sein kann : ein Melancholiker eben .
そこで気が付くのは、実際のウッディ・アレンは、やはり人間嫌いではないだろうということだ。憂鬱気質なのだ。

もちろん元はフランス語で、ドイツ語にもそれに当たる語がいくつかあります。モリエールの「人間嫌い」は「Menschenfeind」と訳されます。オーストリアの喜劇作家、フェルディナント・ライムントに、「アルプス王と人間嫌い」という作品がありますが、原題は「Der Alpenkönig und der Menschenfeind」です。無料公開されている古典文学に検索を掛けると、「Misanthrop」より「Menschenfeind」の方がやや多いようです。

ニーチェは、好き嫌いは別として、哲学史上重要な人物ですから、ドイツ語による研究はたくさんあり、ネットの検索でもかなり手がかりがつかめます。しかし、モリエールとの接点を論じたものは全くありませんので、このアフォリズムもあまり関係がないと思った方がよいでしょう。ニーチェは、ショーペンハウアーの延長で、「人間嫌い」について、心理学的、哲学的考察をしたようですが、そこに「ルサンチマン」の現象をみいだしたとされます。モリエールの「人間嫌い」の内容をすでに忘れてしまっていますが、「ルサンチマン」に関係づけられるほどの内容でしたでしょうか。
先日、OKWaveの方にアリストパネスに関する御質問を出されたときは、ドイツ語の論文をすぐに検索してみましたが、こちらの方はいくつも出ました。向こうの回答者の方は、デュオニュソスの名前を出したあと、あまり自信がないようなことを書いていましたが、デュオニュソスに触れた論文もあり、シェリングと一緒に論じられていました。あちらには、人間嫌いならぬデュオニュソス嫌いの方がいらっしゃるので回答はしませんでしたが、気が向いたらプロフのコラムででも取り上げてみます。
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この回答へのお礼

このところ、Tastenkastenさんから教はつたことをもとにした質問ばかりしてゐます。Misanthropは普通のドイツ語なのですね。モリエールとの関連があれば、おもしろかつたのですけれど。これは後世の造語ではなくて、ギリシャ語に、もともとある単語(質問文にも書きました)ですから、各国語に流れてゐても不思議ではありません。

>モリエールの「人間嫌い」は「Menschenfeind」と訳されます。

これもそのうち質問したいと思ふのですが、英語やフランス語は、ギリシャ語ラテン語をもとにした単語が多いのに、ドイツ語はゲルマン語で表現します。どんな理由があるのでせうか。

>「ルサンチマン」に関係づけられるほどの内容でしたでしょうか。

ほぼ無関係に思へます。
ニーチェの解釈は人それぞれで、好き嫌ひも評価も、極端に分かれます。私は本を読むたびごとに見方が変化します。根本は変りませんけれど。

>OKWaveの方にアリストパネスに関する......

すばらしい回答をもらひました。ニーチェに対する見解は、私に近いやうに感じました。アリストパネスがディオニュソス的といふのは、当然ですね。

>気が向いたらプロフのコラムででも取り上げてみます。

いま初めて気づきました。蠅は長生きするものなのですね。ニーチェの文章も、こんなふうに、冗談を真に受けて解釈してゐるものも多いのではないかと思つてゐます。

いつも丁寧な回答をいただき、ありがたうございます。

お礼日時:2015/05/05 00:08

>このドイツ語はウィーンなまりなのですか。



はい、そうです。

Es is (=ist) ka (=kein) Löw (=Löwe), es is (=ist) halt a (=ein) Bär.

>だんだん仕事が忙しくなつてきて、Q&Aの時間も限られてきました。

私も無理に回答せず、もっと仕事をしようと思っています。回答で息抜きする代わりに、短文の翻訳をやっているわけです。
この回答への補足あり
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この回答へのお礼

教科書のドイツ語でも苦労するのですから、ウィーンのことばでは歯がたちません。これは短文で、Tastenkastenさんの解説もありますから、それなりに理解はできますが、いきなり出されたら、何語かもわからないと思ひます。

>私も無理に回答せず、もっと仕事をしようと思っています。

仕事はお大事になさつてください。世界の音楽界のために。とはいへ、Tastenkastenさんが正統的な回答をしてくださるおかげで、私のやうなお調子者が個人的な見解を好き勝手に投稿できるわけです。ティスムスの質問についてもさうです。ありがたうございます。

お礼日時:2015/05/05 23:02

こんにちは。


コメントの投稿時間が早朝なので、今日もお仕事ですか。

>先日の耳鼻咽喉科も、英語フランス語のギリシャ語由来の単語に対して、ドイツ語では「のど、はな、みみ」と言ふらしくて、気になつてゐました。

この部分がよくわかりませんでした。先の、「英語やフランス語は、ギリシャ語ラテン語をもとにした単語が多いのに、ドイツ語はゲルマン語で表現します」という疑問に関してでしたら、例としては適切ではないかもしれません。Wikipediaの耳鼻咽喉科で各国語のリンクをたどっていくと、確かにドイツ語だけ「Hals-Nasen-Ohren-Heilkunde」と出ますね。しかし、英語でも「ear, nose, and throat」という言い方がかなり一般的なようです。Wikipediaの英語版の見出しが「Otorhinolaryngology」になっているのは、筆者の個人的な選択かもしれません。ドイツ語でも、国際的な場での正式名称としては、フランス語と同じ「Oto-rhino-laryngologie」を使うようですが、一般的には「Hals-Nasen-Ohren-Heilkunde」という言い方がほとんどのようです。ただ、ほかの分野に関しては、循環器学(Kardiologie)、消化器学(Gastroenterologie)外科学(Chirurgie)のように、ギリシャ語由来の単語を使っています。耳鼻咽喉科だけが別のようですが、もしかすると、かつて医学先進国だったドイツで、学問としての発展の途中でドイツ語に置き換えられたのかもしれず、あるいは単に長くて言いにくいからかもしれず、ドイツ語そのものの言語的な特徴ではないとも考えられます。個人的な推測ですが。余談ですが、Hals、Nase、Ohrも、ear、nose、throatも、詳しく調べていくと、結局ギリシャ語やラテン語と同源なのですね。Halsは、ギリシャ語のpólosと関係があるようですし、Nase、noseは、サンスクリットのnasaやラテン語のnasusと同源、Ohr、earもゲルマン祖語のauzonからきているようですが、ギリシャ語のaus、ラテン語のaurisと同源と出ていました。

>「pod」は「足」

何となくここで切れるのではないかという気はしていました。「pod」が「足」というのは、言われてみるとすぐわかります。ドイツ語に、「Antipode」という、ギリシャ語由来のおもしろい単語がありますが、「Gegenfüßler」ともいうのでピンときました。Podium(舞台)のpodも「足」ですね。
どちらのサイトももう質問が出ないので、完全な雑談になりました。

>蠅は長生きするものなのですね。
今日はホッキョクグマですが、字数に限りがあるので、対訳にするのが大変です。
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この回答へのお礼

御回答ありがたうございます。だんだん仕事が忙しくなつてきて、Q&Aの時間も限られてきました。

>学問としての発展の途中でドイツ語に置き換えられたのかもしれず、あるいは単に長くて言いにくいからかもしれず、ドイツ語そのものの言語的な特徴ではないとも考えられます。

御指摘のとほりなのかもしれません。もう少し考へてみます。

>結局ギリシャ語やラテン語と同源なのですね。

所詮、印欧語族内のやりとりですから。

>「pod」が「足」

辞書を引くときは、「ποῦς」(プース)です。たこのoctopus(8本足)で使はれます。podの形は語幹で、いかのdecapod(10本足)に出てきます。ラテン語の主格形はpesで、むかでのcentipede(100本足)がそれです。

>どちらのサイトももう質問が出ない

さびれてきました。
最近は無理して、計算(もどき)や翻訳(らしきもの)もいくらかしてゐます。人がたくさんゐて、それぞれが好きな投稿をすればバランスがとれるやうになつてもらひたいものです。

>今日はホッキョクグマですが、字数に限りがあるので、対訳にするのが大変です。

二箇国語の洒落ですね。ライオンのドイツ語すら知らないので、笑へませんでした。解説が必要です。このドイツ語はウィーンなまりなのですか。

お礼日時:2015/05/05 21:36

>英語やフランス語は、ギリシャ語ラテン語をもとにした単語が多いのに、ドイツ語はゲルマン語で表現します。

どんな理由があるのでせうか。

ドイツ語にもギリシャ語、ラテン語を語源とする単語は山のようにあります。私は普段、Dudenの独々辞書を使いますが、ギリシャ語、ラテン語、フランス語を語源とする単語はたくさんあります。もちろんその一方で、北方の言語があるのでしょうから、中高ドイツ語が語源という表記も時々あります。古高ドイツ語という語源はそう頻繁にはお目にかかりません。

「ティスムス」の語源について、向こうの方に補足、というか、質問を書こうかとも思ったのですが、入会したばかりの質問者で様子がわかりませんし、戸惑うと困るので、こちらでお尋ねします。
接尾辞としては、あくまでも-ismus、-ismだと思います。tやzが入るのは、語幹の最後が子音か母音かによるものと思います。Kapitalismusの場合は、Kapitalとlで終わるので、-ismusをつけ、BetaやKappaなど母音で終わるものは、語調を整えるためにtが入るのではないでしょうか。SigmatismusやSchetismusのように、語幹にsの音が含まれる場合は、-zismusでは摩擦音が連続して発音しにくいので-tismusになるのだと考えます。母音が二つ続くのは避けるようで、「一元論」の場合は、「mono」の「o」を「i」に変えてしまって、「Monismus」となります。「パーキンソン症候群」の場合などは、nのあとにそのまま-ismusを付けます。empodismosの語源はなんでしょうか。語幹はempoですか、それともempodですか。また、ギリシャ語でほかに症状を表す語で、「d」を含まない語はないのでしょうか。その辺がわからないと、何とも言えないのですが。
なんだか最近、ギリシャ語ができないことがえらく不便に感じるようになってしまいました。でも、とりあえずは英語をやらないと・・・
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この回答へのお礼

コメント文への御回答ありがたうございます。先日の耳鼻咽喉科も、英語フランス語のギリシャ語由来の単語に対して、ドイツ語では「のど、はな、みみ」と言ふらしくて、気になつてゐました。あくまでも、比較の話です。比較で思い出しましたが、先日のグーグル翻訳の「ライター」といふのは形容詞の比較級でした。動詞でもないのに「er」がつくのは変だとは感じたのですが。もとのラテン語が比較級なので、文法的直訳です。ラテン語では、比較級や最上級には、現代語ほどの比べる意味はありません。強調程度の意味合ひで多く使用されます。

「ティスムス」の御回答はTastenkastenさんの御回答であつてゐると存じます。私のは個人的な推測による追加です。この医学用語を考えた人の頭の中には、「障害」といふギリシャ語もあつたのではないか、さう思つただけです。根拠はありません。「em」は「中に」、「pod」は「足」、ラテン語由来の英語「impediment」も同じく、「im」が「中に」、「ped」が「足」です。一番回答を予定して、二つの意味があるのではないかといふ文章を書いてゐたのですが、先にTastenkastenさんが教科書的な投稿をなさつてゐましたので、そちらは省略して、もうひとつの考へだけを回答しました。

お礼日時:2015/05/05 06:25

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