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王立宇宙軍のリイクニはずっと布教して行くんですか?けなげを通り越して憐れに思いました。シロツグの事は、バッサリですか?ラスト近く街中で空を見上げてましたがどうなんだろう。
考える部分が多いアニメです。リイクニ役の、弥生みつきさんがぴったりです。(クラリス=島本須美さんみたいに)
初心者には難解でした。

A 回答 (1件)

懐かしい作品ですね。



当時の私も同じ感想を持ちました。共感します。

全く意味が分からず、もやもやしましたよ。

今は何となくわかります。

「そんなものは置いていけ、おまえだけでも先に行け!」

だと思います。


若いうちは、近くにあるものに幻想を抱き、自分の憧れを押し付けて、

手っ取り早く幸せになろうとするものです。

「この辺で手を打っておきたい。」

そのうえで、

「都合よく理想の相手とで出会えるイベントが無いかな。

 一回くらいは苦労してもいい。

 そのご褒美として永遠の愛が手に入るんだよね?

 苦労は嫌だけど、仕方ないよな。永遠の愛だし。

 僕は乗り越えられるだろうか。」

と甘い事を考えます。

しかし上手くいかない。

理由は簡単です。

手近な相手も自分と同じ状態であり、

手近な人たちに幻想を押し付ける物臭をしています。

最初は幻想が壊れないので良い感じになります。

そして段々と互いに幻滅するというわけです。


質問者さんもシロツグとリイクニのハッピーエンドを期待したのだと思います。

私もそうあるべきと思ってみていました。

これが手近に幻想を押し付けるという気持ちです。

恐らく、本当のリイクニは私たちが感じるほど純粋ではないでしょう。


二人の関係が進めば、

母親の様に愚痴をこぼし、小さい事で不満を言い、

自分の都合を優先してシロツグを蔑ろにする姿が描かれるはずです。

私たちはがっかりするでしょう。

しかしリイクニにとってはどうでしょう?

「え、私だけはそれやっちゃダメだって言うんですか?

 なぜですか?

 ・・・私が貴方の好みの女性に近いから?

 なんですかそれ。

 まず、『あなた好みの女』とか知りませんよ。

 どころか、それがどんだけ意味あるんですか?

 英単語でも覚えた方がマシじゃないですか?

 そして、貴方の好みじゃない女性は関係ないので気にしない?

 ほお。

 じゃあ、どっかいってください。」

つまり、愚痴を聞いて、軽んじられて、それでも笑って許し、

危険から守ってくれたり、稼ぎがあって気前がよくて、甲斐性がある男性。

これを満たすのが男性の最低限の役割であり、女性の幸せの最低条件です。

若い男性にとっての想定と全く違いますよね。

『一回の大変な苦労』で得る『永遠の愛』ではなく、

『永続的な小さな苦労』と『生きるための最低限の愛』だけがあります。

この小さな愛であっても、一回でも楽をすれば、そこで終わりです。


宇宙軍の様な作品は海外では(とくにアメリカでは)ポピュラーなジャンルです。

ジュヴィナイルと言います。

少年向けの作品ジャンルです。

冒険と出会い。ボーイミーツガールですね。

ここから始まり、多くの大人たちを巻き込んで大冒険が始まる。

最後にハッピーエンドを迎えますが、少年だけは意中の女性に認められない。

「ごめんなさい。貴方は違うの。良い友達でいたい。」

とか、

「私は少年の心に残る永遠の幻影なの。」

とか言って去っていくんです。

なんじゃそりゃーと思って納得できないものです。



あるとき、小説のあとがき(解説)を読んでわかりました。

ジュヴィナイルと言うのは、少年が大人になるための通過儀礼を書いたものだそうです。

「大活躍しても最後は意中の女性を手に入れられない。」

というのが公式であり、これ以外はジュヴィナイルじゃないそうです。

メッセージは常に同じです。

「さあ、行きなさい。顔を挙げて。

 新しい世界を感じて心を洗いなさい。

 古い夢は置いていきなさい。

 ドラマは再び始まるんです。

 あの女性はもう思い出なんです。

 きっとどこかで貴方を思い出すでしょう。」

これはとあるジュヴィナイル作品の最後に登場するメッセージです。

恋が報われなくても、冒険を通して自分に宿った力は消えません。

前の自分とは違うという事。

これを知ったとき、体の奥底からまた力がみなぎる。

「今の自分はもっと大きなことが出来るかもしれない。」

それを想像することで、昔の憧れが小さく感じ、ただの懐かしい思い出になってしまう。

そういう意味なんですね。


冒険の途上で成長していなければ、そういう気分にはならないでしょう?

才能だったり、権力だったり、強い武器だったりすると、自分に自信が付きません。

これらは借り物だからです。

(一方で、強い味方はこの後も関係が続くので再現できます。

 これは成長の過程で手に入れた力として良いとなります)

では、そういう精神的成長(知識や経験、忍耐=脳の成長)とは無縁の勝利を

得たらどうなるでしょう?

さっさと賞品を手に入れて巣に戻ろうとしたくなるでしょう。

つまり臆病でせっかちになります。

「もうこんなの偶然だから。二度とないから。きっと罠があるから。

 ここで彼女をモノにしてないと、次は無いから。

 こんなうまい話僕には二度とないから。

 それなのに、最後はスカってどういうこと?

 骨折り損ってこと?」

「いや、骨折ってませんから、かなり楽してますよね。ご都合主義。」

となりますよね。


そのためジュヴィナイルでは、少年は苦戦しなければならず、

自力を伸ばして戦わなければなりません。

想像で怯えていた痛みに対して、現実として体感し、対処を覚えて恐怖を消す。

交友関係や知識によって出来ることを増やしていなければならず、

敵や味方ではなく、利害関係というもので世の中を捉える様になっていないといけない。

これらの過程を現実によくあるイベント、心の機微で描くので面白い(参考になる)わけです。


少年をサポートする強い武器や能力は作品趣旨の害になるので、多用できません。

読み終わった後に、

「僕にだってあんな力があれば。」

とか、

「力が先にないと駄目ってことだよね?」

と誤解されてしまえば、作品の存在自体が無駄になり、害となるからです。

漫画を読んでいると馬鹿になると昔の親が言っていたのはここにあります。

厳しく言えば、

「虫の良い事を考えて、何でも人からもらおうとするな!」

優しく言えば、

「やってみるとそれほど大変じゃないものばかり。

 想像で怯えていた自分がバカバカしくなるよ。」

という事です。


今の私にはリイクニが素敵な女性に見えません。

恐らく、制作サイドの大人たちもそうであると思います。

自分達の思いでの女性を描き、

「あの女性はもう思い出だけど・・・」

と考えながら、少年の心を思い出したんでしょう。

「理由はどうあれ、今のお前の力は嘘じゃない。それでいいじゃないか?」

と教えるものだと解釈しています。


制作サイドの結成メンバーは、さる大学のSF研関係者から派生したそうですね。

つまり宇宙軍は正統派だという事です。

小説ジャンル(物語一般)は、その中に図式、公式が限定されています。

小説というのも定義があります。

(これを逸脱すると名作になる可能性が全くなります。

 そういうものがあらかじめ抽出されて公知になっています)

つまり最初から、リイクニは当て馬であって、ヒロインとして描けなかったんです。


質問者さんの様な感想が出れば、作者冥利に尽きるでしょう。

他にも同じ図式に当てはまる作品があると思いますよ。

「ああ、ジュヴィナイルやりたかったんだなあ」

と思います。


以上、ご参考になれば。
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この回答へのお礼

助かりました

共感ありがとうございます。
シロツグとリイクニには、確かに似たもの同士な感じがします。仕方無しに軍に入る。突然の使命感に皆を巻き込む。シロツグのダメさ加減と、ビラ配りに没頭し、家を壊されても怒らない。なのにシロツグに来てほしい。現実を受け止めないリイクニに接点と呼べるものはくしゃくしゃにして捨てられてしまうだろうあのビラ程度の物だったのかな。二人はひとつになれない。希望的観測が出来るほど余裕がない。戦時下だから。怠情にまかせるシロツグより何かにすがるリイクニに、どうしても感情移入してしまいます。ハッピーエンドは捨てます。このシュヴィナイルで通過したものを大事にしたいです。王立宇宙軍は小説の読後感と似てる。非常に参考になり、なおかつ、知らない分野教えて頂きありがとうございました。(でも、やっぱりリイクニがイノセントでたまりません)

お礼日時:2019/11/30 10:29

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