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「祖父母が孫の監護権を申立てても認めない」とする最高裁初判断による社会的影響

「祖父母が孫の監護権を申立てても認めない」とする最高裁初判断による社会的影響3月31日、最高裁が子供の監護者を指定する申し立ては父母にしかできないとする初判断を示した。これは、当事者である子供が、もしも父母以外を監護者に希望していたとしても認められないことを意味する。

このニュースはテレビや新聞、ラジオ、インターネットなどの大小様々なメディアで大々的に報じられた。そこで今回はこの判断に至る経緯と影響を法律の専門家である井上義之弁護士(富士見坂法律事務所)に話を伺った。

■親権とは「財産監理権+監護権」 監護権とは「子供の世話や教育をする権利義務」


まずはこの判断に至った経緯を聞く前に、そもそも親権や監護権がどんな意味を持つのか整理しておきたい。

「親権とは、子の養育者としての地位に基づく権利義務の総称です。親権の内容としては、一般に、財産管理権と監護権があると解されています。監護権とは、子の身の回りの世話や教育をする権利義務です。通常、監護権は親権の一内容であり、親権者と監護権を有する者(監護者)は一致するのが原則です。もっとも、例えば、父母が離婚した際に経済的に扶養する一方を子の親権者とし、子と同居する他方を監護者とする等、親権者と監護者が別人になることもあり、この場合の親権者は上記の監護権以外の権利義務を有することになります」(井上義之弁護士)

民法では、親権者は子の利益のために監護と教育をする権利があり、義務を負うと規定されている。

■祖母が監護権を求めて家事審判の申立をすることが可能か否か


それでは早速本題となる問題の争点を伺った。

「離婚に伴い未成年の子の親権者となった母に代わって祖母が主に子の世話をしていたところ、母が再婚相手とともに新居で子を養育することを望むようになり、これに対して祖母と子はともに従来通りの同居生活の継続を希望した、というのが事案の概要です。祖母は、子との同居生活を続けるべく、自身を子の監護者に指定するように家庭裁判所に家事審判を申し立てたのですが、そもそも祖母がそのような申立てをすることができるかが問題になりました」(井上義之弁護士)

離婚後、母は多忙であったため祖母が面倒を見ていたという。再婚後、新しい父と子供とのそりは合わなかったようだ。それでも母と再婚相手は子供の養育を望んだが、祖母が反対し、更には子供も祖母に継続して面倒を見てもらいたいと望んでいたという。

■民法に従うか、あるいは子供の利益を優先するかのどちらかだった


最高裁の判断についての解説やそれに至った背景を聞いてみた。

「今回、最高裁は、父母以外からの監護者指定の申立てを認めないと判断しました。もともとこの問題については、民法の規定上は申立できるのは父母と読むのが素直であり他の法令で父母以外の者に申立てを認める規定もないことから祖父母等の申立権を否定する見解と、子の利益を最も重視するのが法の趣旨であるとの見地から事実上子を監護する祖父母等の申立権も認める見解の対立があり、下級審の判断が分かれていたのですが、最高裁は前者の見解に立つことを初めて明らかにしました」(井上義之弁護士)

「民法の規定」と「子供の利益を優先する」の二つのうち、最高裁は前者に基づいて判断したとのこと。

■「父母以外からの監護者指定の申立てを認めない」という決定による社会への影響は?


最後にこの判断がどんな社会的影響を及ぼすか聞いてみた。

「虐待など親権の行使が不適切で子の利益を害する場合については、その状況に応じて、親権の喪失、親権停止及び管理権喪失の審判といった制度が用意されています。そして、親権喪失等の審判があったときは後見が開始します。今回の最高裁の判断後も、祖父母等の親族は、そうした手続を利用するなどして子の適切な養育に関わっていくことはできます」(井上義之弁護士)

今回は祖母による申立が可能か否かについての判断であって、監護者として相応しいかどうかとは無関係である。

「しかし、例えば、子の監護を希望する父母の監護能力に(親権喪失等の申立てをするほどではないが)懸念がある、そして、十分な監護能力のある祖父母が子を心配して監護を希望しており、子も祖父母との生活を望んでいる、といったケースは十分考えられ、そのような状況にある子にとって今回の判断は歓迎できないものといえるでしょう。ただ、今回の最高裁の判断はあくまでも現行法を前提にしたものですので、今後、事実上の監護者である第三者にも監護者指定の申立権を認める方向で法改正がなされる可能性はあります」(井上義之弁護士)

井上義之弁護士は今回の決定によって不利益を被る子供たちがいるかもしれないという可能性を否定していない。また専門家の中には「父母に問題があれば第三者の申立も認めるべきだ」という意見が出てきているとのことで、早期の見直しを期待したい。

●専門家プロフィール:弁護士 井上 義之(第一東京弁護士会) 事務所HP ブログ

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記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
画像提供:ピクスタ
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