■令和5年度分から提出書類の書式が変更
令和5年度分と令和4年度分では、どのような変更があるのだろうか。
「いろいろな点が変更になりましたが、税制度の大きな変更点として、令和5年10月から消費税のインボイス制度が開始されました。これは事業者が“消費税を納めていない事業者(インボイス制度未登録の事業者)”へ支払いをした場合に、支払った事業者の消費税負担が重くなる仕組みです。その関係で申告に必要な書式が変更になり、確定申告書第二表、収支内訳書、青色申告決算書の書式が変更されました」(土屋さん)
令和5年度分は、これまでとは違う書類で確定申告をする必要があるということだ。
「国は納税についても書類の電子化を進めています。令和5年度分からは、前年度の申告の際に税務署から送られた用紙を使用しなかった人に対しては、申告書等の用紙は送られないことになりました。他にも変更点はたくさんあるのですが、基本的には用紙に沿って記載するということに変わりはありません」(土屋さん)
なお、納税に対する疑問は国税庁の公式サイトなど、公共の公式HPから連絡をしても対応してもらえる。困ったときはチャットボットなどから質問してみるのもよいだろう。
■アルバイトの年収が20万円を超えたら確定申告が必要
そもそも確定申告はどのような人がしなくてはいけないのだろうか。
「まず知っておきたいのは、年末調整の存在です。これは簡単にいうと、“所得税の過不足を精算する手続き”のことです。勤務先が年末調整をするということは、所得税の精算が完了するということです。そのため、基本的には会社員やアルバイトなどの給与所得者は確定申告をする必要がありません。一方、年末調整をしていない個人事業主は、原則として確定申告をしなければいけません」(土屋さん)
ただし、会社員やアルバイトでも確定申告が必要なケースはあるという。
「給与の年間収入が2,000万円を超える場合は、会社で年末調整を行えないので各自で確定申告をするのが基本です。その他よくあるケースでは、不動産収入や副業などの主な給与以外の所得が20万円を超える場合です。そのようなケースでも、確定申告をしなければいけません」(土屋さん)
仕事以外で利益を得た場合も同様だとか。
「“土地や建物を売却した”、“株取引やFXなどで一定の利益がある”、“同族会社の役員やその親族などで、その会社から貸付金の利子や家賃の収入がある”というケースでは、確定申告をする必要があります。なお、これらは細かい条件が設定されていることがあります。該当しそうな方は、国税庁の公式サイトなどでしっかりと確認しましょう」(土屋さん)
副収入といえば、NISAが人気となっているが、NISAで得た利益には税金がかからないため、確定申告は必要ないとのことだ。
■医療費を多く支払った人は得をする可能性がある
必要はなくても、“確定申告をすると得をするケース”も気になるところだ。
「控除の対象にお金を使っていると、それは所得から引いてよいということになっています。税金は所得に比例して高くなるため、支払う税金の金額が低くなるということです」(土屋さん)
具体的にはどのようなケースがあるのだろうか。
「“本人や配偶者など、生計を一にする親族のために支払った医療費が10万円を超える場合”、“ふるさと納税や特定の団体への寄付として2,000円を超えて支払った場合”、“住宅ローンを利用して、マイホームの購入、新築または増改築等した場合”、“株式の売買で損益を通算する場合”は、確定申告をすることで定められた金額が還付されます。つまり、一度支払った税金の一部が戻ってくることがあるのです。こちらも細かい条件がありますので、国税庁の公式サイトなどで確認するとよいですよ」(土屋さん)
面倒なイメージのある確定申告だが、しっかりと行うことで、本来受けられる控除を漏れなく受け取ることができる。また、確定申告をしなくてはいけない人が申告をしないと、あとから加算税や延滞税が課されるリスクがある。自分自身の状況を確認し適切に確定申告をすることで、気持ちよく来年度を迎えよう。
●専門家プロフィール:土屋貴史
埼玉県川越市にある土屋貴史税理士事務所の所長。土屋貴史税理士事務所は軽快なフットワークと、旧来の慣習にとらわれない柔軟性が特長で、顧客の要望にしっかりと対応できる体制を整えている。
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