
釣りはオールシーズン可能だが、間もなく迎える春ではメバルやスズキ、マダイが旬となる。もしも今春に釣りを検討している人がいるならば、ぜひ今回取り上げる「釣りと密漁の違い」を理解していただけたら嬉しい。
■密漁に明確な定義はない
釣りと密漁の違いについて、ご自身もアウトドアが好きだという富士見坂法律事務所の井上義之弁護士はこのように話してくれた。
「『密漁』を定義した法令は見当たりませんが、一般的な用語法として、法令で禁止されている漁を行うことを密漁と言ってよいと思います」(井上義之弁護士)
密漁に明確な定義はなかった。ではどのような行為が禁止されているのだろうか。
(1)アワビやナマコ、13cm以下のうなぎなどはNG
「権限なく特定水産動植物(アワビ、ナマコ、全長13cm以下のうなぎ)を採捕する行為は全国的に禁止です(漁業法132条1項)。この違反には3年以下の懲役又は3,000万円以下の罰金という非常に重い罰則が定められています」(井上義之弁護士)
(2)漁業権対象のアサリなどの貝類、わかめなどの海藻類、タコやエビなどもNG
「当該地域の漁業権の対象となる水産動植物(アサリなどの貝類・ワカメなどの海藻類・タコやエビなど)を権限なく採捕する行為も禁止です(漁業法195条)。罰則は100万円以下の罰金です」(井上義之弁護士)
(3)特定の地域や時期、大きさ、採捕の方法次第ではアウト
「各自治体の実情に合わせて、特定地域における採捕行為が禁止されていたり、採捕自体は可能でも採捕時期・大きさ・採捕の方法などが制限される場合があります。例えば、関西国際空港島周辺の一定区域では水産動植物の採捕が禁止されており(大阪府産業調整規則38条2号)、6月以下の懲役又は10万以下の罰金(又は併科)という罰則があります。また、神奈川県では1月1日から5月31日の間及び10月15日から11月30日の間は鮎の採捕が禁止され(神奈川県漁業調整規則38条1項)、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金という罰則があります」(井上義之弁護士)
■つまりレジャー目的の釣りでも法令違反であればアウト
ただただレジャーで釣りをしているつもりが、実は法令違反だったなんてこともありえるのだろうか。
「釣りも漁の一種ですから、それが法令で禁止されている場合は密漁になります。例えば、先ほど説明した通り、全長13cm以下のうなぎは採捕できません。意図せず釣り針にかかった場合はリリースする必要があります。また、各自治体の定めるルールに反する場合も密漁になります」(井上義之弁護士)
■密漁とならないようにできること
密漁とならないように、私達にできることはなんだろうか。
「遊漁(営利を目的とせずレジャーとして水産動植物を採捕する行為)のルールは自治体により異なり、かつ、複雑です。そこで、例えば、釣りに出かける前に「〇〇県(予定地) 遊漁」といったキーワードでウェブ検索し、各自治体による解説を確認する等の対策が有効です。多くの自治体は、図解や地図なども交えて比較的わかりやすくその地域における遊漁のルールを説明しています。 また、漁業権との抵触が問題となる場合は、漁業権の範囲について、「海洋状況表示システム」で確認するのも有効です」(井上義之弁護士)
専門家プロフィール:弁護士 井上義之 事務所HP ブログ
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ライター o4o7
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