
■結婚前、相手に自分の貯金額を伝えるべき?
晴れて結婚が決まったら、結婚式や新生活準備など、何かと物入りになることが予想される。お互い、独身時代の貯金があるだろうが、その金額を結婚相手に伝えるべきだろうか。
「原則として、伝えた方がよいでしょう。理由は、結婚時に家計が『資本金ゼロ円状態』だと、大きな買い物をすることができず不便だからです。これから生計を営んでいく上で、『資本金』として家計に繰り入れる貯金額については、きちんと伝え合うべきでしょう」(菅原さん)
菅原さんは「負債」がある場合も、婚約者に忘れずに伝えておくべきだと教えてくれた。
「車など、大きな物をローンで購入している場合は、いわゆる『マイナスの財産』であり、その支払いも含めて今後の家計を考える必要があるため、きちんと共有しましょう」(菅原さん)
車以外にも、住宅や趣味に関する物など、収入に比例して多くのものや高額のものを持っている場合は、より気を付けたい。
■結婚資金や結婚後のお金の使い方で、争いに発展した例
結婚生活には、家賃や家のローンをはじめ、さまざまな費用が必要になる。そのため、独身時代の貯金を結婚後の資金に回すのだが、そこで不平等が起こり、争い事に発展することがあるようだ。
「結婚生活に必要なものを、どちらかの貯金で購入すると、お金を出した側の意見や好みを尊重せざるを得ません。お金を持っているかどうかに関わらず、夫婦の力関係は対等でありたいものです。基本的に、結婚前の貯金は個人の財産です。しかしそれを結婚生活の資金にするのなら、二人で大切に使っていこうという考え方が必要です」(菅原さん)
先に触れた「負債」が、夫婦の争い事に発展した事例があるそうなので、さらに聞いた。
「大学や専門学校などで利用した奨学金の返済があるにも関わらず、『負債』という意識が薄く、結婚相手に伝えなかったため、家計のやり繰りに苦しんだカップルがいました。こういったことで喧嘩や離婚に発展することもありますので、要注意です」(菅原さん)
妻の個人的な貯金を、夫の奨学金返済に充てざるを得なかったら、もめて当然かもしれない。忘れず情報共有し、どのように返済していくか話し合うべきだろう。
■争いの火種にしないために……
結婚後、お金のことで争うことのないよう、気を付けるべきことについて教えてもらった。
「嘘をついたり隠し事をすると、つじつまを合わせるのに苦労しがちです。相手を信頼して結婚するのですから、正直であることが大切であり、結果的にそれが一番楽なはずです。家計に回してもよい貯金や負債の情報などは、相手に公開した方がよいでしょう。もちろん、正直になることで責任が軽くなるわけではありませんし、片働きにしろ共働きにしろ、お互いに感謝の気持ちを忘れずにいることが大切です。また、貯金や収入の多い側が『自分が(多く)払ってやっている』というセリフを吐いたりすることのないよう、配慮しましょう」(菅原さん)
基本的には、結婚前の貯金はそれぞれの財産であり、結婚後の収入は夫婦の共有財産。どのように使い、やりくりするかは、互いの理解や納得のもと決定していきたい。そうすることで、充実した結婚生活を送ることができるのだろう。
●専門家プロフィール:菅原 直子
ファイナンシャルプランナー。会計事務所向けオフコン販売や、外資系生命保険会社などを経て、湘南らいふでざいん菅原おふぃす主宰。主に、教育資金や生涯設計についての相談を受けながら、上手にお金と付き合い人生をエンジョイする方法を提案。