
近年、遺骨の忘れ物が増えているという。忘れる場所は電車の網棚やコインロッカー、個室トイレが多い。ちなみに網棚に置かれた場合は網棚葬、コインロッカーの場合はコインロッカー葬などと呼ばれており、いかにも忘れ物をしてしまいそうな場所ではあるが、実は忘れたのではなく意図的に置き去ったのではないかという見方が強い。なぜなら遺骨は遺棄してしまうと罪に問われるため、あくまでも忘れ物であることを装いたいからだ。
「教えて!goo」に「人間の遺骨入り骨壷を合法的に無料で処分するにはどうすればいいですか?」というタイトルで質問が寄せられているが、遺骨の取り扱いで悩んでいる人は一定数いるようだ。
■遺骨の忘れ物が増えている理由
遺骨の諸問題について、全国的に葬儀サービスを展開している心に残る家族葬の葬儀アドバイザーに話を聞いてきた。
「体感ですが『遺骨を引き取って貰いたいんですがどうすればいいですか?』という相談は増えていると感じています」(葬儀アドバイザー)
やはり遺骨を引き取りたくない、あるいは引き取れないという方は増えているのだろう。ではなぜこのような問題が起こっているのだろうか。
「一言で申し上げられるほど簡単ではありませんが、『単身世帯の増加、家族制度の変容、少子高齢化、貧困化、お墓が安くない上に維持し続ける難易度が高い』などがあげられると思います」(葬儀アドバイザー)
ちなみに遺骨遺棄は、死体遺棄罪として3年以下の懲役に処される。
■遺骨を引き取りたくない、引き取れない場合の救済策
国立社会保障・人口問題研究所によると2035年に単身世帯は全体の37.2%を占めるとのことで、今後ますます遺骨を引き取りたくない、あるいは引き取れないという人は増えそうだが、この問題の対策はあるのだろうか。
【ご自身で葬儀をしたケース】
「ご自身で葬儀の手配をし、火葬後に遺骨を引き取りたくない場合は、火葬場や自治体によっては、遺骨を引き取ってもらえます。火葬場や自治体によるので、事前に確認は必要です」(葬儀アドバイザー)
【自治体や警察から連絡がきて初めて亡くなったことを知ったケース】
「不慮の事故や事件、孤独死で亡くなると、その方の身元を警察や自治体が調べ、その遺族に遺骨の引取について連絡がきます。その際、生前から音信不通であったことや疎遠であったことなどを理由に受け取りを拒否できることがあります」(葬儀アドバイザー)
■忘れ物となった遺骨や、受け取り拒否となった遺骨は行政が供養する
落とし主が見つからない遺骨や、遺族から受け取り拒否を受けた遺骨はその後どうなるのだろうか。
「自治体が引き取り、自治体が運営する墓地や納骨堂に安置されます。しかし近年はその件数が増えており各自治体は対応に苦慮しているそうです」
【東京都葛飾区】
「東京都葛飾区では引き取り手が見つからない遺骨の安置期間を短くし、増え続ける遺骨の問題に対応しているそうです」(葬儀アドバイザー)
【茨城県水戸市】
「水戸市では合葬式墓地を新たに作ることが決定しています」(葬儀アドバイザー)
【神奈川県横須賀市】
「横須賀市は単身で身寄りがない高齢市民を対象に、死後の葬儀や納骨についての意思を聞き取り、引き取り手のない遺骨問題を根本から解決しようとしています」(葬儀アドバイザー)
置き去りにされた遺骨、受取拒否された遺骨は今後ますます増えるだろう。となれば、供養や弔いは行政が担う時代がやってくるのもそう遠くはないのかもしれない。
専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
火葬料も含まれた追加費用のかからない格安な家族葬を税込み14万3000円から全国で執り行っている。24時間365日受け付けており、寺院の手配や葬儀後の各種手続きなどのアフタフォローにも対応。
記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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