■『天皇の料理番』(2015年)TBS
原作は杉森久英の小説で、これまでに3度ドラマ化されているが、今回は「TBSテレビ60周年特別企画」として2015年に放送された佐藤健主演作を紹介。
時は明治37年。何をしても長続きしない青年が西洋料理に出会い、人間として、料理人として成長し、宮内省の総料理長を務めるまでの半生を描いた。カツレツをはじめ、画面の向こうから良い匂いがしてきそうな料理はもちろん、すべて佐藤健自身が行ったという美しい包丁さばきにも思わず見とれてしまう。これほど最終話がこないで欲しいと思った作品は他になく、個人的には2000年代放送ドラマの最高傑作。
■『Chef~三ツ星の給食~』(2016年)フジテレビ
三ツ星レストランの天才女性フレンチシェフがある日オーナーとトラブルを起こし、店を追われることに。オーナーの陰謀により料理界からも追放された彼女の新しい職場は、なんと小学校の給食センターだった――。
主演は、「どんな逆境でも前を向いて闘うカッコイイ女性」を演じさせたら右に出るものはいない天海祐希。栄養価、予算、大人と子どもの味覚の違いなど、多くの壁を乗り越えて学校給食の改革に挑む。三ツ星シェフが作るナポリタンやオニオングラタンスープなど、「こんな学校給食なら食べてみたい」と思った人も多いはず。前向きな名言の数々にも元気を貰える。
■『みをつくし料理帖』(2017年)NHK
土曜夜6時5分、全8回とひっそり放送していた時代ドラマだが、完成度は抜群。主役の黒木華ほか、森山未來、永山絢斗、安田成美、小日向文世、麻生祐未、成海璃子、萩原聖人と実力派の出演者が名を連ねた。寒鰆の昆布締めなど、「日本食って良いなぁ」としみじみ感じられる、素朴で温かい気持ちになる料理が毎回登場。物語の最後には、その回に登場した料理のレシピと作り方を黒木華が紹介するコーナーがあるので、ぜひ参考にして作ってみて欲しい。
■『ランチの女王』(2002年)フジテレビ
竹内結子演じるワケあり女性が、ひょんなことから洋食店に居候を開始。堤真一、江口洋介、妻夫木聡、山下智久らイケメン4兄弟に取り合われる――という、これだけ聞くと女性の夢が詰まっただけの話のようだが、物語の重要なテーマとなるのが「辛いことがあっても、昼休みに美味しいランチを食べるだけで人は頑張れる」。働くすべての人に観て欲しい作品だ。
オムライスにクリームコロッケ、ハンバーグ、カツサンドなど、毎回これでもか!と言わんばかりの誘惑が続く。当時は月曜9時放送だったが、観終わるたびに何か食べていた記憶が……。
■『王様のレストラン』(1995年)フジテレビ
ラストは、23年前の名作ドラマをご紹介。舞台は、一流シェフだったオーナーの死後、活気を失ってしまったフレンチレストラン。そこに伝説のギャルソンが舞い戻り、再び店を一流レストランにすべく、スタッフと衝突しながら、ともに成長していく。主演は九代目松本幸四郎、彼の手腕により才能を開花させていく女性シェフに山口智子と、今では考えられない超豪華キャスト。ひと癖もふた癖もある魅力的な登場人物やクスッと笑える展開など、脚本家・三谷幸喜ワールドが全開で、時を経ても色褪せない作品だ。
ちなみに、劇中に登場した「オマール海老のびっくりムース」は、当時実際に食べることができたが、現在その店は閉店している。しかし、落ち込むことなかれ! 実は撮影が行われたのは東京・代官山にある「マダム・トキ」という今も実在するフレンチレストラン。料理は別物だが、重厚なインテリアなど雰囲気はドラマのまま。季節の食材を使った料理とワインを楽しみながら、思いを馳せてみてはいかが?
いかがだっただろうか? 料理だけでなく、人間ドラマも見ごたえがある作品ばかりなので、食欲の秋にぜひ楽しんで観て欲しい。
(酒井理恵)