
■お墓の2大転換期~明治&核家族化~
まずはお墓の在り方について、「心に残る家族葬」を行う葬儀アドバイザーは、日本での歴史は意外にも浅く、明治に今の形式が導入され、1980年代ごろに定着し始めたと述べる。
「お墓を縄文時代以降から見てみると、大きな転換期が明治時代にあります。それまで一般的な人々のお墓は「土葬・共同体型」が基本でした。当時は亡くなった方を村や町全体で葬儀をして弔い、共同墓地に土葬していました。そのため、現在のような「○○家之墓」という墓標もなければ、遺骨の回収も浸透していませんでした」
つまり、我々が教科書で見た古墳や有名貴族や大名のお墓という、個人のお墓の存在は時代的に特異なものだった。では明治になると、どのように墓石のお墓が導入されるのか。
「明治になると、江戸末期から懸念されていた都市での土地問題が大きくなりました。土葬にはそれなりの土地が必要で、人口が増え続ける土地では住宅地と競合していたのです。また政府も、伝染病を危惧して火葬を法令化しました。同時に明治民法下の家制度では、これまでの共同体は家へと細分化され、ここに火葬した遺骨のみを納める「○○家之墓」というお墓の基礎が生まれました。しかし、これはすぐには全国化せず、火葬率が90%を超える1980年代、高度経済成長が完了して全国的に都市化が進んだころに火葬と墓石も全国化しました。ここにもやはり、住宅と墓地という土地問題が横たわっていたのでしょう」
まとめると、火葬と現在の「○○家之墓」という墓石の定着には、増え続ける住宅地に対応するために墓地を省スペース化したという歴史が必要だったのだ。
■土地が墓地で埋まる時代が来てしまうのか?
ここで1つの疑問が生まれる。これからの高齢化の時代では、死者はますます増えていく。すると、墓地が死者でいっぱいになってしまうという事態が起こるのではないだろうか。葬儀アドバイザーは埋葬が多様化する現状において、まずその心配はないと推測する。
「この問題は2つの方向から解消へ向かうでしょう。1つは更なる省スペース化です。最近ではお墓を持たず、遺骨だけ残しておいて時節に合わせてお参りしたいという方のための納骨堂が多くあります。立体駐車場のように設計できる納骨堂は、大量の遺骨を納めることができます。もう1つは、墓地に拘らない埋葬の多様化です。さまざまなメディアで紹介されてきた結果、人々の埋葬観には少しずつ変化が起こっています。例えば散骨や樹木葬、遺骨アクセサリーなど、そもそもお墓を必要としない弔い方も浸透してきています。このように来るべき問題には、埋葬の技術と観念の両面から対応がされています」
核家族化が進展し、家制度からさらに細分化された現代では、「○○家之墓」を受け継いでいくには限界がある。お墓に新たな対応がなされている一方で、墓じまいの数も増えているのが現実である。
■今が第3の転換期なのか?
お墓や死者を弔う行為は、いつか私たちが死に直面したときに、それまでの生を意味付けする死生観のうえで、なくてはならない存在である。すなわち容易く切り捨てることはできないが、懸念されている問題もある。明治、1980年代を経て、私たちはさまざまな生活上の変化を目の当たりにしてきた。コンピュータの誕生は、私たちの文明に「非物質」を当たり前にする衝撃だった。ここにおいて、明治以来の形を残して鎮座するお墓にも3つめの転換が必要ではないのか。
専門家プロフィール:心に残る家族葬
故人の家族と生前に親しかった方だけで行う家族葬こそが、故人との最後の時間を大切に
過ごしたいという方に向いていると考え、従来の葬儀とは一線を画した、追加費用のかか
らない格安な家族葬を全国で執り行っている。