■まずは反論せず、妻の話に耳を傾ける
お話を伺ったのは、なかもり法務相談事務所の行政書士、中森さん。妻が怒りを露わにした場合、まず大事なのは「反撃しないこと」。
「妻の意見や主張にひたすら耳を傾けます。『聞く』ではなく『聴く』です。妻の話に途中で割り込んではいけません。なので、15~30分間は妻の言葉によるサンドバック状態を覚悟しましょう」(中森さん)
注意すべきは、「言い返すのも面倒だからとりあえず聞いておこう」という意味の受動的な「聞く」とは違うということ。このような態度は確実に相手に伝わるので注意しよう。そうではなく、大事なのは相手の話を意識して能動的に「聴く」。
「基本的に、妻は夫に話を受け止めて欲しい存在です。しかし、妻が何か言おうとしてもしっかり最後まで話を聞かずに、すぐに分析したり自分の意見を並べ立てる夫が多いのも事実。ここでは、まずはひたすら『聴く』ことに徹します。しかし、どうしても自分の意見を伝えたい場合は話を聴いた後に『私は○○だと思う』と自分を主語とした表現方法(アイ・メッセージ)を用いるようにします」(中森さん)
アイ・メッセージの対義語は、「あなた」を主語にしたユー・メッセージ。例えば、「どうして(あなたは)そんなに怒るんだよ」はユー・メッセージ。「そんなに怒られると(私は)悲しくなっちゃうよ」がアイ・メッセージ。前者の場合は非難しているように受け取られることもあるが、後者は自分の気持ちを言っているだけなので揉め事に発展しにくい。
■料理をすると感情に振り回されにくくなる?
また、自分の意見を述べる上で、妻の「怒りの源」はどこからくるのかを知ることも大切。
「妻は何に対して腹を立てているのでしょうか? 夫、子ども、仕事、親との確執、性格……。一緒に暮らしていても、意外と妻のことやその生い立ちは知らないものです。妻の両親や専門家に相談してみるのも一つの方法です。原因が分かれば怒りっぽい妻への対処法も見いだせるかもしれません」(中森さん)
さらに、妻に何を働きかけるのではなく、自分自身でできる対策について教えてもらった。
「料理をつくりましょう。男性の場合、お金を稼ぐ=経済的自立はできていても、生活的自立(家事・育児等をひとりで行う力)は妻のお世話にどっぷり依存して、何もしない・できない方がいます。身の回りのことを自分でできる力を身に付けることは、夫の妻への依存度を低くします。特に家事の中で大きなウェイトを占める『料理をつくる』ことは家事力が身に付き、生活面で夫の自立心が養われます。自立心が養われると妻の怒りっぽい感情に振り回されにくくなります」(中森さん)
最後に、怒りっぽい妻に悩む夫へメッセージをいただいた。
「何をやってもダメなら怒らせておくしかない……けれども相手を見守る姿勢は持ち続けることが大事です!」(中森さん)
どちらか一方が100%悪いと言い切れないのが夫婦というもの。離婚を考えるほどではない場合、突き放すのではなく、見守ることが大切なようだ。
●専門家プロフィール:中森 豊
行政書士 なかもり法務相談事務所代表。「産後クライシス」による自身の離婚危機の経験から、夫婦修復や円満離婚に向けたカウンセリングを行っている。法律では解決できない夫婦や子どもの問題に取り組み、特に子どもと離れ離れになったり、孤立しがちな男性向けの相談やカウンセリングが得意。年間約100件の相談実績あり。1974年生まれ、広島市在住。
(酒井理恵)