■ときには家庭の外にも目を向ける
人は同じ家で生活していたとしても、当然ながら職種も違えば趣味や考え方も異なる。そのような状況下で、どうやって相手と折り合いを付けていけばよいのだろうか。
「今は、誰もが新しい行動様式を踏まえて、制限のある生活や今までにない価値観のもとに生活していかなければならない状況です。すべてが違って当たり前からスタートすべきですね。その中で『コロナ禍だから』という考え方ではなく、『人と人』として理解し合ったり、お互いの価値観を認めたりすることが大切になるでしょう。」(浅賀さん)
家族であっても、考え方に違いがあることを受け止めることが大切だ。
「しかし現実問題として、職種の違いをはじめ、個人の情報処理能力や規範意識の差でも食い違いが生まれてきます。立場や価値観によってするべきことが違うと理解し、行動するためには『答えは一つではない』ということを知ることも大切です。世間ではテレワークが推奨されていますが、そもそもオンラインでできる仕事もあれば、できない仕事もあります。普通の人が寝ている時間に、危険や犠牲を払って人のために働いている人もいます。家族や同居人に限らず、自分と違った生活形態の人がいるということを意識しましょう」(浅賀さん)
家族との衝突が増えてきたら、世の中にはもっと多種多様な職業や考え方があると、外にも目を向けてみてはいかがだろうか。
■互いの事情を理解するため歩み寄る
気詰まりが続く生活の中で、家族や同居人への配慮を欠いてしまうこともあるだろう。そんなときは、どのようにすればよいのだろうか。
「そもそも『事情を理解し合えない理由は何なのか』、個々の違いを理解しましょう。そして感染拡大を防いで命を守るために、それぞれがすべきこと、した方がよいことを考えましょう。個々の違いを知ったら、それをどのように受け入れたらよいのかを考えます。もちろん、意見の違いや考え方の違いはあるでしょう。しかし今は自分たち、ひいては世の中の人々の命を守るということが最優先される時代です。『命を守る』ことについて協力できない人とは、同居を解消することも視野に入れた方がよいですね。相手と話をして、それでも理解し合えない関係だとすれば、一緒にいる意味がないでしょう」(浅賀さん)
まずは対話を行い、少しでも相手を理解できるように歩み寄ることが大切だ。それでも難しい場合は、思い切って距離を置くことも必要かもしれない。
「相手に気を遣うのではなく『気を配る』という考え方がよいと思います。お互いの関係性の質を高めるためには、『相手を理解する』ことが大事です。そしてどうすべきなのかを話し合い、『よい関係になるために何を目的にしているのか』ということを考えましょう。その目的を達成するために、どんな考え方を優先させ、どんな効果的な行動を取るかを話し合って確認することが第一歩です。話し合いもせず、それぞれの立場からバラバラの考えを言い合っても解決はしません」(浅賀さん)
目先の小さなことだけに囚われるのはよくない。視野を広く長期の目線で、これからどういう関係性を築きたいのかも含めて話し合いをすることが大切だろう。
●専門家プロフィール:浅賀 公彦(HAPPY親子塾)
「夢を持って生きて欲しい」の理念のもと、教職を38年続け、関わった生徒数は8,000人以上にものぼる。教職を定年退職後、親子関係の悩みに焦点をあてた「HAPPY親子塾」を開設。生徒やその家庭、さらには教員の相談にのる活動を続ける。