■はじめて犬を飼うときに、まずしなくてはならないこと
最初にしなければならないことはなんだろう。
「犬は毎日の世話が必要な生き物で、犬を迎えると生活がガラリと変わります。留守番している犬が心配、旅行に行きづらくなるなど、多くの場面で生活に影響を及ぼします。また子犬から飼いはじめ火葬するまで、犬の一生には約350万円かかるといわれています。いろいろなリスクや制約があってもなお、犬を飼う覚悟を持てる人が飼うべきだと考えます」(寺内さん)
350万円もかかるとは、それなりの覚悟が必要だ。お金や時間のほかにも、気をつけることがあるだろうか。
「はじめて犬を飼う場合は、アレルギー検査を受けることをおすすめします。飼いはじめたものの、家族にアレルギーがあって……という話をよく耳にします」(寺内さん)
飼いはじめてから泣く泣く手放すことにならないためにも、前もって検査しておくほうが無難だろう。
■初心者におすすめの犬種は?
家族の一員になろうというペット。お互いにストレスなく過ごしたい。どんな犬種が飼いやすいだろうか。
「犬の大小にかかわらず、犬の寿命は伸びる傾向にあります。高齢者が犬を飼いはじめる場合、自分自身の健康寿命を勘案する必要があるでしょう。それはどんなに小さな犬でも、1日2回散歩に連れて行ってほしいからです。高齢者の場合、ある程度しつけされた成犬を譲り受けるのもよいでしょう。引っ張られても転倒しないサイズの犬種を選びたいですが、個体差がありますので犬種だけでは確実な答えは出せません」(寺内さん)
1日2回の散歩を毎日するのは、なかなかの負担だ。犬の寿命が延びるのは飼い主にとっては嬉しいが、お世話する期間が延びると、診療代なども出てくる。病気しにくい犬種などはあるだろうか。
「どの犬でも、なりやすい病気や遺伝的疾患があります。善良なブリーダーは両親の遺伝子検査をしっかりし、リスクを説明してくれるので、そういうことを判断基準にすることも有効です。丈夫さでいえば、ミックス犬が犬種固有の病気が出にくいメリットがあります。ただミックス犬は血統書がなく、生年月日がわからない場合もあります」(寺内さん)
飼う前に、犬種特有の病気について調べておきたい。
■衝動買い(飼い)はダメ、現代の犬の新生活に必要なものとは?
最近は外で飼われる犬を見かけなくなったように思う。やはり室内で飼う人が増えているのだろうか。
「犬はもともと、小さな群れを作って生活する生き物です。家族から離れて外で生活させるのは根本的に合わないようです。現代では外で吠えられるのは迷惑と捉えられることも多いです。私自身4頭飼っていますが、みんな室内です。室内のスペースは広くなくて大丈夫です。一緒にいることで犬も安心します」(寺内さん)
昔は番犬として犬は外にいたものだが、現代では室内が主流だ。その際に必要な道具も聞いてみた。
「最低限必要なものとしては、サークル、クレート、ステンレス製の食器、受け皿があるタイプの給水器、トイレ、トイレシート、リード、首輪やハーネス、サイズに合ったおもちゃ、歯磨きシート、家に来るまでの環境で食べていたドッグフードでしょうか」(寺内さん)
犬の新生活にはたくさんの道具が必要だ。寺内さんはさらにこのように続けてくれた。
「犬は私たち人間を頼りに生きるので、飼い主次第で犬の一生が決まります。命を預かる以上、衝動買い(飼い)や、とりあえず、と安易な気持ちで飼いはじめてはいけません。かわいそうだから、期限がもうないから、と先のことを深く考えず保護犬を迎えてしまうのも無責任です。犬は一緒に暮らし始めたら家族です。よく考えてから犬を迎えましょう」(寺内さん)
犬を飼いはじめるためには、金銭的にも時間的にも制約が生まれるという覚悟と、最後まで面倒みる責任が大切だと実感した。確かに子犬はかわいいが、犬の一生と自分の生活を考えてから飼いはじめる必要があるだろう。
●専門家プロフィール:寺内雄司
八王子市で犬と人の学び場ポケットを運営。家庭犬訓練士やシッター等の資格を持ちドッグトレーニング・ペットシッター・ペットホテル等、飼い主をトータルサポート。ホテルは最高の3つ星受賞。2019年家庭犬訓練競技会グループ優勝。