■ ご近所に挨拶すべきタイミング
犬を飼うとなると、まず気になるのがご近所への配慮だ。苦情を言われないために、どのようなことをすべきだろうか。
「飼うか飼わないか、いずれの選択肢も視野に入れているなら、ご近所の雰囲気を伺ってもかまわないのですが、どうしても飼いたい場合は事後報告のほうがよいです。反対されたのに結局飼うとなると、余計に嫌な印象を与えてしまうからです」(寺内さん)
あえて事前に近所の反応を伺う必要はなさそうだ。
「飼うことを決めてから両隣に声をかけるくらいでよいでしょう。ただ、挨拶前にひどく吠えたり、近所に粗相をしてしまってからでは印象が悪くなるので、愛犬が来たらすぐに挨拶に行くのが望ましいです」(寺内さん)
犬の存在を知らせることで、得られるメリットもあるのではないか。
「ご近所が動物好きなら、世話を焼いてくれるかもしれません。また、留守のときに迷惑をかけていないかの確認や、万一脱走などしてしまったときにも尋ねやすいでしょう」(寺内さん)
■ 犬が吠え続けたときや公共スペースでの粗相への対処法
飼いはじめはきっと、愛犬に手を焼いてしまうこともあるだろう。吠え続けたりしたら、どのような対応をとるべきだろうか。
「はじめての環境に、見知らぬ人。当然、犬も不安になります。想像以上に犬が吠え続けると、飼い主も近隣からの苦情が出るのではと不安になり犬を叱ってしまいがちです。狭いクレートに入れて布で暗く包み、吠えたら上から叩くという方法は手っ取り早いですが、私はおすすめしません」(寺内さん)
クレートに追い込むことは常套手段のように思えるが、どのような理由があるのだろう。
「そうすることでクレートが嫌いになり、不安な子を一層大きな不安で抑圧する精神的なリスクがあるからです。その後の関係性にまで影響することも考えられます。犬は鳴く生き物ですし、当たり前の行動、表現をしているだけなのです。吠えないように優しく一緒にいてあげてほしいです」(寺内さん)
飼いはじめは特に、予想していなかった負担が出てくることもあるだろう。そういった手間や時間がかかることを予想し、ゆとりをもって飼いはじめたい。
排せつについてはどうだろう。これについては、飼い始めたその日からケアが必要になる。しつける前に粗相してしまうのではないか。
「まずはお住まいの環境で、違反になるものを確認しましょう。最近は共有スペースでは必ず抱っこ、またはクレートなどに入れて運ばなくてはいけないところも増えました。マーキングや抜け毛の放置など、飼い主以外に不愉快な思いをさせてしまう問題が起きるからです。もしもペットが粗相をしてしまったらウンチなら拾い、オシッコなら多くの水でしっかり流します。大型犬だと2Lでも足りないことが多いです。自治体により犬猫の排せつは各家庭で処理するよう指導しているところが多く、外での排せつ自体が問題視される傾向があります」(寺内さん)
愛犬の同伴が可能なお店やカフェが増え、ペットが多くの場所で受け入れられていると思いきや、共有スペースでの厳しいルールも増えている。共存するためには、ペットにも社会性が求められているということのようだ。これから家族になるのだから、余裕をもって万全の体制で愛犬を受け入れたい。
●専門家プロフィール:寺内雄司
八王子市で犬と人の学び場、ポケットを運営。家庭犬訓練士やシッター等の資格を持ちドックトレーニング・ペットシッター・ペットホテル等、飼い主をトータルサポート。ホテルは最高の3つ星受賞。2019年家庭犬訓練競技会グループ優勝。