しかし、時間の経過とともに社葬・一般葬・密葬だけではニーズを満たすことができなくなった。核家族化や少子高齢化、隣近所との関係の希薄化、デフレ、賃金停滞など社会を取り巻く環境は大きく変化した。さらに社会儀礼の遂行よりも、個人の意思が尊重されるようになっていった。その結果、家族葬が生まれた。
しかしこれも長くは続かないかもしれない。なぜなら新型コロナが流行しているからだ。そこで今回は新型コロナが与えた影響と、今後の葬儀の在り方や業界の見通しについて、心に残る家族葬というサービスを全国で展開している葬儀アドバイザーに話を聞いた。
■死亡者増えるが、市場規模の成長率は鈍化
「たとえば飲食産業は人(胃袋)の数がそのまま市場規模となりますので、人口減は大きな不安材料になると思いますが、葬儀業界は逆で、不謹慎に聞こえるかもしれませんが、人口減であればあるほど成長します。ただ日本国内において、死者数は増加していますが、市場規模の伸び率は鈍化しておりそれに見合っているとは言い難い状況です」(葬儀アドバイザー)
死者数の増加と葬儀業界の成長率がリンクするのは理解できたが、多死社会の日本でどうして葬儀業界は伸び悩んでいるのだろうか。
「葬儀1回当たりの売上が減少したことが理由です。家族葬誕生前の葬儀は数百万円かかることが珍しくなかったのですが、現在流行している家族葬は20万〜50万程度で、単純に収益性が下がりました。今後、以前のような高い費用をかけて行う葬儀が再び流行る可能性は殆ど無いでしょう」(葬儀アドバイザー)
■大規模葬儀の息の根を止める新型コロナ
新型コロナ流行は葬儀業界にどのような影響を与えているのだろうか。
「新型コロナ流行前は、以前のような高い費用をかけておこなう一般葬を希望される方々もいらっしゃったのですが、新型コロナの流行で、それも殆どなくなりました。もっと言えば小規模であっても密回避を理由に通夜や告別式を行う葬儀さえ減り、現在は火葬のみを行うケースが圧倒的に増えています」(葬儀アドバイザー)
小規模化はとどまることなく、なんと通夜や告別式すら行われなくなってきているという。
■葬儀業界のトレンド
下げ止まらない葬儀単価、増加する死者数。こういった状況の中で葬儀社はどのような戦略をとっているのだろうか。
「ご存知の方もいると思いますが、地方の葬儀会館は非常に大きいです。大きい理由は数百名規模の一般葬を想定する必要があったからです。しかし新型コロナの影響で、大きな葬儀会館を維持所有する必要性はかなり低くなっています」(葬儀アドバイザー)
しかし、会館のない葬儀社では会館を持つ葬儀社に競争力で劣りそうだ。会館はあったほうがいいような気がするのだがどうだろうか。
「借りているようです。小規模な葬儀に見合った物件を、自前で建てるのではなく賃貸で借りて、葬儀用にリフォームして、それでしばらく運用してみて、採算が合えば継続、合わなければまた別を探す、という戦略をとっているようです。ただし、葬儀を目的に貸してくれる物件は少ないようで、これはこれで大変だそうです」(葬儀アドバイザー)
葬儀ビジネスの商圏は広いとは言い難い。更に、参入障壁は低く、異業種からの参入が近年目立つ。果たして葬儀業界はこの受難をどうくぐり抜けるのだろうか。
●専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
火葬料も含まれた追加費用のかからない格安な家族葬を税込み14万3000円から全国で執り行っている。24時間365日受け付けており、寺院の手配や葬儀後の各種手続きなどのアフタフォローにも対応。
記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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