不動産を売買するときにも不動産会社に依頼するが、残念ながら中には自社の利益のために売主が損をするような悪質な行為を行う会社もあるという。そういったサービスに不慣れな一般人には、どんな悪質な行為をされているのか分からないことのほうが多いだろう。そこで今回は、「知らないうちに損をしていた……」といったことがないよう、不動産売却に関する疑問や悩みを解決するサイト「リナビ(Renavi)」の監修者である逆瀬川勇造さんに、悪徳不動産会社の手口について聞いてみた。
■悪徳不動産会社の代表的な手口
悪徳不動産会社の代表的な手口として、「囲い込み」や「売り止め」という手法があるという。
「囲い込みとは、自社で売主と買主をみつけ双方から仲介手数料を受け取るものです。他の不動産会社から問い合わせがあった際、まだ売れていないのに『もう売れました』などと虚偽の事実を伝えます。売り止めは囲い込みと同様、自社が売主からも買主からも仲介手数料を受け取るために、レインズのシステムからの問い合わせを停めてしまう行為になります」(逆瀬川さん)
レインズとは不動産会社が売り物件を登録するシステムだ。登録物件に対し全国の不動産会社から販売に関する問い合わせが入るそうだ。
「売り止めは、実際には販売中であるのにも関わらず、売主からの要請もなく問い合わせの受付を停止してしまいます。囲い込みも売り止めも、売主が不動産を売却するための機会を失う結果になるのです」(逆瀬川さん)
囲い込みや売り止めは明らかに悪質な行為だが、不動産会社は売主からも買主からも仲介手数料を受け取る両手仲介ができると当然利益が多くなる。仲介手数料は、法律で「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限になっており、3,000万円の物件であれば105.6万円になる。つまり両手仲介では、3,000万円の不動産の売買で、最高211.2万円まで仲介手数料が得られるというわけだ。
■「干す」と「値こなし」について
次に、「干す」という手法について尋ねた。
「『干す』とは囲い込みと似たようなもので、レインズから問い合わせが来ないようにしたり、積極的に売却しないようにする行為になります。目的は物件に魅力がないと売り主に思わせ、『値こなし』につなげるためです」(逆瀬川さん)
「値こなし」とはどんな行為なのだろうか。
「『値こなし』とは、売却価格を安くするよう売主を誘導する行為です。売主は売却不動産を相場より高く見積もっていることが少なくありません。不動産会社も最初は売主の言う通り、相場より高い価格で販売をはじめますが、高いので基本的には売れません。そこで、『干す』という行為を実施し、売主が値下げを考え始めたところで、『値こなし』するわけです」(逆瀬川さん)
売主の提示価格では売れない可能性が高いため、ある程度は仕方ない行為とされるケースもあるそうだ。
■悪質な値こなし行為もある
最後に、悪質な「値こなし」行為についても教えてもらった。
「効率だけを考えると、不動産会社は『できるだけ早く、手間をかけずに』不動産を売却するのが一番です。そのため、不動産会社のなかには、売却価格が相場より高くない場合でも、『干す』や『値こなし』の行為をするケースがあります」(逆瀬川さん)
つまり、相場より安い価格で不動産をスピーディに売却しようとするわけだ。
「干すことで両手仲介をしやすい状況になるのに加え、値こなしすることで早く買主をみつけられます。売却価格が安くなると仲介手数料も安くなってしまいますが、それよりも手間なく両手仲介を受け取ることができるため、不動産会社としてはメリットが大きいのです」(逆瀬川さん)
信じられないような手口だが、実際に行われているというから恐ろしい。
今回は、悪徳不動産会社の代表的な手口について教えてもらった。しかし、不動産相場など最低限の知識があれば、ある程度は回避できるかもしれない。大切な資産を売却するのだから、売主側もそれなりの知識を持つ必要があることを肝に銘じておきたい。
続けて、「悪徳不動産会社の見分け方」について質問してみたので、次回紹介したい。
●専門家プロフィール:逆瀬川 勇造(さかせがわ ゆうぞう)
不動産売却に関する疑問や悩みを解決するサイト「リナビ(Renavi)」の監修者。明治学院大学 経済学部 国際経営学科にてマーケティングを専攻。大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より不動産会社に入社。住宅新築や土地仕入れ、造成、不動産売買に携わる。2018年より、不動産を中心としたフリーライターとして活動を開始。