以前に「教えて!goo」で掲載した記事「規模が優位にならないビジネスには何がある?」では、小規模ビジネスには、どのようなカテゴリや戦略があるのかをご紹介した。新たな時代には、小規模ビジネスが注目される可能性があることが分かった。そこで今回も、起業支援を行う関根雅泰さんに、令和は小規模ビジネスにとってどんな時代になるのか意見や事例を交えた話を聞いた。
■令和は小規模ビジネスにとっていい時代?
令和は、小規模ビジネス界にとってどのような時代になるのだろう。
「私たちは、令和の時代はミニ起業家にとって、よい時代になると思っています。リンダ・グラットン教授が著書『ライフシフト』で述べたように、100年生きることが当たり前となっていく時代では、規模が優位にならない『ミニ起業』を行いやすい環境になると思っているからです」(関根さん)
「ライフシフト」は長寿化の進行により、長い目で人生を育むことを考えるための羅針盤ともいわれている書籍。学業、就業、そして定年というサイクルが当たり前だった時代が今後大きく変わることを示唆していることで話題になった。
■これから伸びそうな3つのジャンル
実際には、どのようなジャンルのビジネスが行いやすくなるのだろうか。
「令和の時代は、『b2B』『地域課題解決』『ミニ起業家の互助』という3タイプのビジネスがマッチすると思っています」(関根さん)
その3つについて、詳しく聞いてみた。
「一つ目の『b2B』は、スモールb(ミニ起業家)が、複数の大企業(ビッグB)とビジネスを行うというものです。これは平成の時代にもありましたが、組織を出て独立した個人が、大企業を相手にインディペンデント・コントラクター(独立請負)として仕事をする形態です。副業、兼業が当たり前になるであろう今後においては、企業の中にいる個人(スモールb)が複数の大企業(ビッグB)とビジネスを行う状態になっていくと思います。1つの会社に従属せずに複数の組織と仕事をしていくようになるのです」(関根さん)
副業を認める企業も出てくるなど、個人で複数の企業と契約をして仕事を請け負うケースを最近では多く耳にする。
「二つ目の『地域課題解決』は、平成の時代ではNPOやボランティアの形で行われてきましたが、令和の時代にはきちんと稼げるビジネスになっていくでしょう」(関根さん)
実際に収益を上げている事業の例を挙げてもらった。
「例えば地域課題として、空き家や耕作放棄地問題があります。これらに対して不動産業を営む尾上美保子さんは、地域に移住したい人と空き家を抱える大家さんとのマッチング事業を行っています。ハーブで町おこしを行っている飯島紘一さんは、耕作放棄地を耕しユーカリやネギ畑として再生する事業を行っています。また、アーティストの菅沼朋香さんは、地域課題解決を応援してくれる人達から資金を集める『リアルファンディング』を行い、自身が運営する『ニュー喫茶幻』に来るお客様から応援金のような形態で資金を募っています。いわばクラウドファンディングのリアル版です」(関根さん)
今までは収益目的ではなかったけれど、社会的に意義がある活動で収入をしっかり得られるようになるのは、大きな変革だ。
「三つ目の『ミニ起業家の互助』については、規模が優位にならない、他の人で代替できないミニ起業家だからこそ必要な、お互いを助け合うビジネスの形です。例えばミニ起業家が病気になったり、ケガをしたりして長期入院をしたら、その間の収入が途絶えてしまいます。これは、身体が資本の商売だからこそのリスクです。そこでミニ起業家同士がお互いの仕事状況を把握し、いざとなったら代わりとしてその場に立てるよう協力し合うのです。例えば講師として研修事業を行う場合、一人で行わずもう一人のミニ起業家にも講師として登壇してもらいます。そうすることで、仮にメイン講師が登壇できない場合、もう一人の講師が代替できるようになります」(関根さん)
お互いの助け合いをビジネスにまで発展させることは、起業家にとって大きな安心につながるはずだ。大きな組織に守ってもらえないミニ起業家が、お互いを助け合う状態を作るのは願いでもあると関根さんは言う。
令和の時代には優れた小規模ビジネスが多く誕生しそうな予感がして来たのでは。読者の皆さんは、人生100年が当たり前の令和の時代をどう生きるだろうか。
●専門家プロフィール:関根雅泰
1972年埼玉県生まれ。1995年、州立南ミシシッピー大学卒。2005年、企業研修会社(株)ラーンウェルを設立。一部上場企業の人材育成を支援。2013年、東京大学大学院 学際情報学府 修士号取得。2016年、地域活性会社ときがわカンパニー(同)を設立。地域でのミニ起業を支援。「比企起業塾」塾長を務める。4児の父。