■口臭の原因となる理由
よい香りで消臭効果もあるコーヒーだが、口臭の原因となる可能性は高いと中城さんはずばり指摘する。
「口臭のメカニズムを分解すると、菌・場所・エサです。『口臭発生菌』が歯並びの悪い所や磨き残しの『場所』に繁殖し、食品の栄養素を『エサ』として増殖・分解します。その代謝産物が揮発性硫黄化ガス(口臭)です」(中城さん)
コーヒーにそのような栄養素が豊富なのかというと、それはちょっと違うようだ。
「口臭のエサとなる栄養素が増える原因に、唾液の量があります。コーヒーのカフェインは、神経を過緊張な状態に導き、唾液の量が一時的に減少します。口腔内は唾液の分泌が潤沢であれば中性ですが、少なくなると酸性に傾き、口臭発生菌が増殖をはじめ臭気が出やすくなるのです」(中城さん)
口臭の原因は、コーヒーに含まれるカフェインの作用にあった。しかもコーヒーには利尿作用もあり、体内から水分を奪う。つまり、飲み過ぎると利尿作用の効果もあり、口の中が乾きがちになり、さらに口臭が発生しやすくなるというのだ。
また、他にも原因があるという。
「コーヒーの中には、クロロゲン酸というポリフェノール類が約10%含まれています。このクロロゲン酸には、口腔内に残留する糖質分解、脂肪の吸収を抑える作用、カテキンやタンニンと同じような消臭作用があります」(中城さん)
これだけ聞く限りではなんの問題もないように思えるが……。
「しかし、特に空腹時のコーヒーの飲みすぎは、このクロロゲン酸が胃酸の発生を促進させます。時として胃がムカムカしたり、酸っぱい呑酸(どんさん)が出てきて、口臭の発生を誘発します。できれば、コーヒーの摂取は食後が望ましいです」(中城さん)
コーヒーに砂糖やミルクを加え、クリームたっぷりのラテを好む人もいるが、これも口臭のもとになるという。
「乳製品には『口臭発生菌』のエサとなる含硫アミノ酸が多く含まれており、口腔内に入ってくると一気に増殖します。一晩で10億個増殖する時もあります。ラテなどを飲んだ時に口臭が強くなったり、口の中がすっぱい感じがするのはこのためです」(中城さん)
さらに、牛乳に含まれている尿素、 クレアチンも唾液量の減少を招くそうなので注意したい。
■コーヒー以外のソフトドリンクはどうなのか?
では、ソフトドリンクなども、同様に口臭の原因になるのだろうか。
「ソフトドリンクは、全体的に口臭発生リスクを高めます。特に、コーラ、オレンジジュースなど糖分を多く含むものは、口臭発生リスクが高いです。糖質が多いと口腔内の唾液量が減少し、口の中に残留すると『口臭発生菌』によりインドールや硫化水素(温泉臭)を生成します」(中城さん)
また、近年普及している「エナジードリンク」には、多くのカフェインが入っている。こちらも過緊張な状態を引き起こし、唾液の分泌を妨げることがあるという。
■口臭リスクを減らす秘訣
それでも、コーヒーやソフトドリンクは飲みたいという人は多いだろう。何か口臭を防ぐコツはないのか聞いてみた。
「口腔内を清潔に保ち、乾きすぎないよう水分補給をしましょう。また、漢方の食養生の中には、消化活動を健常に保ち、体臭を抑え、身体に潤いを与える食材があります。こうした食材で、口臭も予防することが出来ます」(中城さん)
比較的手に入りやすいプルーン、ドライイチジク、ハトムギ(よくいにん)がよいと、中城さんが薦めてくれた。コーヒーやソフトドリンクを飲んだ後の口臭が気になる方は試してみてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール 中城基雄
口臭専門クリニック 中城歯科医院 医院長。歯学博士、鍼灸師。