■寄せ鍋
「寄せ鍋」の具材は、何でも何種類でも、投入OKなのだろうか。
「肉や魚介類をはじめ、白菜などの葉物や根菜類、キノコ類、豆腐、白滝など、冷蔵庫にあるもので作ることができるポピュラーな鍋料理です。その歴史は明治時代以前にさかのぼります。当時は囲炉裏端に鍋をかけることで暖を取り、明かりも兼ねていたようです。土鍋に出汁を入れ、火の通りにくい具材から順に加え、全体的に火が通ったら醤油や酒、みりんなどで味付けします。はっきりと味付けをせず、お好みに応じてポン酢しょうゆなどをつけて頂くご家庭も多いです」(河合さん)
具材は5種類程度に絞ると素材の味をより楽しめるそうだ。白滝や春菊を加える場合は「アクが出るので、塩を入れた熱湯でサッと湯がいておくとよいでしょう」と河合さんは下ごしらえの大切さも教えてくれた。
■ちゃんこ鍋
寄せ鍋同様、歴史がありそうな「ちゃんこ鍋」の特徴についても聞いてみた。
「『ちゃんこ』とは相撲部屋の料理番のことで、そこから名付けられた鍋料理です。明治の終わり頃に登場したようで、さまざまな具材を入れて煮込むところは『寄せ鍋』と似ています。味付けは相撲部屋によって特色があり、醤油や砂糖、酒、みりん、味噌などで調味する部屋が多いようです。しかし最近は外国人力士が増えたため、チーズや乳製品を加えたり、宗教上の理由から豚肉を使わないなど、その部屋ごとの食べ方があるようですね。仲間と鍋を囲み、和気あいあいと会話を楽しみながら食べられる上、栄養や体力をしっかり養えるちゃんこ鍋は、今も昔も力士にとって欠かせない料理です」(河合さん)
「同じ釜の飯を食べる」ということわざにピッタリの鍋料理だ。
■水炊き
水炊きの特徴は、何といっても鶏肉を使うことだろうか。
「文字通り水から煮ていく『水炊き』は一種の郷土料理で、博多が有名です。土鍋に水を入れ、骨付きの鶏もも肉を入れてコトコト煮込み、ある程度火が通ったら、白菜や葱、豆腐などを加え、ポン酢しょうゆや紅葉おろし、柚子胡椒などをつけて頂きます。この鍋料理も明治時代から食べられていたようです」(河合さん)
明治時代から食されてきた鍋料理が多いと知り、今後もしっかりと継承していかなければ……という気持ちにかられる。奇しくも今日は鍋の日。今晩は伝統に思い馳せつつ、鍋を家族で囲んでみてもいいかもしれない。
●専門家プロフィール:河合 寧子
料理研究家。栄養士。「食は家庭料理にあり」をモットーに、少人数制の料理教室「cooking inトラテーザ」を主宰。オーガニック食材の家庭料理を中心に、和食やイタリア、中国、フランス料理など、さまざまなレッスンを開講。