![犬や猫にマイクロチップを装着する際のメリット、デメリットを獣医師に聞いた](http://oshiete.xgoo.jp/_/bucket/oshietegoo/images/watchmain/7/542301348_5d9164127b5b8/ORG.jpg)
■マイクロチップ装着によるメリット
最初に、犬猫にマイクロチップを着用するメリットについて聞いた。
「マイクロチップが最大に力を発揮するのは、確実な個体識別です。連れ去りや逃走などでペットと離ればなれになってしまった際、飼い主の元に戻る可能性は格段に高まります」(角井さん)
大切な家族である犬や猫と離ればなれになるリスクを減らせるというのは、大きなメリットといえよう。
「飼い主情報が明確なため、飼育放棄や虐待を抑制できるというメリットもあります。マイクロチップを装着することで一部の心無い人たちへのメッセージにもなるなら、大きな意味を持つことかもしれません」(角井さん)
こうした社会問題を解決できる可能性があることに対しては、大いに期待したいところだ。
■マイクロチップ装着によるデメリットや注意点
次に、気になるマイクロチップ装着によるデメリットについても聞いてみた。
「マイクロチップ挿入時には太い針を使用しますので、当然痛みを伴うことが予想されます。私自身も小型の動物への注入時は、不快感が少なくなるようとても気を遣います。外来ではなく、避妊去勢手術や口腔クリーニングなど麻酔を伴う小さな処置のついでに同時実施を提案する獣医師が多いのはそのためでしょう」(角井さん)
マイクロチップの装着のタイミングについては、かかりつけの獣医師と相談するとよいだろう。
「諸外国では副作用の発生状況が大規模に調査されており、実際に腫瘍発生や炎症反応また神経障害が報告されています。ただし、今のところ腫瘍に関しては自然発生のリスクと大差なく、マイクロチップとの因果関係は実証されていません。炎症反応や神経麻痺についても、手技的な問題であり十分回避可能と解釈できます」(角井さん)
腫瘍や炎症に関しては今後の動向が気になるところだが、すでにマイクロチップが原因で問題になっていることもあるという。
「問題となっているのは、MRIなどの画像診断への影響です。有害でなくとも検査の妨げになる場合には、撮像に先立ち手術で取り外す必要が生じることもあります。新しく病院にかかる際には、マイクロチップが入っていることを先に伝えてください」(角井さん)
装着したチップを除去するケースもあるので、認識しておきたい。
■保険適用外でも保険の割引がある
最後に、マイクロチップの価格や保険適応の有無、利用方法などについて聞いた。
「マイクロチップの挿入は治療には該当しないためペット保険は適用されませんが、いくつかの保険会社ではマイクロチップを装着した動物の保険料を割引する仕組みがあります。装着は広く動物病院で対応しており、費用は数千円~1万円程度が相場です。挿入後に『AIPO(マイクロチップによる犬、猫などの動物個体識別の普及推進を行う組織)』へのデータ登録が必要で、1,000円程度の負担が必要になります」(角井さん)
犬や猫がいなくなったときの保険と考えれば、費用的にはリーズナブルといえそうだ。
「マイクロチップには、世界でただ一つの個体識別番号が15桁で標識されています。識別番号と紐づけられる『動物の特徴、飼育者情報、装着した獣医師』のデータは、日本獣医師会とAIPOのデータベースで一括管理されており、マイクロチップリーダーで読み取り可能です。マイクロチップリーダーは行政の動物保護施設や、多くの動物病院で利用できます」(角井さん)
ちなみに、マイクロチップの耐用年数は20年以上ということで、ペットの寿命には今のところ十分耐えうるそうだ。毎年の予防注射や健康診断の際、かかりつけの病院で読み取りテストを依頼するのが、安心につながりおすすめだ。
マイクロチップは個体識別の一つの方法なので、ペットに名前を付けてやることと同じような行為といえそうだ。多くの人がマイクロチップに関心を持つことで、動物と飼い主をさらに強く結び付ける新しい絆となっていくことに期待したい。
●専門家プロフィール:角井 茂
かくい動物病院 院長。名古屋市東郊の日進市で50年続く「街の動物病院」。日々の診療のかたわら近隣の獣医師と連携して、老人ホームへの訪問活動・市内の学校動物飼育支援・ペット防災活動に取り組んでいる。