■実際にシロアリの被害が多いのか?
そもそも、シロアリを見たことがない人も多いだろう。実際にどのような被害が起こっているのか、その実態について聞いた。
「シロアリの被害事例は年間で100万件以上にものぼるといわれています。その被害は木造建築に多く、日本には5,000万戸以上あります。毎年50戸に1戸は被害報告があるというのが実情です」(伊藤さん)
かなりの規模だが、そこまで被害に遭っている印象がないのはなぜだろう。
「昨今は、マンションやアパートが多く、周りで被害に遭ったという声を聴く機会は少なくなってきました。また、被害は地方に集中するため、都市部に近づくにつれ、シロアリの発生件数は少なくなる傾向です」(伊藤さん)
シロアリの生息地域は西日本が中心だという。ファインドプロに寄せられる被害状況の調査では、和歌山県や宮崎県が多いとのこと。周りに山や森があるほど、被害も多くなるのだ。
■シロアリの被害として多いケースとは?
実際の被害は、どのようなものなのか。
「よくイメージされるのは、家が完全に崩壊するほどの被害だと思います。しかし、実際に駆除や予防を依頼されるお客さんで多いのは、まだ被害が初期状態のケースです。柱の一部分だけ喰われていたり、水回りや配管に巣を作っていたりすることが多いですね。また、家自体には被害がなかったものの、庭の木に住みついていたということも少なくありません」(伊藤さん)
被害が大規模になる前に、修繕をする人が多いようだ。しかし、シロアリの繁殖力はすさまじく、毎日20個以上の卵を産み続ける。そのため、「気づいた時には手遅れだった……」ということも珍しくないため注意が必要だと伊藤さんは言う。
■シロアリ被害にいち早く気づくためにできること
シロアリは基本的に、普段は目にしない場所で繁殖していく。そのため、注意していないと、知らない間に被害が拡大してしまうのだ。しかし、シロアリの被害にいち早く気づくことができる方法があると伊藤さんは言う。
「シロアリは常に床下や壁の中などにいるため、被害に遭っているかどうか気づきにくいものです。シロアリの被害に気づくチャンスがあるのは、梅雨明けの時期。その時期は、シロアリが繁殖のために羽アリとなって外に出る貴重な機会です。羽のあるアリで白っぽいアリが家の近くにいたら、一度調査を依頼してみるのがよいでしょう」(伊藤さん)
普段は陽の当らない場所にいるシロアリも、繁殖期には外に出るという。羽アリを見つける機会を逃してしまった場合は、どうすればよいのだろうか。
「羽アリ以外にシロアリの被害に気付くチャンスがあるのは、新築5年のタイミングです。というのも、新築の場合、5年間のシロアリ駆除保証がついていることも多く、そのタイミングで調査してもらうことができるからです。それ以外にも近隣で、シロアリ被害が起こったかどうかを一つの指標にするとよいでしょう。シロアリは基本的に、巣を移動させることはありません。しかし、巣が大きくなりすぎると、巣にいるシロアリの一部が、近くに別の巣を作ることがあります。そのため、近くでシロアリ被害が見つかったときには、自分の家にシロアリが移ってきていないか確認するのがおすすめです」(伊藤さん)
シロアリ駆除を行っても、薬剤の散布が足りず殺虫しきれていないと、生き残りが逃げるように移動してきてしまう場合もあるという。調査のみであればお金がかからないことも多いため、気になる場合は一度依頼してみるとよいかもしれない。
自分で予防処理を行おうとする人もいるらしいが、あまり効果はないようだ。知らない間に被害が拡大しないためにも必要になった際には、専門の駆除業者に相談してみてほしい。
●専門家プロフィール: 伊藤 真揮(いとう なおき)
あなたの街の近場のプロフェッショナルを探せる「ファインドプロ」の編集部に所属するライター。実際に現場で活躍しているスタッフからの専門的な声を参考に、シロアリを始めとしたさまざまな害虫や、害獣の駆除・予防に関する幅広い情報を発信している。