ウォッチ
相続の話になると「ウチには遺産なんてないから相続の心配はない」というセリフをよく聞くが、これは誤りだ。なぜなら人は亡くなればほぼ間違いなく、大なり小なり相続が発生するからだ。このセリフを正しく言い直すと「ウチには遺産なんてないから相続税の心配はない」となる。相続と相続税は混同されがちだ。相続には遺産の有無や過多は無関係だが、相続税は遺産が一定以上だった場合に限って納める国税だ。相続は全ての人が考えておくべきだが、相続税は遺産が基準を上回っている人だけ心配すればよい。
そこで今回は全ての人が対象となりえる相続について、トラブルを避けるための一つの手段として弁護士に相談依頼する際のメリットを考えられる限り調べ尽くしてまとめてみた。話を聞いてきたのは富士見坂法律事務所の井上義之弁護士だ。
■トラブルを事前に予防する二つのメリット
トラブルは起こらないに越したことはない。そこでまずは相続について弁護士に相談依頼するメリットを事前予防の観点で聞いてみた。
【トラブル防止の一つ目のメリット：相続に向けた準備ができる】
「自身の死後に家族がもめないよう準備しておくことは非常に重要なことです。弁護士は、依頼者の状況・希望を詳しく聞いて、遺言の作成、生前贈与、家業の円滑な承継方法など依頼者にとって最も望ましい方策を提案します」（井上義之弁護士）
【トラブル防止の二つ目のメリット：法律・判例を踏まえた助言を受けられる】
「相続開始後に遺族から相談を受けた弁護士は、法律・判例を踏まえ、予想される結論及び解決に向けた方策などを助言します。法的な交通整理をしてもらうことで、無用なトラブルを防止することができるでしょう」（井上義之弁護士）
■トラブルを解決する上での五つのメリット
どうしたって避けられないことはいくらでもある。そこで次にトラブルが起こった後に弁護士に相談依頼するメリットを問題解決の観点で聞いてみた。
【トラブル解決の一つ目のメリット：親族と交渉を代わりにやってもらえる】
「親族同士で遺産の分割という生々しい話をするのは気が進まない、法的に当然の権利であってもそれすら口にしづらい、という方は多くいらっしゃいます。弁護士に依頼することで、そうしたストレスから解放され、言いにくいことを代わりに言ってもらうことができます」（井上義之弁護士）
【トラブル解決の二つ目のメリット：希望に応じた解決が期待できる】
「弁護士は、依頼者の希望に沿って交渉します。多少の譲歩をしてもなるべく早期円満に解決してほしい、時間がかかってもいいからきちんと権利を実現してほしい、などといった依頼者の希望を踏まえて柔軟に交渉します」（井上義之弁護士）
【トラブル解決の三つ目のメリット：終局的な解決が期待できる】
「弁護士は紛争解決の専門家です。トラブルの火種が残らないかを検討し、遺産分割協議書の一語一語に気を遣って終局的な解決を目指します」（井上義之弁護士）
【トラブル解決の四つ目のメリット：裁判の結論を見据えた交渉をしてもらえる】
「弁護士は、当初から、裁判になったらどうなるかを見据え、法的に矛盾のない一貫した態度で交渉します。残念ながら話し合いで解決せずに裁判に至った場合でも、場当たり的な交渉をした場合に比べて有利な結論が期待できます」（井上義之弁護士）
【トラブル解決の五つ目のメリット：煩雑な事務処理を代わりにやってもらえる】
「相続に関する事務処理は、相続人の調査（戸籍の収集）、遺産の調査（金融機関からの残高証明の取得等）、遺産分割協議後の預貯金の払戻しなど、非常に煩雑です。弁護士に依頼すれば、トラブルの解決だけでなく煩雑な事務処理もすべてやってもらえます」（井上義之弁護士）
■遺産分割事件の33％が財産1000万以下
「家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち認容・調停成立件数」（令和元年の司法統計）を見ると、総件数7224件のうち遺産1000万円以下が2448件と33％を占めている。つまり相続は財産が少ないから問題ないという認識は改めたほうが良い。ちなみに遺産5000万円以下は3097件の43％となっており、遺産1000万以下と合わせると76％だ。これらのことから結論は以下の通りだ。
結論：「遺産は多くないから相続の心配は無用」は誤りだった。遺産が少なくても相続の対策はしておいたほうが良い。むしろ遺産が多くない人ほど対策をしておいたほうが良い。
専門家プロフィール：弁護士 井上 義之（第一東京弁護士会） ＜事務所HP＞ ＜ブログ＞
依頼者の置かれている状況は様々です。詳しい事情・希望を伺った上で、個別具体的事情に応じたきめ細やかなサービスを提供することをモットーに業務遂行しております。お気軽にご相談ください。
記事提供：ライター o4o7／株式会社MeLMAX
画像提供：ピクスタ
