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階段を下るときに速足になるのはなぜ?体育の教授に聞いてみた

階段を下るときに速足になるのはなぜ?体育の教授に聞いてみた多くの勤め人にとって毎朝の通勤は、混雑する電車に機械的に乗車するなど、殺伐とした時間を過ごすことが多い。そのためなのか駅の階段を、逃げるように高速で下降していく人が多く感じる。かなりのハイペースで下っていくので、はじめてその光景を目にする人は驚くのではないだろうか。「教えて!goo」にも「駅の階段で毎日不思議だな、と思う光景がありますがどうなのですか?」という質問が寄せられているように、普段から気になっている人もいるようだ。そこで今回は、筑波大学の体育系准教授である足立和隆さんに、階段を下るとき速足になる理由について尋ねてみた。

■速く下るのは重力の影響


そんな通勤時の風景について、早速聞いてみた。

「基本的に人が階段を速く下りる場合は、重力の影響が大きいです。力学的には高い場所にいれば位置エネルギーが大きく、そこから低い位置に下りれば位置エネルギーは減り運動エネルギーが増えます。坂を転がる球と同じようにエネルギーをつぎ込まなくても階段を下りられるわけです」(足立さん)

階段を早く下りられるのは、理にかなったことのようだ。

「筋肉には『伸張反射』といって、受動的に外から引き伸ばされると、反射作用によって自動的に縮むという性質があります。これには、引き延ばされてから縮むまでに特定の時間がかかりますが、そのリズムに合致させるタイミングで階段を下りると、リズミカルに階段を下りられます。この間隔は0.15秒くらいなので、これに合わせるとなると、結構速く階段を下っていくことになります」(足立さん)

0.15秒のタイミングに合わせると、あのスピードになるのか……。納得である。

■誰にでもできるものではない!?


高速な階段下りは、誰にでも簡単にできるものなのだろうか。

「坂を転がる球は位置エネルギーが運動エネルギーに変換されて、どんどん速くなっていきます。ですが人がそうなっては危険なので、ある程度ブレーキをかけながら階段を下りています。これができるのは十分な筋力を持っている人の場合で、筋力の弱っている高齢者には無理です。階段だけでなく、坂を下る場合も同様です」(足立さん)

高速で階段を下りつつも、自然と筋力で重力のエネルギーをセーブしている。

「筋力の衰えは、階段を下りるときに下の段にかかとをつくかどうかで判断できます。かかとをつけずに階段を下りられるのは、下肢に十分な筋力がある証拠です。もしかかとをつきながら階段を下りていたら下肢の筋肉が弱っているので、何かしらの対応策(筋力トレーニングなど)が必要になります。そのような人は、下手をすると転倒してしまうかもしれません」(足立さん)

どうやら無理に速く階段を下りるのは、やめたほうがよさそうだ。

■都心部ならではの事情も


都心で生活する人は、それなりに足が鍛えられているという。

「階段を上るときにはエネルギーを使います。たとえば、高層ビルを階段で上りきると、息切れがして心臓がバクバクします。逆に、高層ビルの上から下まで階段を下りると、息切れはしませんが、次の日、恐らく太ももの前の大腿四頭筋とふくらはぎの下腿三頭筋(ヒラメ筋と腓腹筋)が筋肉痛になると思います。これは階段を下りるとき、これらの筋の内部が傷ついてしまうからです。ところが筋肉痛が治ると、これらの筋の筋量が増加するという不思議な現象がみられるのです」(足立さん)

普段から下りの階段を多用することで、足の筋肉が増強されるのだ。

「加齢とともに足腰が弱ることが昨今取り沙汰されていますが、都心部の地下鉄にはエスカレーターが上りしかなく、下りは階段というところも結構あります。これによって、知らず知らずのうちに、下肢の筋肉が鍛えられていることになります。その結果、都市部の高齢者のほうが、自動車で移動ばかりしている地方の高齢者よりも足腰が丈夫という結果になるのです」(足立さん)

地下鉄の階段を高速で下りる人が都心部で特に目立つ理由が分かった気がする。

足立さんによると、家の階段を下るとき高速にならないのは、屋内というスペース上、屋外の階段よりも蹴上げ(けあげ:一段の高さ)が大きく、踏面(ふみづら:段の奥行き)も短いため、靴下やスリッパでは滑りやすく早く降りるのは危険だからだそうだ。しかし、それは屋外であっても人が大勢いるところでは危険が伴う。自重するべきタイミングは見極めるべきだろう。

●専門家プロフィール:足立 和隆(あだち かずたか)
筑波大学の体育系 准教授。主な研究テーマとして、「運動器(筋骨格系)の形態、構造、機能に関する機能解剖学的な研究」、「運動器の機能(とくに歩行)に関する加齢変化」、「ヒトに装着する用具(たとえば靴、カバン)やヒトが扱う機器装置に関して機能解剖学的な見地からみた人間工学的研究」などがある。また、つくば市のコミュニティFM局「ラヂオつくば」の創立者の一人であり、国際標準化機構(ISO)人間工学部会国内委員としても活躍する。
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