また葬儀自体も今とは比べ物にならない程の大規模なだったことも大きな要因だ。そのため、一回あたりの葬儀費用が高くなり、葬儀社は葬儀の施工を数多くこなさなくても十分な利益を確保できた。
しかし、それも今となっては全て過去の話だ。なぜなら昨今の家族葬ブームによって料金体系は明朗化し、一回あたりの葬儀費用も激減したからだ。そんな葬儀業界はここ数年、先行き不透明というのが大方の見方だった。ところが今、新たに儲かるビジネスとして遺体安置が注目を集めている。
■遺体安置が注目される理由
そこで今回は遺体安置がビジネスとして注目を集める理由について、葬儀WEBサービスを展開している「心に残る家族葬」の葬儀アドバイザーに話を聞いてきた。
「遺体安置が注目されている理由は火葬場不足によるものです。全ての地域で火葬場が不足しているわけではないのですが、東京などでは逝去後、火葬するまでに一週間前後待ちます。待つ理由は火葬場が不足しているため、予約が集中し、混雑するからです。そこでその間、どこにご遺体を安置するかというと、遺体安置施設となるわけです。あとは単純に死者数が増加している点もあげられます。」
死者数増加と火葬場不足によって、遺体安置施設の需要が高まっているとのこと。ちなみに火葬場が不足しているなら、どうして火葬場を増やさないのだろうか。
「人口統計では2040年が死者数のピークだとしていますが、その後は徐々に落ち着いていきますので、その頃には火葬場を余らせてしまうかもしれません。しかも火葬場は他の施設に転用ができません。更に火葬場のための広大な土地を取得する手間やコストも問題です。また近隣住民から建設許可や理解を得るのも非常に苦労するでしょうから、そう簡単ではありません。」
足りないから増やすというのは非常に安易な考えとのことだが、だからこそ遺体安置がビジネスとして注目されているのだろう。
■遺体安置がビジネスとして儲かるさらなる理由
火葬場を増やすのは得策ではない。回避策として遺体安置施設を増やし、火葬場不足を乗り切る。これが遺体安置ビジネスの儲かる仕組みだ。そして更に儲かる理由を聞くことができた。
「遺体安置をビジネスとして検討するとなると、当然その施設は火葬場付近であることが望ましいです。どこでもいいというわけではありません。つまりこの時点でエリアがかなり絞られます。更に遺体安置を目的として物件を借りるとなると、中々審査がとおりません。これが非常に苦労するのですが、それはつまり参入障壁を上げていることでもあります。」
参入障壁が高いということは、それはつまり新規参入を防いでいることを意味する。新規参入が増えなければ、競争は起きない。まさしく濡れ手に粟だ。
「あとは遺体のご安置は、やろうと思えば誰でも出来ると思われるかもしれませんが、経験が必要です。また、儲かるとはいえ、そもそもそれをビジネスにしようと考える方が少ないという点も参入障壁を高くしている理由の一つと言えるでしょう。」
■経験者と物件さえ揃えば、検討の余地あり?
確かに遺体を扱う事自体に抵抗がある人は少なくないだろう。また借りる物件のエリアも、火葬場の近くでないとダメとなると、そもそもただでさえ少ない火葬場なわけだから、地域はかなり限られるだろう。儲け話には裏があるというが、やはりそう簡単ではない。しかし、捉え方次第では、これらの問題をクリアすることさえできれば、儲けられるかもしれない。なぜなら火葬場不足は火葬場が増えない限り続く、それはつまり遺体安置が儲かり続けることを意味するからだ。ただし、他に火葬場不足の解決策が見つかれば、話は別ではあるが。
●専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
家族葬こそが、故人との最後の時間を大切に過ごしたいという方に向いていると考え、従来の葬儀とは一線を画した、追加費用のかからない格安な家族葬を14万3000円から全国で執り行っている。