
■スパイはネットでも募集している
新聞やインターネットで普通にスパイ募集をしているという噂は本当なのだろうか?
「本当です。ただ、それは映画に出てくるような、派手な活躍をする『スパイ』ではなく、主に職員の募集です。諜報機関も『お役所』なので、事務職などの職員が必要なのです。アメリカのCIAや、その優秀な実績から神話的存在となっているイスラエルのモサドもHPで要員を募集しています。ちなみにモサドのHPの要員募集ページのキャッチコピーは『不可視の世界、不可能を成し遂げる任務に挑みませんか』という、まるで映画のうたい文句のようです」(『軍事研究』編集部)
裏の世界で活躍する……少しイメージと違う気も。
「ちなみに募集ではありませんが、映画の『007』でお馴染みのイギリス情報機関『MI6』こと『SIS』は、公式ウェブサイトも運営しています。CIA工作員だった女性の手記によると、彼女は大学卒業後に自らCIAに履歴書を送ったということです」(『軍事研究』編集部)
ちなみに、どのような資質の人が求められているかも聞いてみた。
「『周囲の人たちに印象を残さない、目立たない外見・目立たない立ち振る舞いの人物』『真の観察力に優れ、観察対象のわずかな変化や変化の兆候を見逃さない人物』『地味な作業をコツコツと続けられる人物』『孤独に強い人物』『思考や精神が柔軟な人物』などが挙げられます」(『軍事研究』編集部)
募集の告知がなくとも、ウェブサイトなどから直談判するのもアリかもしれない。なお日本ではどうかいうと、「新聞やネットでの募集は見たことがありません」ということだ。
■活動内容は地味なものがほとんど
では、スパイの具体的な仕事の内容や条件などはどうなのだろうか?
「これは先ほども少し触れましたが、多種多様、千差万別で答えようがありません。例えば、事務所で資料整理の毎日を送っている人がいれば、現地(身分偽装して現地入りする)で協力者の獲得をする人もいます。基本的には地味な活動で映画のような派手な活劇はめったにないようです。実話ベースの映画『ホース・ソルジャー』に、現地語を操りアフガニスタン山中で単独行動するCIA工作員が登場するように、冒険のような活動をしている諜報・情報機関の要員ももちろんいます」(『軍事研究』編集部)
給与も気になるところだが、それについては情報がないそうだ。
■スパイという職業はなくならない?
インターネットが広く普及して、さまざまな情報を手軽に入手できるようになった。この傾向はこれからもっと進んでいくだろう。そんな中、これからもスパイの活躍の場はあるのだろうか?
「『スパイ』の定義にもよりますが、それが情報を得るための職務、またはそれに従事する人のことであれば、これからもなくなることはないでしょう。例えば、ネットの世界を舞台にした『サイバー戦』も情報工作の一貫です。今後の戦争の形を変えるといわれていて、米英仏露や中国はもちろん、北朝鮮もサイバー部隊の育成に注力しています」(『軍事研究』編集部)
かっこいいというイメージが強いスパイだが、事務やインターネットを扱うためのPC操作となると、かなり地味……。実際の姿は、映画とはかけはなれていることも多いようだ。
●専門家プロフィール:月刊『軍事研究』
ジャパン・ミリタリー・レビューが発行する軍事問題を扱う月刊誌。創刊は1966年4月。日本及び世界各国の軍事、政治、経済情勢についての、記事、論文を掲載している。