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今日、バッハのトッカータとフーガのCDを買いました。
楽譜では、最初の所がラソラ--となっていますが、実際の演奏は
半音高く、シ♭ラ♭シ♭となっていました。

バロック時代は、半音低くは当たり前ですが、
何故パイプオルガンのピッチが半音も高くなっているのでしょうか?

A 回答 (2件)

現在、古楽器によるアンサンブルなどを聞くと、その大部分は半音低いピッチなので、


それが当時の標準だと思いがちですが、実はそういうことではありません。
ピッチ、つまり「標準音」の歴史について書くと長くなってしまいますが、
特にオルガンに関しては、もともと標準音は高かったという事情があります。
また、場所によって標準音の高さが違っていたのは、合わせる必要がないということではなく、
音高を正確に測る方法がなかったからです。

ルネッサンスからバロックへの移行期のドイツの重要な作曲家、オルガニストであるミヒャエル・プレトリウス(1571~1621)の時代では、
オルガンの標準音は、現在の標準A=440を基準にすると、最高でそれよりも2全音高いC#にまで至ります。
モンテヴェルディ時代の調律笛なども、C#のものが残っています。

16世紀の標準音は、現代の標準の4半音下から3半音上までという広範囲でのばらつきがあります。
ハ長調の楽譜であれば、最低で変イ長調、最高で変ホ長調で鳴ることになります。
18世紀半ばでも、±2半音の範囲でばらつきがあるので、
現在より全音低いピッチから全音高いピッチまであるということになります。
ツィンケという金管楽器のピッチは、16世紀から18世紀まで変わらず高く、
450~480Hzの範囲で、平均の465Hzでも、現在の標準の半音上に当たります。
19世紀半ばでも、±半音のばらつきがあります。
その場合、オーストリア、ドイツ、イタリア、オランダでは一般的に高めになる傾向が、
フランスやイギリスでは逆に低めになる傾向がありました。
音叉が発明されたのは1711年といわれ、これが十分広まるまでに100年ほどかかっているので、
それまでは、ピッチの確認自体が簡単ではなかったという事情があります。

標準音の統一は、音楽上の国際交流が進むにつれてその必要性が出てきます。
標準音が低い傾向にあったフランスでは、1788年に「パリ標準音」といわれる409Hzの合意がありましたが、
これは、フランスで特にピッチの低い木管楽器が新たに開発されたことに由来します。
しかし1858年、ナポレオン3世のもと、フランスのアカデミーが定めて法的に決められたのが435Hzです。
435Hzというのは、現代の標準とそれほど大きな差はなく、半音低く聞こえることはありません。
また、これより少し前、ドイツの音楽理論家、ヨハン・ハインリヒ・シャイプラー(1777~1837)が、
音高を測る装置を考案し、現代の標準と同じ440Hzを標準に定める提案をすでにしており、
1834年に開かれた、ドイツ自然科学・医学学会で承認されてもいます。
その後、1885年にウィーンで開かれた国際会議で、フランス周辺国以外でも435Hzが標準とされました。
なおこの時の決定には、気温15度の場合という条件が前提となっています。
日本語版ウィキペディアには、オーストリア政府が勧告したように書いてあり、
これは英語版の翻訳ですが、出典になっているのが小さな音楽辞典で、
本格的な音楽百科では、あくまでも「国際会議がウィーンで開かれて決められた」となっています。

1896年には、ロンドン・フィルハーモニー協会とアメリカが439 Hzを採用、
1917年には、アメリカ音楽家連合が、標準音440Hzを採用します。
1936年にアメリカの規格化協会が440Hzを支持し、ドイツもそれを後押しします。
そうして1939年には、万国規格統一協会(ISA)という組織がロンドンで開催した国際会議で、
シャイプラーの提案した440Hzを、国際規準として再び採用することになります。
英語版、および日本語版のウィキペディアには、
1955年に国際標準化機構(ISO)が初めて決定したように書いてありますが、これは正確ではありません。
万国規格統一協会(ISA)という組織は、1939年のこのロンドン会議のあと、
1942年に予定していた会議が第二次大戦で開けなくなり、そのまま消滅します。
その後、国際連合規格調整委員会(UNSCC)という組織が経過的に発足し、
最終的に後継組織としてできたのが、国際標準化機構(ISO)なので、
1955年に行われたのは、新組織に変わったことによる再決定、承認のようなものと思います。
ただし、管楽器のピッチは、楽器の交換が必要なためになかなか進まなかったところがあり、
軍楽や警察の音楽隊などは、第二次大戦前まで半音高いピッチが続きました。
アマチュアのバンドなども予算の関係で、1960年代くらいまでは高いピッチを使っていました。

ドイツのオルガンの標準音が高かったのは、聖歌を歌う合唱の声域に合わせてのことだったようです。
北ドイツのオルガンは概してピッチが高く、バッハ自身が弾いた可能性のあるオルガンは、
だいたいみな半音から全音高かったと考えてよいようです。

ハンス・オットーがレコーディングに使っているオルガンは、有名なオルガン製作者、ジルバーマンによるものです。
私には半音よりもう少し高く聞こえますが、実際、この楽器が製造された時のピッチは473Hzで、
現在は476Hzに上がっているので、数字の上でも半音より少し高くなります。

北ドイツにおけるバロック時代の代表的オルガン製作者に、アルプ・シュニットガーという人がいます。
このシュニットガーのオルガンの一つは、ピッチが全音高いので、例として挙げておきます。
演奏されているのは、バッハの『フーガ ニ長調 BWV532』で、
まず下の動画のフランスのオルガンでは、楽譜通りニ長調に聞こえます。
ローザンヌの聖フランソワ教会のオルガンです。


同じ曲を、アルプ・シュニットガーが1693年に完成したオルガンで、トン・コープマンが演奏していますが、
このオルガンのピッチが495.45Hzという高いもので、現代の標準、440Hzと比べると、
完全に全音高くなり、ホ長調に聞こえます。
https://www.youtube.com/watch?v=j3kSfbQ8i60

現在の古楽演奏で、しばしば半音低いピッチが基準になっているとはいえ、
必ずしもそれが当時のスタンダードだったと言い切れるわけではなく、
1800年以前に関しては、標準のピッチというのは特定不可能とされています。
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>楽譜では、最初の所がラソラ--となっていますが、実際の演奏は


半音高く、シ♭ラ♭シ♭となっていました。

最初だけですか? それとも全部?
質問者さんは、A=440Hz での絶対音感があるようですね。

音のピッチに決まりはありません。昔は地域によって、町によってそれぞれ違っていました。
弦楽器やピアノ、チェンバロは、その都度調律すればよいので音のピッチを標準化するニーズはあまり高くありませんし、オルガンのように持ち運びしないものにもそのニーズはありません。

「ピッチを標準化する」というニーズが生じたのは、主に管楽器で、楽器を大量生産して国際的に流通させるようになったからなのでしょうね。

標準ピッチが A=440Hz と決められたのは 1936年のアメリカ規格協会の規格を受けて、1955年に国際標準化機構(ISO)が標準規格を制定して以来のことのようです。
なお、それまでも、フランスでは1860年ごろから A=435Hz が使われ、1885年にオーストリア政府が標準ピッチを A=435Hz とするように勧告したりしていたようです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/A440

ただし、現在でも例えばベルリン・フィルなどでは 444Hz でチューニングしているようです。

また、ピリオド楽器の演奏団体では、A=415Hz、A=392Hz などの一致を採用しているところもあるようです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E6%A5%BD …
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この回答へのお礼

回答ありがとうございました。半音高いのはもちろん全部です。
地域によってAの音程が違うのは知っていましたが、半音高いのは
びっくりです。ハンス・オットーのトッカータとフーガ ニ短調のCDです。
これってニ短調ではなく嬰ニ短調で演奏されています。

お礼日時:2018/03/31 06:55

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