心理学(主に精神分析)と哲学を勉強している大学三年生です。
一般的に言って、あらゆる思考は対象化作用を前提にしていると思います。
例えば、私が「直線は点の集合である」という命題を考えるとき、まず私の意識に直線と点のイメージが浮かび、それから「直線は点の集合である」という命題について、あるいは直線、点についての思索が展開することになるかと思います。
そのため、私が「私とは何か」と問うとき、対象化された私(me)と対象化する私(I)は分裂してしまい、何度私が「私とは何か」と問おうとも、対象化作用としての私は決して捉えられないという「無限後退」が生じてしまうのでしょう。
私は「私とは何か」という問いに十全に答えきること(Iとmeを両方とも捉えること)は不可能であるような印象を持っているので、おそらく「対象化によらない思考も不可能だろう」と感じているのですが、皆様はどのようにお考えになるでしょうか。
また、このような問題を心理学の観点から論じていきたいのですが、例えばどのようなアプローチがありうるのでしょうか。(大学院に進み、将来は研究職につきたいと考えているのですが、なかなか研究テーマが定まらず、大変焦っています。こちらの問いにもお答え頂けると幸いです。)
ご返答頂けると幸いです。
どうぞよろしくお願い致します。
No.1
- 回答日時:
あなたのその論理でいくと、
他者は他者に対して対象化でき、その他者が何者かを
思考することができる、ということになりますが。
この回答への補足
ANASTASIAK様が提示なさった「他者は他者に対して対象化でき、その他者が何者かを思考することができる」という命題の理解について、確認させてください。
「自分ではない人」=他人と同じような意味で他者を理解したとして、例えば、今、私の目の前に他者としてのあなたがいるとします。
あなたが「自分は生きている」と考えるとき、確かに意識作用としてのあなたは対象化されたあなたを捉えています。
そして、そのようなあなたが私を見て「あなたは生きている」と考えるとき、たしかに私はあなたによって思考されていることになります。
このような意味で理解してよろしいでしょうか。
このような意味でならば、私はまったくその通りであると考えております。
No.2
- 回答日時:
対象化は可能だと思います。
いったん対象された私(me)をAと決定させます。
Aは対象している(I)とどのような関係が有るかはこの際無視します。
その後対象された私(me)にもどればいいわけです。
服を着た私を服を着てないときに想像した後にその服着るということです。
その逆に服を着てない私を想像した後に服を脱ぐというともできると思います。
この回答への補足
意識作用としての私は常に「服を着ていない」私となるほかないのではないでしょうか。
「服を着ていない私を想像」することははたして可能なのでしょうか。
No.3
- 回答日時:
見る自分と見られる自分の問題ですね。
日本語では「私が(は)」と私を」ですから英語と違って「私」は対象化されています。今辺は日本語を母語としている人が研究すると面白いのではないでしょうか。アメリカ人より良い研究ができるテーマだと思います。日本人には主体性が(少)ないと言われることとの関係なども面白いと思います。申し訳ありませんが、もしよろしければ、kaitara1様が仰る「日本語では「私が(は)」と「私を」ですから英語と違って「私」は対象化されています」という命題について、少し詳しくご説明いただけないでしょうか。
英語、日本語における「私」の語法では、いかなる点が異なっているのでしょうか。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
自分なりの言葉でまとまった意見を述べるだけの余裕が今はないので,
断片的に思いついたことだけを書いておきます。
思考を意識的なものだけに限って論じるなら
質問者さんのおっしゃる「対象化」は
いわゆる意識の「志向性(intentionality)」の問題に連なるように思います。
人の意識に志向性という特権的地位を認めるべきか否かについては
ジョン・サールやダニエル・デネットの論考が参考になるでしょう。
これとは別に
思考を表象(イメージや概念)化された対象の操作と捉える
古典的計算主義ないし表象主義とは一線を画する視点が
現代の認知科学の中から生まれています。
たとえば
思考を脳や意識の内部に閉じ込めることなく身体を媒介とした主体(脳)と環境の相互作用として捉える視点(例:アフォーダンス),
神経回路網の並列分散処理によるカオス的現象として把握しようとする視点(例:コネクショニズム)などがその代表格です。
このあたりの話題について参考になりそうな本を御紹介しておきます。
すべて講談社現代新書ですが,私,講談社に別段義理はありません。
既読なら失礼。
■考える脳・考えない脳/心と知識の哲学
信原幸弘(著)
講談社現代新書
■ロボットの心/7つの哲学物語
柴田正良(著)
講談社現代新書
■意識とは何だろうか/脳の来歴、知覚の錯誤
下條信輔(著)
講談社現代新書
あと精神分析(≠心理学)に関心をお持ちならこれもいいかも。
■心のマルチ・ネットワーク/脳と心の多重理論
岡野憲一郎 (著)
講談社現代新書
私が関心を持っているのは、まさしく「志向性」の問題でした。
ジョン・サールという哲学者を私は寡聞にして知りませんでしたが、これを機会に、ぜひとも彼の論考に当たってみたいと思います。
信原幸弘、柴田正良氏の著書も、時間を見つけて一読してみたいと思います。
たいへん参考になりました。
どうもありがとうございました。
No.5
- 回答日時:
kiatara1です、素人の思いつきですが何かの参考にもなればと思い書いてみます。
英語のIとmeは強いて日本語で表すとwatakushigaとwatakushiwo になり、分離独立したwatakushiという概念はどこにも含まれていません。それに対し日本語ではwatakushi-gaとwatakushi-woのようにwatakushiが独立した概念として認識されています。アメリカ人が日本語を習ってもこの分離は出来ないと思います。もうひとつの問題は日本人は「私」を認識可能と思いがちです。しかしこの私は客体化された私であって認識を行なう主体として私でないことに気がつかないということになるのではないかと考えています。つまり日本語では「私」は見る私と見られる私に分離されていないのかもしれないということです。英語でははじめから分かれています。日本人の感じですと自分さえよければ他はどうでもよいという考え方をmeism と言ってIismと言わないことに少し違和感を感じるのではないかと思います。しかしアメリカ人にegoismの egoはIなのか meなのかを聞いてみると案外困ったりしないでしょうか。日本人は単純にあるいは無邪気に私でしょうと答えると思います。未分化の強みなのかどうか分かりませんが・・・>日本語では「私」は見る私と見られる私に分離されていないのかもしれないということです。英語でははじめから分かれています。
確かに、日常的な経験とも合致しています。
英語に関して言えば、だからこそselfという「統一的な私」が必要になるのかもしれないと思いました。
参考にさせて頂きます。
たいへんわかりやすいご説明を、どうもありがとうございました。
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