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サムスン電子は基幹部品の90%近くを日本に依存しておりサムスンが利益を上げれば日本も儲かる構造と言われます。
もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。
合わせて韓国経済の動向などもお聞かせ頂ければ幸いです。

A 回答 (2件)

サムスン電子の具体的な企業内事情は分かりませんがが大雑把ながら。


90%とまではいくのかどうかは知りませんが(?)、
半導体の製造装置、シリコンウェハー、液晶のガラス基板など、
重要な部品や製造機械を多く日本から輸入してはいます。
日本にとって韓国はアメリカ、中国に次ぐ三番目に大きい輸出相手国ですが(1)、
中間部品や製造機械の貿易が大きい割合を占めるようになっています。

部品が輸入されるのは、サムスン電子が技術開発力を持たないという意味ではなく、
研究開発費は日本の最大手以上の巨額の投資を行っていますし、
韓国企業は多くの特許を出願する傾向も顕著です(2)。
しかし、サムスン電子の得意としている研究開発の対象が、
日本の部品製造業の基幹技術とは異なるため、割と補完的な関係になっているとか言われます。

一方でサムスン電子はDRAM/NANDフラッシュメモリ、
液晶パネルからテレビ、携帯電話、プリンタ、デジタルカメラまで、
多くの分野では世界の大手企業でもあり、
大量の納入を行う大口顧客として重視されています。

元々から日本に裾野の産業が集積していたという事もあるのですが、
日本の製造業は基幹部品や製造機械といった分野が重要になる傾向があります。
韓国が日本から輸入した部品は今度は韓国で加工して中国に輸出され、それから世界に出回ったりもするのですが、
こうした流れを「産業内貿易」といって、近年の貿易構造を語るには欠かせなくなってきた分野です。

韓国の電子産業の技術者は米国留学組を抱えており、アメリカの大学院を卒業し、
IntelやTI、モトローラといった米国企業に勤めた後に帰還した層もいるため、
技術的にはアメリカとも結びつきがあるはずです。
ハイニックス半導体やLG電子等の他の企業でもそういったことが言えるはずです。

半導体は、激しい好不況サイクルを経験して、
その度に企業が交代されていく激流の業界とされます。
こうした中で、しかもCPUなどと比べて付加価値が低く、
参入の容易なDRAM/NANDフラッシュメモリといった分野で確実に成功を収めるのは難しいのですが、
1990年代からうまい時期に大胆な投資を行うことに成功して躍進することができました。
多くの分野で成功を収められた背景には、
1997年の通貨危機の後にしばらくウォン安のまま推移したため、
その恩恵を受けて事業を急に拡大できた面もあります。
ただし、半導体の競争は激しく、地位が永続的かどうかは分かりません。

2007年から、新しいWindows(Vista)の販売が不振だったことや、
iPodブームを受けて各社が生産能力増強を急いだ要因などから、
汎用メモリは供給過剰に陥り、価格は大きく下落することになりました。
このため、汎用メモリ製造企業は国によらず厳しい環境に置かれているようです。
この種の半導体の景気循環は、日本にも若干の影響がありますが、
韓国や台湾、シンガポールのような半導体に大きく依存する
経済にとっては全体にかなりの影響も出ることがあります。

一方、サムスン電子自身も他の分野に盛んに進出し、
事業は多角化するようになっています。
半導体価格の大きい下落にも関わらず、サムスン電子の利益の中心は
半導体ではなく液晶と情報通信が大部分を占め、2008年4~6月期にも
営業利益1.89兆ウォン(約2000億円)の水準まで保ったようです(3)。

短期の動向に関して言うなら、2006~2007年にはウォン高・円安という環境が、
韓国の企業の価格競争力を削ぐということが問題となっていましたが、
今年になってからはウォン安の傾向となっており、
このため韓国の輸出産業は業績を回復できる傾向もあるようです(4)。
一般論としては、通貨安は経済全体の景気にもプラス要因です。
輸出拡大の効果は何ヵ月か遅行して出るでしょうが、
こうした事は短期的には、今年後半に世界的な景気後退の懸念が
強まっている中で韓国の景気を下支えできる可能性もあります。

しかし、韓国の経済は輸出産業の利益で測られるわけでもありません。
他方で原油・資源高やウォン安で交易条件は悪化して、
国内の消費者心理指数の方は険悪になってきています(5)。
先日韓国銀行もインフレを警戒して金利を引き上げ(6)、
景況が悪くなっても物価安定を保ちたいという思惑もあります。
アメリカや欧州、日本など多くの国で短期の動向が厳しく、
景気後退の可能性が現実化してきている事もマイナス要因になります。
原油・資源高が落着き、半導体景気が回復に向かえばプラスの要因になります。
現時点で多くの機関による2008年の韓国成長率予想は4%台で、
2007年よりやや減速する見通しとなっています。
アメリカ・欧州・日本から、台湾・香港・シンガポール・マレーシア、中国まで、
減速から不況突入まで規模は様々ですが、軒並み悪化は避けられないようです。
ただ、多くの要因が絡み合うため様々なシナリオが想定でき、
現時点で短期的な経済を語るのは普段以上に難しく、
大胆に予想すれば結局外れるのではないかということです。
どの道、短期の動向を追ってもそれが続くということはまずなく、
長期的な傾向で考えないと1~2年も立てば役に立たなくなってしまいます。

(1)日本の輸出相手国(2007年、ジェトロより)
1 アメリカ 143.4兆円(20.1%)
2 中国 109.1兆円(15.3%)
3 韓国 54.2兆円(7.6%)
4 台湾 44.8兆円(6.3%)
5 香港 38.8兆円(5.4%)
6 タイ 25.6兆円(3.6%)
7 ドイツ 22.6兆円(3.2%)

(2)イギリスのビジネス企業規制改革省によると、2006年に、
サムスン電子は世界で10番目に大きい研究開発費を投じる企業であり、
その規模はIBM(13位)や松下電器(19位)よりも大きい。
英ビジネス企業規制改革省の"The 2007 R&D Scoreboard"を参照。
http://www.innovation.gov.uk/downloads/2007_rd_s …
またWIPOによると、2007年のサムスン電子のPCT手続きによる国際特許出願数は
世界で20番目の規模。ちなみにLG電子は13番目。
http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2008/a …

(3)同社プレスリリース「2008年 第2四半期 実績発表 サムスン電子、四半期基準で史上最高売上高を達成」を参照
http://www.samsung.com/jp/news/newsRead.do?news_ …

(4)BusinessWeek, "Korean Exporters Win with a Weaker Won", 28 March 2008
http://www.businessweek.com/globalbiz/content/ma …

(5)消費者期待指数(季節調整値)(韓国統計局より)
(1月)103.3(2月)101.1(3月)98.0(4月)97.7(5月)90.9(6月)86.8
一致CI循環要素(韓国統計局より)
(1月)101.5(2月)101.2(3月)100.9(4月)100.5(5月p)100.4(6月p)99.9

(6)ロイター「韓国中銀が利上げ、政策金利は7年半ぶり高水準」2008年8月7日
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPn …
なお利上げを行う背景には、インフレやマネーサプライの問題以外に、
ウォン安の急な進行はドル建てで借入を行っている
金融機関の財務を悪化させるため通貨価値を支える思惑もある。
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この回答へのお礼

大変詳しい情報を感謝いたします。

先ごろNHKでサムスン電子に関しての放送があり興味を持ちました。
日韓関係に関し浅学の身でありながら考察しております、何も日本が優位に立てばよい、との発想だけではありません。
それに関して何分経済知識がゼロに等しく発想は妄想的になりがちで、より学ばねばと思っております、情報を参考にさせて頂きます。
ありがとうございました。

お礼日時:2008/08/18 20:25

(1)日本の輸出相手国(2007年、ジェトロより)


が桁ずれで、ものすごい数字になってました、失敬。
(訂正)
1 アメリカ 14.34兆円(シェア20.1%)
2 中国 10.91兆円(シェア15.3%)
3 韓国 5.42兆円(シェア7.6%)
4 台湾 4.48兆円(シェア6.3%)
5 香港 3.88兆円(シェア5.4%)
6 タイ 2.56兆円(シェア3.6%)
7 ドイツ 2.26兆円(シェア3.2%)
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