これ何て呼びますか

唐土にては、碁をうつ事を手談とも、坐隠とも、紋楸共いふ。黒白を烏鷺<くろしろ>といふ。
(『男重宝記』巻之三 長友千代治校註 現代教養文庫 292ページ)

上記は、江戸時代の便利本なのですが、碁のことを「手談」「坐隠」「烏鷺」といふのは、しばしば見聞きしますが、「紋楸」(もんしゆう)といふのは、聞きません。どんな意味なのですか。また、他にどんな出典がありますか。

質問者からの補足コメント

  • ロバの話はピンとこなかつたのですが、牛の件は、ごまかし方が巧みです。

    Perseusのサイトの用例検索は便利です。御教示ありがたうございました。

    No.1の回答に寄せられた補足コメントです。 補足日時:2015/05/21 21:07

A 回答 (1件)

こんばんは。


碁の知識はありません。まず「紋楸」の「楸」は、碁盤を作るのに用いるキササゲという木の名前だそうです。古名では「ヒサギ」といいます。

http://wikimatome.com/wiki/%E7%B4%8B%E6%A5%B8

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%B5% …

「ヒサギ」は「アカメガシワ」の古名でもあり、下のウェブサイトでは、「楸」は「アカメガシワ」と推測しています。

http://kamezo.cc/blog/entry/129449

ところが、中国語のウィキペディアでは、「キササゲ」の方には「楸」の文字が出てきますが、「アカメガシワ」の方には出てきません。

キササゲ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%82%B5% …

梓树 别名:楸(长编),花楸、水桐、河楸(河南经济植物志),臭梧桐(东北植物检索表),黄花楸(云南造林树),水桐楸(湖南衡山),木角豆(杭州药用植物志)
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%93%E6%A0%91

アカメガシワ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AB% …

野桐属
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E6%A1%90% …

中国で碁盤に使ったのはキササゲではないかという気がします。
漢和辞典には、「楸」の意味として「ひさぎ」「きささげ」「きささぎ」を一番目の意味として挙げてあり、二番目の意味として「ごばん」とあります。ほかに「楸枰(しゅうへい)」「棋局」「棋枰」「局楸」なども「碁盤」の意味だそうです。「紋」はもともと「模様」とか「しわ」「すじ」などの意味ですから、碁盤の模様のことでしょう。
一番古い出典は、杜牧(803~853)の「送国棋王逢」という詩のようで、次が向子諲(1085~1152)の「减字木兰花」、それから宋方壶(1341~1368)の「中吕山坡羊 道情」に出てくるようです。中国語は読めないので、あとはよろしくお願いします。

纹楸
http://hanyu.iciba.com/cizu/133484.shtml

http://baike.baidu.com/subview/4372379/4372379.htm

杜牧「送国棋王逢」
http://xigutang.2014qq.cn/gushi/dumu/_sgqwf__zz_ …

向子湮
http://baike.baidu.com/view/129486.htm

宋方壶
http://baike.baidu.com/view/219392.htm

あとは、明時代の「二程全書」に、碁ではなく象戲(=将棋)の話として出てくるようです。

象戲

大都博奕皆戲劇、象戲翻能學用兵。車馬尙存周戰法、偏裨兼備漢官名。
中軍八面將軍重、河外尖斜(徐本尖斜作斜尖。)步卒輕。却凭紋楸聊自笑、雄如劉・項亦閑爭。

大都の博奕皆戲劇、象戲翻[かえ]って能く兵を用うることを學ぶ。車馬尙存す周の戰法、偏裨兼ね備う漢の官名。
中軍八面將軍重く、河外尖斜(徐本尖斜を斜尖に作る。)步卒輕し。却って紋楸[もんしゅう]に凭[よ]って自ら笑う、雄劉・項の如きも亦閑爭なることを。

http://mokusai-web.com/shushigakukihonsho/niteiz …

https://kotobank.jp/word/%E4%BA%8C%E7%A8%8B%E5%8 …

また一つ物識りになりました。

***************

哲学カテはほとんど見なくなりましたが、第9のスレッドはplapotiさんの回答に全面的に賛同します。付け加えることはありません。エラスムスの愚神礼賛(gooの方)にも回答を書きかけていたのですが、送ろうと思ったらよい回答がついていたのでやめました。教育を受けて賢いはずの人の愚かな面を見抜くのは、ほかでもない愚人である、ということでしょうか。その点、向こうの哲学カテを見ていると、参加者全員心配になってきます。先日のエラスムスの御質問は、そこを暗に指摘していらっしゃるようにも見えましたが、たぶん誰も気が付かないんでしょうね。
芸術の二つの面を表すアポロ・ディオニュソスの図式は、ニーチェの発明ではありませんね。最近分かったことがあるので、気が向いたらそのうち翻訳を掲載します。
ねこさんが久しぶりに回答なさっていました。
この回答への補足あり
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この回答へのお礼

この質問に回答をいただけるとは思ひませんでした。碁盤の材料は、榧、公孫樹、桂、それに新榧とよばれるスプルースなのですが、楸もさうなのですね。ちなみに私の碁盤は桂の三寸盤で安物です。皇室では、お子様が碁盤から飛び降りる儀式があり、かなり高価な盤が使用されるやうです。

「楸」は「ひさぎ」といふ読みしか知りませんでした。いろいろあるものです。

出典も御教示くださり、ありがたうございます。もしかすると、囲碁史の新発見かもしれません。少なくとも私は、読んだことがありません。いちばん有名な言葉は「爛柯」で、中国のみならず、日本の古典にも「斧の柄が朽ちる」として、しばしば出てきます。『古今和歌集』991など。それぞれの典籍につきましては、手持ちがありませんので、図書館で調べてみます。以前、囲碁の別称募集の質問があつたのですが、そこでも「紋楸」は触れられてゐませんでした。
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/8826398.html

エラスムスにつきましては、ニーチェ「ギリシア語と神」の質問のときに名前を出していただいたので、取り上げてみました。ニーチェとエラスムスは、表面的には別思想のやうですが、根底にあるものは、かなり近いと思つてゐます。

>芸術の二つの面を表すアポロ・ディオニュソスの図式は、ニーチェの発明ではありませんね

パクリだつたのですか。気づきませんでした。ぶらげろさんと、いくらかやりとりしたのですが、また考へなほします。

>ねこさんが久しぶりに回答なさっていました。

はい、読みました。広く深く、正統的見解から、個性的意見まで、何でもこなせる、かういふ人がゐなければ、哲学カテゴリがもりあがりません。

石川淳『紫苑物語』がお好きなのですか。この本を誉める人はたくさんゐます。どうすれば、あんな生き生きした文章が書けるのか、見当もつきません。格調がありながら、上品ぶつたところがなく、俗でありながら、決して低俗ではありません。

御回答ありがたうございました。

お礼日時:2015/05/21 20:05

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