言ったことを後から覆す人との付き合い方

社会で働く人の共通の悩みでもある人間関係。同僚や上司との関係が仕事の進行やモチベーションにも響いてくるケースは少なくない。中でも「言ったことをすぐに覆す人」との付き合い方に悩まされることもあるのではないか。「安請け合いをしておいて、頼んだ仕事を進めない同僚」「当初指示をしてきたことと異なる注文を付ける上司」「平気で嘘をつく部下」など……。そんな人たちと毎日仕事を進めなくてはいけない場合には、どう対処していけばよいのか。心理カウンセラーの青柳雅也さんに話を伺った。

■角が立たないように同僚と付き合っていくには

職場の中でも、一番接する機会が多い同僚。チームを組んで仕事をする際など、平等な立場であるだけに、注意をしづらいこともある。そんな同僚が受け持った仕事を進めない場合の対処法はあるのか。

「同僚であるならば、方法論でいうと、上司やリーダー的立場の人に状況を報告しておくことが肝心です。おそらく『断れず引き受けちゃう系』の人であることが多いと思います。こういったタイプは、『周りからどう思われるか？』ということが先に立つので、本人は相手のためと思っているかもしれません。しかし、結局は自分の保身のためです。ですから、その人の『できます』を信じるのではなく、『能力』を理解しましょう」（青柳さん）

同僚に対しては、直接注意や対話を試みるより、上司や先輩に逐一報告しておくことが鍵となる。周囲への理解が得られているほうが、仕事の配分やペースを変更するなど、対処もしやすくなるためだ。

■反論が難しい上司への対処方法

言ったことを後から覆す上司がいた場合、部下の立場ではどうすればよいか。立場上、反論することは容易ではないが、ストレスを溜めないためにはどう対処をすればよいのだろうか。

「これはやっかいですね。しかし、反論というよりは、アサーティブな言い方で『××という状況なので、次からは〇〇だと助かります』という伝え方をすると、上司は、どこかで反省するかもしれません。また、相手に期待し過ぎてもいけないので、会社という『舞台』で社員という『役』を演じている『役者』だと思ってみてはいかがでしょうか」（青柳さん）

アサーティブとは、まっすぐに自分の要望や意見を伝えるコミュニケーションとのこと。 上司も立場上、どうしても強引な指示を出さざるを得ないことがある。その際、上司に噛みついて反論するよりは、自分の置かれている状況をさりげなく知らせつつ、冷静に訴える方が効果的だ。

■部下にパワハラにならないよう注意するには

言ったことを覆すのは、同僚や上司に限った話ではない。自分が指導や教育をする立場にある部下や後輩の中にも扱いに困る者はいる。立場上こちらが上司に当たる場合、あまり強く叱責すると、パワハラに見なされてしまうことも十分にありえる。

「本人が反省しているかどうかが肝心なのではないでしょうか。反省している相手に被せて追い打ちをかけても委縮するだけです。反省せず何度も繰り返し、逆切れしてくる場合は、もしかしたら何らかの問題があるかもしれません。原因を追究するよりも『どういう能力か』を理解し、見合った仕事を任せることが双方にとって建設的ではないでしょうか。『感情』が先に立つと、物事の問題は、本質からかけ離れてしまうので『理性』をもって対応することが大切です」（青柳さん）

感情的になって「どうして言ったことを守らないのか」と責めるよりは、相手の力量やキャパシティに見合った仕事を割り振ることが、互いのためにもなるだろう。

言動がすぐに覆る人との付き合いは、そのままにしておくと、後々こじれかねない。また、自分にとっても大きなストレスとなっていく。イライラや怒りといったストレートな感情を相手にぶつけるのではなく、相手の能力や性格をよく把握した上で、理性的に働きかけていくことが重要となるようだ。

●専門家プロフィール：青柳 雅也
「カウンセリングルーム アンフィニ」代表。個人カウンセリングや企業のメンタルヘルスケア、心理学セミナー、企業研修、心理学の非常勤講師など活動は多岐に渡る。保有資格は産業カウンセラー（社団法人 日本産業カウンセラー協会認定）